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2013.05.27 
農業・農村の所得倍増政策 政府が検討本部設置一覧へ

 安倍首相が5月17日に打ち出した成長戦略第2弾のなかで農業・農村の所得倍増や輸出拡大などの実現に向け、政府は5月21日の閣議で「農林水産業・地域の活力創造本部」を設置して施策の検討を始めた。掲げた目標が実現するか、具体策が注視される。

◆輸出は品目を絞る

 安倍首相は世界の食市場の規模は「10年程度で倍増する見込みだ」と強調した。
 農水省によれば09年の世界の食市場(加工・外食)は340兆円。これが2020年には680兆円に倍増することが見込まれている。このうち中国・インドを含むアジアでは09年の82兆円の市場規模が229兆円へと約3倍に増える。
 これをふまえ農林水産物・食品の輸出額を「2020年までに1兆円へ拡大」と目標を掲げた。国別・品目別に戦略を策定し、たとえば米では▽現地での精米や炊飯ロボットと組み合わせた外食販売▽日本酒等米の加工品、などを戦略として、香港、シンガポール、豪州、EU、米国などを輸出重点地域とする。日本で精米された米の販売には力点を置かず、現地精米やパックご飯などで売り込み、2020年には600億円とする。
 同様の考え方で水産物、加工食品、青果物、牛肉を柱に戦略を打ち出す。
 また、6次産業化と医療との食・農の連携など異業種連携も含め、6次産業の市場規模を「10年間で10兆円に拡大」も目標に掲げた。農水省の調査によると6次産業化の市場規模は現在、1兆円となっている。

◆所得倍増、2%成長を前提

 1990年の農業生産額は13.7兆円。農業所得は6.1兆円だった。それが2010年度には生産額9.8兆円で所得は3.2兆円と半減した。
 安倍首相は17日のスピーチで「正式に農業・農村の所得倍増目標を掲げたいと思う」と述べ、池田首相のもとで策定された所得倍増計画も10年計画であったとし、今後、10年間で「農業・農村全体の所得を倍増させる戦略を策定し実行に移す」と強調した。
 所得倍増目標は自民党も参院選向け公約のなかでも打ち出している。
 そのイメージは年率2%成長のもと、現在の農業・食料関連産業の生産額100兆円が10年後に120兆円になるとし、このうち農業生産額そのものを農産物の輸出促進や耕作放棄地のフル活用などで12兆円までに拡大、さらに6次産業の市場規模を10兆円に拡大させるというもの。そのうえで6次産業の市場拡大分から農村に還元されることを想定し所得倍増につなげることを描く。
 ただ、自民党の検討では農業の担い手の所得を倍増させる観点で検討されてきたが、安倍首相はスピーチで「農業・農村全体の所得を倍増させる」という方針を示した。
 この点について林芳正農相は21日の会見で党の意見も聞くとしながらも、「農業・農村の所得を増大させるという方向で検討していければ」と話した。
 また、零細農家も施策の対象になるのかとの問いには「地域全体の所得を増大させていく方向で検討していきたい」と話すとともに、そのための施策としては農業の多面的機能に着目した日本型直接支払いも具体策となることを示唆した。

◆6月の骨太方針に反映

 首相官邸に設置された「農林水産業・地域の活力創造本部」は安倍首相が本部長で菅官房長官と林農相が副本部長に就任。この本部は所得倍増や輸出戦略、農地の集約化など成長戦略で掲げた目標について、産業政策と地域政策の両面から検討するという。林農相は「現場の声をしっかり踏まえつつ、今後の政策の方向性を『農林水産業・地域の活力創造プラン』としてできるだけ早期に取りまとめるべく精力的に検討を進めていきたい」としている。
 とりまとめの時期については「参議院選挙前というのはやや難しい」として、検討の過程で整理された方針を政府が6月にもまとめる「骨太方針」(経済財政の基本方針)に反映させることや夏の概算要求にも反映させる意向を示した。

【安倍内閣が成長戦略第2弾で打ち出した主要な目標】
○農業・農村全体の所得を10年間で倍増(現在、約3兆円)
○農林水産物・食品の輸出額を2020年までに1兆円(同4500億円)○6次産業の市場規模を10年間で10兆円(同1兆円)
○10年間で担い手の農地利用が8割を占める構造(同49%、226万ha)


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