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2013.02.27 
「守り抜くべき国益」と対処方針の明確化を 自民党外交・経済連携調査会が決議一覧へ

 自民党は2月27日の外交・経済連携調査会を開き、安倍首相が近く判断するとされるTPP交渉参加について、判断に際しては「守り抜くべき国益」を認知し、「それらの国益をどう守っていくのか」を示すべきであるなどとする決議を採択した。

◆重要5品目を明記

 この「TPP交渉参加に関する決議」は、▽日米首脳会談を受けて依然としてTPP交渉参加に対して慎重な意見が党内に多く挙がっている、▽政府は交渉参加するかどうかを判断するにあたり、自由民主党における議論をしっかり受けとめるべきである、▽その際、守りぬくべき国益を認知し、その上で仮に交渉参加の判断を行う場合は、それらの利益をどう守っていくのか、明確な方針を示すべきである、を柱とし、「守りぬくべき国益」を別紙(別掲)として示した。
 国益として明記された項目は政権公約に記された6項目について具体的事項を追加したものと、医薬品の特許や事務所開設規制など、これまでも党内論議で強く指摘された懸念事項。これらは「TPP参加の即時撤回を求める会」が2月19日に決議した内容でそれを採択した。
27日午前の自民党外交・経済連携調査会であいさつする石破茂幹事長 農林水産品の関税については、「米、麦、牛肉、乳製品、砂糖等」と日豪EPA交渉入りで衆参の農林水産委員会が重要品目とした農産物を挙げ、これらの品目が「引き続き再生産可能となるよう(関税撤廃の)除外または再協議の対象となること」を「守るべき国益」とした。
 その他、自動車の安全基準や数値目標、国民皆保険などについても具体的に記述するとともに、改めて「聖域なき関税撤廃」だけではなく「6項目は一体」であることを強調し、それらを「国益」と規定、その確保を政府に求めるかたちになっている。

(写真)
27日午前の自民党外交・経済連携調査会であいさつする石破茂幹事長

◆党の意見、どう受け止めるか

 自民党の調査会がこうした決議をしたのは、日米首脳会談の内容を安倍首相が説明した25日の党役員会がTPP交渉参加判断を「首相に一任した」と伝えられたからだ。
2月26日朝、自民党TPP参加即時撤回を求める会 26日朝に開かれた「TPP参加の即時撤回を求める会」では「一任は承認できない」、「マスコミ報道で知った」、「地元から抗議が多数来ている。説明できない。党内議論をふまえて意見を言っていくことが大事」といった指摘が相次いだほか、「この会として意思を明確にするため一任反対を決議すべきだ」との意見まで出された。
 この決議については森山裕会長が「党と政府が対立しているような姿はみせるべきではない。決議はお待ちいただきたい」と述べてて議論を収め、「われわれの懸念を反映させる努力を続ける」とした。
 ただ、同日午後からの農林水産戦略調査会・農林部会・農林水産貿易対策委員会の合同会議では幹部から役員会での安倍首相の発言が紹介された。
 それは「参加するかしないか、その時期についても任せてほしい。判断するにあたっては農業、農村の実情をいちばんよく知っている自民党の意見をよく聞いたうえで行う」だったと説明され「一任という言葉は出ていない」と強調した。
 こうした認識のもとに衆院選での政権公約6項目を柱とした内容を「守り抜くべき国益」として、これを首相をはじめ政府に認知させ、かりに交渉参加判断をするなら、この国益をどう守るか「明確な方針を示すべき」との意見としてまとめた。
 決議が採択された後、議論を聞いていた石破茂幹事長は「総理の言葉にしたがって議論をしていただいた。決議のみならず1人ひとりの意見は総理に伝えていただく」として、外交・経済連携調査会の衛藤征士郎会長ら「幹部と(安倍首相が)面談していただく時間をとる」と話した。衛藤会長によれば、28日にも首相に決議内容を説明するという。
 石破幹事長はこうした今後の手続きを説明し、「そのうえで総理が判断したなら一致して支えなければならない。総理が日米首脳会談で最初に言ったのは公約であり国民との約束。交渉を有利に導くためにもわれわれは国民の支持がなければならない。強い交渉力を与えていただきたいとお願いしたい。すべての議員が選挙区で説明のつかないような事態には絶対にしない」と強調した。

(写真)
2月26日朝、自民党TPP参加即時撤回を求める会

◆メリットと影響試算はいまだ示されず

 ただ、日米首脳会談を受け「まさに風雲急を告げる」(小里農林部会長)状態になっていることに懸念や疑問が多く示されている。
 まずは政権交代前の野党時代には民主党政権に対してTPP交渉の状況について「情報公開がない」と批判していたが、政権の座についてもこれまでに交渉状況についての情報は示されていない。
 こうした点については「情報不足、説明不足を反省してこの政権ができたのではなかったか」(金田勝年衆院議員)「民主党(時代)とは違う。(外務省、経産省などの)体制を改めて固めるべきだ」(山田俊男参院議員)などの指摘も出ている。
 TPP協定を締結した場合のメリットもいまだ示されていない。「国益を考えて、というが結局いつまで経ってもメリットが示せないではないか」(西田昌司参院議員)との指摘もある。また、推進派ではあるが川口順子元外相も「攻めるべきは攻めるべき姿勢も重要」として交渉によって日本が何を得るかを明確にすべきと話した。
 これに関連し交渉参加した場合の影響についての政府統一試算はいまだ示されていない。自民党の連日の部会で政府にしばしば影響試算への質問が出されたが政府は「準備中」との回答にとどまった。影響試算が示されなければ「判断する材料が何もない」という声もあるが、影響試算が示されなくても首相が判断するのでは、との懸念もある。
 ただし、これについては森山裕農林水産貿易対策委員会委員長は「影響試算は絶対条件。その前の判断はないと思う」としているほか、安倍首相も27日の参議院予算委員会で「影響を精査したうえで判断したい」と民主党の福山哲郎議員への答弁のなかで話した。

◆党にTPP対策委員会を設置

 そのほか日米共同声明についての疑問も多い。
 共同声明の第2段落には「TPP交渉参加に際し、一方的にすべての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではない」とあるが「聖域とは書いていない。要は交渉次第ということ。何も変わっていないではないか」(武部新衆院議員)といった指摘も出た。
 また、参加そのものに反対する意見も多いが「一方でかりに参加しても国益を損なうことが分かれば交渉決裂(離脱)もありえることを担保しておく必要がある」(原田義昭衆院議員)との声もある。
 さらに、共同声明の第3段落で自動車や保険について「なされるべき更なる作業が残されている」ことについて、これが日本の交渉参加前の事前協議ということなら「片方のセンシティビティが決着することになる」(宮腰光寛衆院議員)との意見もあった。
 第2段落で日本には農産品、米国には工業製品に「センシティビティが存在する」と確認してはいるものの、自動車が事前協議で決着すれば「日本にとって攻める弾がなくなる。どういう交渉をするのか」(同)ということになりかねないとの指摘だ。
 こうした問題や、さらにこれまで強調されてきたように「TPPは農業だけの問題ではない」という点も含めてさらに検証していくため、自民党はTPP対策委員会を立ち上げる。委員長には西川公也衆院議員が就任する。
 衛藤会長によると、この委員会には農業だけでなく厚労部会など関係する部会長をメンバーとし広範な意見を集約していくといい、できるだけ早く開催、頻繁に開催して課題を整理し安倍首相の判断に反映させたい考えを示した。

 

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