秋特集:国生国産PC
バイデン農政と中間選挙
左カラム_シリーズ_防除学習帖
左カラム_病害虫情報2021
左カラム_コラム_正義派の農政論_pc
左カラム_コラム_米マーケット情報_pc
左カラム_コラム_JAまるごと相談室
左カラム_コラム_地方の眼力_pc
左カラム_コラム_食料・農業問題 本質と裏側
左カラム_コラム_昔の農村・今の世の中_pc
左カラム_コラム_グローバルとローカル_pc
左カラム_コラム_TPPから見える風景_pc
左カラム_コラム_ムラの角から_pc
左カラム:JCA160_86
石原バイオヘッドSP:ネマトリンエース
FMCプレバソンPC
FMCセンターSP:ベネビア®OD

資材高騰が直撃 苦悩する農家を歩く 「離農増えないか心配」の声も2022年5月18日

一覧へ

コロナ禍、円安に加えて、理不尽で突然起きたロシアによるウクライナ軍事侵攻(戦争)。その影響を受け、原油や食料、生産に必要な諸資材の高騰が続く。モノが手に入らなくなるかもしれないという不安もある。私たちはいわば三重苦の中にいる。食料品やガソリン、電気料金などが相次ぎ値上がりし、すべての国民の毎日の暮らしを直撃している。農業も例外ではない。深刻化するウクライナ情勢を背景に、肥料や農薬、穀物など農業や畜産業に必要な生産資材の価格高騰が続いている。では、現場の実態はどうなのか。茨城県内でのコロナ禍の農協と農家への影響については本紙の昨年8月30日号でお伝えしたが、最新の現地情報を得るために、私の所属する常陸農協管内の農家(養鶏、花き、和牛、米+カンショ)を歩いた。さらに全農茨城県本部と常陸農協の幹部から、全体の動きと今後について聞き取りを行った。(客員編集委員 先﨑千尋)

全ての農産物に影響 離農者増えないか心配

全農茨城県本部 鴨川隆計本部長全農茨城県本部 鴨川隆計本部長

全農茨城県本部・鴨川隆計本部長の話(主な生産資材の情勢) 肥料=尿素は、中国、ロシアが輸出制限している。全農は全量モロッコから輸入している。リン安は、これまで9割を中国に依存してきたが、中国が輸出を制限。全農はモロッコから緊急輸入し、秋肥まで確保している。カリは、ロシアとベラルーシから全体の4分の1を輸入してきたが、両国が輸出を禁止している。全農はカナダと契約。総じて肥料の原料は加重平均で7%上がっているが、今後さらに増える見通し。その先は見通せない。
飼料=原料となる穀物価格が干ばつによる不作とロシアのウクライナ侵攻により供給不安に陥り、小麦の先物価格はシカゴ市場で14年ぶりに最高値を更新し、飼料価格も急上昇した。配合飼料安定制度の基金があるので、豚の飼料が8%アップ、牛の飼料は変わらず。
被覆・副資材=原油の高騰から、ナフサ価格がこの2年で1・5倍に上昇。トンネル用の農ビ、ハウス、マルチ用の農ポリ、袋、段ボールなどすべての資材が10~25%上がる。

全体としては、全ての農産物に影響が出ている。資材価格の高騰によって農家の生産意欲が減退し、離農者が増えてくることが心配だ。すでに現場からは離農する農家の話も出てきている。米は消費が伸びず、価格も上がっていない。水田の維持は地域農業の循環、インフラの維持に影響するので、食料安保、消費の拡大も含めて国が管理すべきではないか。消費の仕方も、ご飯だけでなく、粉にして食べ方を多様化するなど工夫すればいい。輸出もできる。
青果物は市場流通が7割。需給関係で決まるので、コストアップを価格に転嫁できない。日本一のピーマンの産地は神栖市。ハウス内の温度を16度以下にできないので、燃料代の値上がりは痛い。全般に、契約栽培などの計画生産・計画販売、銘柄集中、ロット発注によるコスト低減などを進めていく考えだ。

対策を立てようがない

常陸農協・芳賀和之専務の話 こんなに急激に資材価格が上がると、農協としては対策を立てようがない。ホームセンターにモノがないので、農家は農協に来ている。農協は予約が基本なので、モノはギリギリ大丈夫だが、これ以上上がったら困る。米農家は不安を感じているが、自分の代は続けると考えている。畜産農家も、餌が高くなり困っている。東日本大震災以後、もと牛生産者が減り、肥育専門の農家の負担が増している。

飼料価格4割上昇も「価格転嫁できない」

石黒正さん石黒正さん

今回の取材で最初に伺ったのは常陸大宮市小祝で、平飼いで鶏を飼っている石黒正さん(69)。妻、息子夫婦4人の家族経営。若い頃、子どもを自然豊かな中で育てたいと考え、常陸大宮市に移住し、最初は養鶏場の管理人をしていたが、1988年に現在地を購入し、山林を切り開き、最初は300羽で「石黒たまご園」をスタートさせた。鶏の種類は赤玉のボリスブラウン。現在は1500羽。10羽から20羽の雌に対して1羽の雄を一緒に飼っている。

平飼いの鶏は、土の上を元気に走り回るので食欲は旺盛で、餌代はかさむが、ストレスがなく、とてもいい卵を産んでくれる。多くの養鶏場では、飼料会社が配合した飼料を鶏に与えているが、石黒さんは自分で餌を作り、鶏の健康、成長段階、四季の変化による鶏の好みに合わせて、餌の配合を変える。トウモロコシ、小麦、米ぬか、魚粉、ゴマかす、カキガラ、干し草などを使う。これらの原料を混ぜ合わせ乳酸菌で発酵させ、鶏が病気にならないようにしている。おいしい卵が産み出されるには「よい餌、よいヒナ、よい飼い方」の三つがそろっていること。石黒さんはこの三つをモットーにしている。

自家配合のため、一般の養鶏業者だと生産費の3分の2が飼料代だが、石黒さんは4割。こうして生産される石黒たまご園の有精卵は、白身に張りと弾力があり、生で食べるとおいしく、料理やケーキの材料にすると膨らみ感が違うと、評判を呼んでいる。出荷先は、近隣の得意先への宅配とレストラン、市内にある道の駅など。

石黒さんの話だと、3年前と比べて飼料価格は4割上がっている。大規模の業者は飼料価格の比重が高いので、これからの経営は大変だと思う。石黒農園では、餌代の他に段ボールやガソリン代なども上がっているので、販売価格を6月から1個2円値上げする。相手はほとんどが顔の見える関係なので、コストアップ分をそのまま転嫁できない、と話している。

資材軒並み上昇に頭悩ます

市橋陽平さん市橋陽平さん

市橋陽平さん(41)の畑は筆者の住まいのすぐ近くにある。カーネーションと野菜苗の出荷が終わり、これからオスカー、サルビア、マリーゴールドなどの花と青パパイヤ苗を出す。

市橋さんは非農家出身。花に興味があり、常陸太田市の園芸農家で修業し、米国で2年間、花や野菜の栽培管理を学んだ。2007年に独立し、「しどり(倭文)農園」を開設。妻と両親の4人で経営している。

300坪(1000平方m)のビニールハウスを作り、サイネリアから始まり、暮れのシクラメンまで多品目の花を栽培し、年中途切れることがない。花屋、直売所だけでなく、北海道や東京の市場にまで出荷している。頼まれて、野菜や花の栽培講習会の講師を務めることもある。

市橋さんは「昨年、新規就農支援金の返済が終わったので経営は楽になったが、重油や種代、肥料、鉢やポットなどの資材代が15%ほど上がったので、頭を悩ませている。カーネーションは市場での単価を20%上げてもらった。家族経営なので大規模生産者よりは影響が少ない」と話す。

市橋さんの夢は、妻と一緒に花農園カフェを開くこと。人々がいつでも気軽に集い、花を愛でながらお茶をゆっくり楽しめるような場所を作りたい、と言う。花を育てながら、夢のつぼみも膨らませているようだ。

牛の餌代上昇に募る不安

新妻洋治さん新妻洋治さん

北茨城市磯原町で和牛120頭を飼う新妻洋治さん(67)は、2002年に全国肉用牛枝肉共励会(東京食肉市場協会主催)で日本一の名誉賞(農林水産大臣賞)を受賞した。この共励会は和牛農家の肥育技術の日本一を決める場だ。現在、常陸農協高萩地区肥育牛部会長を務めている。

新妻さんの牧場は、宮城県南部から茨城県北部に連なる阿武隈山地の一角にある。周りは緑豊かな山並が続くのどかな所で、親の代から牛を飼っている。一般には、原料になるもと牛は毎月、千歳空港に近い北海道安平町早来にあるホクレン南北海道家畜市場で、せりによって購入する。1回の買い付けは生後10カ月の子牛を6頭から10頭。仲間と共同で陸送する。その牛を約20カ月飼育し、東京芝浦市場に出荷するというサイクルだ。茨城県産の上質の牛肉は「常陸牛」のブランドで出荷されている。

もと牛価格は現在平均で75万円。3.11の大震災後、子牛の頭数が減り、価格も上昇し続けており、部会の中でも肥育専門から繁殖・肥育の一貫経営に移行している農家が半数を超えている、と新妻さんは言う。餌代はここ1年で2~3割上がっている。これまでは肉用牛肥育経営安定交付金(マルキン)と配合飼料安定基金制度で補填されてきたので経営にはあまり影響がなかったが、肥育期間中に5tの餌が必要。キロ10円上がると5万円になり、これからどうなるのか不安だ、と新妻さんは話してくれた。

資材や人件費上昇 農機具買い替えにも影響

木名瀬一さん木名瀬一さん

常磐線佐和駅に近いひたちなか市高場の市街地で、米と茨城特産の干し芋づくりを続けている木名瀬一さん(84)は、高齢ながら好奇心が旺盛。田植えが終わったばかりの5月15日にやっと取材ができた。

主な水田は10キロも離れた那珂川沿いにある。10haのうち2haに茨城県のオリジナル品種「ふくまる」を植えているが、10年ほど前に県の専門技術員から勧められ、正式名称が付く前に作り始めた。同市の生産者9人で作るふくまる研究会の会長を設立当初から務めている。特別栽培米だと一般の米の5割増しで売れる。

干し芋生産量が全国の9割以上を占める茨城県。その中心はひたちなか市だ。木名瀬さんは公務員を退職してすぐに本格的に干し芋づくりを始めた。当時の主な品種は「たまゆたか」だったが、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の職員から勧められ、新品種の「ほしキラリ」を2009年から栽培し、同機構の実証ほになった。その後も次々に新品種の栽培をするようになり、現在は4haに人気の高い「紅はるか」を主力に、泉13号、新品種の「ふくむらさき」、「ほしあかね」を作付けしている。木名瀬さんは研究熱心なことから、国や県、市から声がかかることが多いが、断ることなく対応している。

いくら研究熱心でも資材価格の高騰は避けられない。肥料、農薬、石油類、段ボールなどの資材代。パートに支払う人件費もバカにならない。コロナ前に比べて2割以上は上がっているという。干し芋はともかく、米価は下がっている。農機具は買い替えの時期だが修理しながら使うなど、設備投資がなかなかできないと頭を抱えている。「これ以上資材の値上げが続くと、離農による荒れ地が増えるのではないか」と顔を曇らせる。

最新の記事

シンジェンタポータルフェーズ:右上長方形SP

みどり戦略

住友化学住友化学右正方形2SP

注目のテーマ

注目のテーマ

JA人事

JA共済連:SP

注目のタグ

JAバンク:SP
topへ戻る