米国の議会と政府は日本参加に根強い反対論も 自動車問題が深刻2013年2月28日
安倍首相は日米首脳会談を受けてTPP交渉参加に前のめりな姿勢を示しているが、わが国が正式に参加表明したとしても「米国が参加を容認する可能性は低い」とJA全中の「国際農業・食料レター」(172号)は伝えている。
日本では安倍政権に対して「早期参加を求める米側にどう応えるのか」といった論調がみられるが、全中レターは米国からみると「異様な様相」と断じている。
理由は自動車問題だ。米国の一部議員は対日貿易赤字額の7割を占める自動車貿易を深刻に捉えて、TPP交渉に参加する前に「まずは自動車市場の開放を行動で示すよう日本に求めている」という。
◆ ◆
2011年11月に野田前首相が「交渉参加に向け関係国との協議に入る」と表明した後、米国議会議員からは以下のような主張が続々と表明された。
▽日本は何十年も自動車市場を保護してきた態度を変えようとするいかなる努力も示していない。FTA開始を検討する前に自動車市場を開放するという持続的、複数年にわたる約束を明確にさせなければならない。日本の参加を認めるのは間違い。明確に断るよう大統領に強く求める。(レヴィン下院歳入委員会筆頭理事の大統領への書簡、11年11月)、▽交渉を遅らせず、かつ、未解決の2国間問題に対処する限りにおいて参加を歓迎する。(キャンプ下院歳入委員長、12年2月公聴会)、▽日本参加に多くの議員が疑いの目。日本が参加国から恩恵を享受する一方、海外の製品・サービスに排他的な手段をとり続けると考えている。(マクダーモット下院議員、11年12月公聴会)、▽交渉参加前に自動車市場開放の持続的な約束を行わなければならない。約束を行う前の参加には反対するよう強く求める。日本の自動車市場の障壁は従来のFTAでは対処不可能(スティーブナウ上院議員、11年11月大統領への書簡)。
◆ ◆
今年になってもこれらの議員のスタンスは変わっておらず、関係国との協議に入る、と表明しただけでこれだけの反応が出てくることから「正式参加を表明すれば米国議会における危機感はさらに高まりを見せるだろう」と全中レターは分析している。
米国政府の認識も同じだという。次のUSTR代表候補に名前が挙がっているフローマン前国家安全保障補佐官代理は「新規国の参加を認める前に既存の貿易問題が解消されTPPの本体交渉に持ち込まないことを確証させたい」と発言したと昨年6月、米国専門誌が報じている。
こうしたことから米国政府もとくに自動車問題については、わが国が参加前に何らかの成果を出すよう要求しており「事実上、参加した後に交渉を行うことを否定している」と全中レターは指摘している。それは今回の共同声明の第3段落に明確に記されている。
したがって、今のまま参加表明しても米国政府は反発を招きかねない議会に対して交渉開始90日ルールによる通告を行ったり、大統領が貿易促進権限(一括の交渉権限)を有していないなかで政府が独断で参加を認める可能性は「極めて低い」と分析している。
◆ ◆
もっとも、周知のように自動車は関税ゼロですでに市場開放はされている。したがって米国の要求は安全や環境の基準緩和、軽自動車問題などとなるだろう。しかし、それは国民生活にかかわることで自民党も「守り抜く国益」とした。
米国の狙いは自動車の非関税措置にあるにもかかわらず、わが国では農業が問題、とここに来て再び論点のすり替えが横行している。
ちなみにEUとのFTA交渉でも昨年10月、欧州議会が「交渉開始1年以内に日本が自動車分野の非関税障壁を撤廃しないのであれば交渉を中断すべき」とのプレスリリースを出していることを全中レターは伝えている。
(関連記事)
・「守り抜くべき国益」と対処方針の明確化を 自民党外交・経済連携調査会が決議 (2013.02.27)
・「信頼されない政治はあってはならない」 JA全中・萬歳章会長がTPP問題で緊急会見 (2013.02.25)
・関税以外の5項目、オバマ大統領の受け止めは不明 日米首脳会談 (2013.02.25)
・「拙速な交渉参加判断は国益を毀損」 萬歳JA全中会長が声明 (2013.02.25)
・TPP、「影響試算」は参加判断の材料ではないとの認識 林農相 (2013.02.22)
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】てんさいの褐斑病が早発 早めの防除開始を 北海道2025年7月2日
-
日本の農業、食料、いのちを守る 「辛抱強い津軽農民」立つ 青森県弘前市2025年7月2日
-
「食と農をつなぐアワード」募集開始 優良な取組を表彰 農水省2025年7月2日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」JAおきなわ食菜館「とよさき菜々色畑」へおつかい JAタウン2025年7月2日
-
三菱マヒンドラ農機 ペースト施肥、紙マルチ田植機、耕うん作業機の販売強化2025年7月2日
-
外来DNAをもたないゲノム編集植物 作出を大幅に効率化 農研機構2025年7月2日
-
「2025年度農業生物資源ジーンバンク事業シンポジウム」開催 農研機構2025年7月2日
-
創立100周年記念プレゼントキャンペーン第3弾を実施 井関農機2025年7月2日
-
住友化学園芸が「KINCHO園芸」に社名変更 大日本除虫菊グループへ親会社変更2025年7月2日
-
フランス産牛由来製品等 輸入を一時停止 農水省2025年7月2日
-
【人事異動】ヤンマーホールディングス(7月1日付)2025年7月2日
-
長野県、JA全農長野と連携 信州産食材使用の6商品発売 ファミリーマート2025年7月2日
-
地域共創型取り組み「協生農法プロジェクト」始動 岡山大学2025年7月2日
-
埼玉県産農産物を活用「Made in SAITAMA 優良加工食品大賞2026」募集2025年7月2日
-
黒胡椒×ごま油でおつまみにぴったり「堅ぶつ 黒胡椒」新発売 亀田製菓2025年7月2日
-
近江米新品種オーガニック米「きらみずき」パレスホテル東京で提供 滋賀県2025年7月2日
-
外食市場調査5月度 2019年比96.9% コロナ禍以降で最も回復2025年7月2日
-
王林がナビゲート 新CM「青森りんご植栽150周年」篇を公開 青森県りんご対策協議会2025年7月2日
-
飲むトマトサラダ 素材を活かした「カゴメ野菜ジュース トマトサラダ」新発売2025年7月2日
-
愛知県豊田市と「市内産業における柔軟な雇用環境の実現にむけた協定」締結 タイミー2025年7月2日