【クローズアップ:外国人労働者】日本農業の一翼~制度と現状 技能実習生は強力な戦力(2)堀口健治・日本農業経営大学校校長(早稲田大学名誉教授)2021年7月5日
研修生ではなく就業規則に準拠
2.外国人の在留資格の変遷と受け入れ
外国人不熟練労働力の導入は、受け入れ農家・法人の努力、監理団体としての先進的農協や事業協同組合、また途上国の送出し団体との緊密な協力の下、拡大してきた。技能実習生の受け入れ数は需要に応えて増加し、他方、途上国からの希望者も増え、この仕組みは機能しているといってよい。
一部にブローカーを介在させた不当な扱いが農業にもみられたが限られた事例であり、大勢は技能実習制度の趣旨に沿い、受け入数を拡大してきた。ブラック企業の排除や雇用条件の周知・徹底の課題は依然としてあるが、東日本大震災で多くの技能実習生が帰国したもののすぐに回復し、職種制限で地域に偏りはありつつ、農業での技能実習生は着実に増加の一途をたどってきた。
実際に、近年の厳しい労働力不足の下、既存の農業者が受け入れ数を増加させるだけではなく、初めて外国人を受け入れる地域や農業経営が広く見られるようになった。10年代前半5年間で1.2倍の増加であったものが、後半では4年間で2倍と外国人労働者増は急ピッチなのである。
技能実習生は、最長5年(技能実習1、2号で3年、3号で2年)の有期雇用契約の下、on the job trainingの研修計画に沿って、研修しつつ働く雇用労働者である。
しかも制度として導入済みの3号技能実習生や19年4月導入の特定技能1号の外国人が準幹部(チームリーダー)として位置付けられはじめ、新しい状況が生まれている。なお技能実習生を今も研修生と呼ぶ人がいるが、これは間違いで、就業規則などに守られる雇用労働者であることを強調しておきたい。
以下、この間の制度の変化を見ておこう。
出入国管理法に82年技術研修生という在留資格が新設され、日本企業の在外法人の現地採用者を日本で研修させる形が広まった。企業単独型だが、これとは別に団体管理型による研修生受け入れが90年に加わった。海外に拠点を持たない中小企業が事業協同組合を作り、これを受け入れ監理団体として途上国の若者を研修で受け入れる仕組みを設けたのである。
1年ごとの研修生で、その後、93年に在留資格を特定活動ビザとすることで、日本独特の技能実習制度(団体管理型)が制度として出来上がった。内容は研修1年、技能実習1年である。
単純労働力の受け入れだが、国際貢献をうたい、日本語を学び来日した若者に各種の作業を複数経験させ、スキルアップして本国に戻す。これらは日本の制度の特徴だが、賃金負担だけではなく、来日半年前などの現地面接のマッチングに経営者は自ら参加する(写真参照)。
採用する日本の農家・法人による集団面接
また雇用した技能実習生の往復飛行機代、受け入れ監理団体や送出し団体に払う雇用期間中の管理費(1人月3万強~4万円強=送り出し団体に渡す分を含む)などは、すべて雇う側が負担する。
早期の事前面接・その場での雇用契約(来日後1カ月の座学講習後に発効)署名により、安心して半年以上の事前日本語合宿に本人は臨むことができる。合宿などの費用はビザ手続きを含め本人負担だが、来日前後2カ月分の座学講習および研修手当は日本側負担である。
経営者から見ると、負担は日本人高卒者を上回る。しかし日本人を確保できない人手不足産業が、途中でやめることの少ない3年契約の技能実習生に期待したのである。結果的に、労働力不足で悩む業界の対応策として制度は機能している。
また母国の企業を辞め応募してきた技能実習生の多くは元の職場に戻る例が多いが、農業のように自営業出身者は必ずしも研修し学んだ技術に直結する職場に戻るとは限らない。
自営業に関わる就業機会が少ないからであり、日本で得た日本語や労働の仕組みや規律などの経験を生かし、日本語関連や日系企業に就職するものも多い。これらも研修の成果と位置付けてよいであろう。
なお次に述べるように面接の後に親にあいさつすべく経営者が地域をわざわざ訪問しているが、カンボジアで筆者も同行し、村の中に多くの新築の家を見ることができた。技能実習生の3年間の貯金300万円強の半額で親に家をプレゼントしているのである。残りを自己の新ビジネス準備、結婚などに充てていた。
7月6日掲載予定・技能実習生は強力な戦力(3)に続く
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