【2021正念場 水田農業】需給状況 危機感共有を――米在庫削減が最大の課題に JA全中 馬場利彦専務に聞く(2)2021年2月22日
需給と価格が直結 万一への備え大切
―-米産地のJAはどのような取り組みが必要でしょうか。
こういう状況にあるということを生産者にまできちんと伝えなければならないと思います。たとえば、生産者の直売は33%、約250万tあるといわれていますが、そのうち6割は生産者から卸への直売です。生産者は売れたと思っているかもしれませんが、卸には在庫として積み上がっている。
生産者はリスク分散を考えてさまざまな出荷先に販売していると思いますが、売れずに在庫になっていれば今年産の米は買ってくれません。それはJA直売も同じです。
こういう状況については稲作関係者が共有し見える化しないと解決しないと思っています。目安を県が作成すること自体は大事なことですが、もっと重要なことはどういう目標を設定するか、今の状況をふまえて稲作経営者や農業法人等を含め関係者が一緒になって考えることだと思います。
その際、改めて考える必要があるのは販売環境を整備するため、JAグループは20(令和2)年産米のうち20万tを長期計画的販売を決めて実践していこうとしていることです。これは21年産米が市場に出てくる出来秋以降に販売しようということですから、この分の作付けも21年産で減らさなければならないということです。そうしなければ再来年6月末の在庫水準を180万t程度にまで削減することは難しく、現在の価格水準まで回復することはできないということです。
全中では、全国全体で5%以上の主食用米の作付けを減らすことができなければ、米価が1万1000円程度まで下落した2014(平成26)年産水準まで下落すると試算しています。
しかも14年産と違うのは在庫対策がないということです。14年産のときは、過剰米対策基金があったこともあって、政府備蓄米を飼料用米に差し替え年産更新するなどの対策ができました。しかし、現在はこの仕組みはありません。つまり、在庫対策がないということです。だからこそ入り口で何とかしなければなりません。
そのため福島県では生産者大会を開き、しっかり非主食用へ転換しようと確認したり、栃木県では日本一の業務用米産地として生産者への作付転換の呼びかけを行ったりしています。JAへの出荷者以外もふくめて、現在の需給状況と今後の見通しについて危機感を共有していく必要があります。
また、万が一に備えてナラシ対策など経営安定対策に加入することも大切です。ですから、需給状況を伝えること、備えることが大事だということです。
―-米の過剰の解消だけでなく今後の水田農業をどう展開するかも大きな課題です。
最近では生産者のなかからは何を作付けするか、ポートフォリオで考えて10アールあたりいくらの収益が得られるかを考えようという人も出てきました。一般家庭用向けだけはなく、業務用米、輸出用米、さらに飼料用米など水田活用の直接支払交付金も含めてどんな組み合わせで作付けするかということです。もちろんJAがそのことを集落営農組織や稲作生産者に伝えることが必要です。
そのうえで今回は第3次補正予算で措置された10アールあたり4万円が交付される水田リノベーション事業や、当初予算で措置されている飼料用米への交付金も今回の見直しで標準単収であれば10アールあたり8万円が交付されますから、そうした予算をしっかり活用しようということです。
とくに飼料用米など交付単価が決まっているものは予算が不足すれば補正予算が組まれることになりますから、われわれとしては予算が足りないという状況になるぐらいの作付け転換の取り組みをしようということです。
何をどれだけ作付けすれば所得が最大になるのか、水田農業全体で考えることをJAは提起し、それを主体的に受け止める担い手を育成することが今こそ現場に求められているということだと思います。
重要な記事
最新の記事
-
和歌山「有田みかん大使」募集中 JAありだ共選協議会2025年6月17日
-
「第100回山形農業まつり農機ショー」8月28~30日に開催 山形県農機協会2025年6月17日
-
農薬出荷数量は1.5%増、農薬出荷金額は2.8%増 2025年農薬年度4月末出荷実績 クロップライフジャパン2025年6月17日
-
中国CHERVON社と代理店契約 EGO製品の国内販売を開始 井関農機2025年6月17日
-
鳥インフル ブラジルからの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年6月17日
-
戦後80年にできることは?情報誌『のんびる』7・8月号受注開始 パルシステム連合会2025年6月17日
-
千葉県成田市に初出店「カインズユアエルム成田店」2025年秋オープン2025年6月17日
-
女子栄養大生が開発「レモン香る油淋鶏弁当」発売 コープデリ2025年6月17日
-
国産ジビエ認証施設に埼玉県「桜東風sakuragochi 皆野ジビエ加工場」認証 農水省2025年6月17日
-
国産いちごと砂糖だけ「かき氷シロップ いちご」6月下旬から取り扱い開始 生活クラブ2025年6月17日
-
高温期に向くバラ咲き トルコギキョウ新品種を発売 サカタのタネ2025年6月17日
-
岩手県の産地直送レタス使用「モスの産直野菜フェスタ」岩手県で開催 モスバーガー2025年6月17日
-
マーガリン不使用「しっとり食パン(生クリーム使用)」新登場 パルシステム2025年6月17日
-
バンダイとコラボ「雪印メグミルクミニチュアチャーム~100周年記念~」発売2025年6月17日
-
イオングループが随意契約で調達「政府備蓄米」ネット予約販売 ミニストップ2025年6月17日
-
「自然派Style万能つゆ」にリユースびん採用 使って、洗って、戻して、資源循環2025年6月17日
-
日本農薬 ゲント大学、Tech Laneと覚書締結 持続可能な農薬・作物保護資材を研究開発2025年6月17日
-
千葉県市原市 特産の梨で担い手確保・育成へ 20日から研修生募集開始2025年6月17日
-
米の作況指数の公表廃止 実態にあった収量把握へ 小泉農相表明2025年6月16日
-
【農協時論】米騒動の始末 "瑞穂の国"守る情報発信不可欠 今尾和實・協同組合懇話会委員(前代表)2025年6月16日