【クローズアップ:外国人労働者】日本農業の一翼~制度と現状 技能実習生は強力な戦力(1)堀口健治・日本農業経営大学校校長(早稲田大学名誉教授)2021年7月5日
少子高齢化が進む日本で農業にとって外国人労働者は大きな存在になりつつある。労働力不足に苦しむ産地で規模拡大の頼もしい助っ人になる例も出ている。このようななか、「日本農業と外国人労働者」をテーマに早稲田大学名誉教授で日本農業経営大学校校長の堀口健治氏に制度や現状を解説してもらった。
早稲田大学名誉教授・日本農業経営大学校校長堀口健治氏
特定技能者拡大 質的な広がりも
1. 量・質ともに重みを増す外国人労働者、若手不足の日本農業を支える
図 農業分野における外国人の労働者数
厚労省「外国人雇用状況の届出状況」で農業雇用の外国人を図に示した。
2020年は、コロナ禍で4月から数カ月続いた入国禁止を反映し、例年と比べ入国者が少ない。しかしそれでも前年比2600人の増加である。それまで対前年比3000~4000人の増だからやや下回る程度であった。しかし現在の21年は入国者が無いに等しいため、現場では帰国できない外国人に在留期間延長を依頼したり、他業種からの参入特別措置の導入など、苦労している。
コロナ禍による解雇や雇い止めの日本人は多いものの、農業参入は期待するほど多くないからである。
毎年3000~4000人増加は大きな数である。日本人対象の農水省新規就農者調査によると、19年ではその年に加わった49歳以下の新規雇用就農者は7000人強だったから、若者である外国人雇用者がその半数弱のレベルにあるというのは驚きである。量的に、補充者としてまた新規参入として、外国人がすでに大きな存在になっていることが分かる。
外国人で最大は技能実習生だが、それ以外の専門的・技術的分野の増加にも注意したい。20年2千人で18年までに1000人レベルに増えて来た。この中に大規模畜産経営に雇われた外国大学獣医出身者(獣医の行為はできないが補助的仕事や観察・管理などの役割が多頭飼育では大きくなっている)が含まれ、農業の技術者、通訳や貿易・経営など、外国大卒の技術・人文知識・国際業務の在留資格(「技人国ビザ」)を持つ人が、日本人幹部と同じ条件で雇用され出している。そして特定技能1号(19年に施行された就労の新在留資格)外国人が増え始め、出入国在留管理庁によると21年3月で農業は3400人(特定技能1号計は2万3000人、うち最大は飲食料品製造分野8000人、農業は2番目)、この数が専門的・技術的分野に加わる。
特定技能は多くが技能実習を3年経過した人で、一定の技能と日本語レベルを有するので専門的分野に位置づけられる。不熟練労働力として来日の技能実習生と質的に異なるのである。特定技能は耕種と畜産の区別だけで対象の仕事は一気に広がり、技能実習の対象職種になかった肉牛、稲作、茶などに即戦力として加わることができるので、急速に増えるとみられる。
さらには派遣による産地間移動労働者の形態も出来たのでそれぞれの産地では季節限定の受け入れが可能になった。また実習生のような人数枠がないこともメリットであり、特定技能の仕組みでより長期に働く外国人がこれから増えるであろう。
こうした専門的・技術的分野の増加は農業での外国人の役割の質的な広がりを示し、ITで日本企業がインドの大卒を求め他国企業と競合するのと基本的に同じ状況を示している。
なお他の3000人は、身分に基づく外国人2000人弱、特定活動と資格外活動の外国人1000人の合計である。日系ブラジル人や日本人と結婚した人たちなどの身分に基づく就労で、数は2000人のレベルで長く変化していない。特定活動は一時的な在留資格で資格外活動は留学生などのアルバイトが主なので、技人国ビザと特定技能ビザが専門的・技術的分野のメインになるである。
図の農業従事外国人は、20年では1万466の事業所で働いているので、事業所当たり3.63人になる。15年農業センサスによると、外国人を含む常雇いを雇い入れている農業経営体は、販売農家4万(そこで雇われる常雇いは10万人)、農家以外の農業事業体(販売目的)1万4000(常雇い12万人)、合わせて5万4000の農業経営体に22万人の常雇いの人(1経営体当たり4.05人)がおり、もし20年センサスによる常雇いの結果が15年レベルだとすると、外国人を雇用する事業所はその2割を占めることになる。
辞めた日本人の補充や規模拡大で新規に人を雇いたい場合、日本人応募が少ない状況下で、確実に来日し最低賃金で3年間契約のもと、働いてくれる技能実習生は貴重である。コロナがおさまった以降、再び外国人は増えてくるであろう。
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