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2015.04.16 
産直は地域創生の原動力 生消研がシンポ一覧へ

「運動」の原点に戻って

 農産物の産直運動は地域創生にどのような役割を果たせるかー。生産者と消費者の連携をめざす「食糧の生産と消費を結ぶ研究会」(生消研)は、4月11日、東京でシンポジウムを開き、「地域創生と産直運動を考えるーコミュニティづくり・人づくりー」のテーマで実践報告と意見交換を行った。

産直と地域創生でディスカッションするシンポジウム シンポジウムでは、生消研の松本和広会長が「定年帰農でなく、農村回帰の動きが一つの大きなベクトルになってきた。農村は厳しいなかにも明るさが見える。生産者と消費者を結ぶ産直組織として、5年、10年先の農業と都市の生活者の食を考えていきたい」と

問題提起。農事組合法人・埼玉産直センター、ながさき南部生産組合、大分県下郷農協、山形県庄内みどりの4団体が実践報告した。


■埼玉産直センター(埼玉県)

◆消費者の支援

 農業が元気に
 「農業は守るのではなく、育てることであり、そのため消費者との信頼関係を築き、ともに成長することが大事だ」と、産直の意義を強調したのは埼玉産直センターの木村友一代表理事。それは昨年2月の雪害で実感したという。
 想定外の大雪は、会員生産者のビニールハウスの約60%、21haを倒壊させ、推定被害額は約10億円。意気消沈する生産者にとって、再建の大きな励ましになったのは取引先や産直団体によるボランティア支援だった。こうした支援で生産額は88%まで回復。「特

に若いに人は、雪害をバネに新たな取組みの芽が出てきた」と言う。
 同センターは野菜の産直を基本とする組合で、30品目以上を生産・販売する。産直の難しさは余剰・欠品を無くすことだが、注文に合せて生産するオーダー制は、数量を確保するため適期前に収穫せざるを得ないこともあり、生産者の負担が大きくなる。そこで

同センターは全量出荷とフリー出荷体制をとっている。「生育ステージに合わせて全量を把握でき、出荷量が安定する」というわけだ。
 フリー出荷体制を維持するため、センターは「数量に責任を持つ意識と生産者への情報提供が欠かせない」と指摘する。産直の基本について大村理事は「高い時に安く、安い時に高く売り、同じ売り上げで生産者の手取りを増やすこと」と言う。その上で、「消

費者の声援が農業を元気にする妙薬。それが安全・安心な食料の安定的確保につながる」と消費者との連携の重要性を強調する。


■ながさき南部生産組合(長崎県)

◆直販が9割に 法人の育成も

 ながさき南部生産組合は長崎県島原半島をエリアとする農事組合法人。組合員141人で、事業量は約23億円(2014年)。資材共同購入会社と直営の農場を持つ。取引先は生協が7割を占め、直販は全売り上げの9割以上に達する。
 同組合は1975年、会員7人の生産出荷組合としてスタート。生協やスーパーなどとの取引のほか、50km離れた諫早市に直売所を設け、この他にも福岡県内にもスーパーや生協の店内にインショップを展開し、売り上げを伸ばしている。
 特徴の一つは専業の家族経営農家による組合だというところにある。組合への加入は明確な「参加の意思」と「自律性」を求める。これは、出荷する農作物の選別・チェックの責任は個人が負い、品質のクレームも個人の責任で処理することなどで求められる。集

まった農作物は「ながさき南部生産組合」のブランドで販売するが、個人と組合の責任と役割が明確にしている。
 しかし、政府の「食料・農業・農村政策審議会」の委員も務める、同組合の近藤一海会長理事は家族経営の困難さを指摘する。法人経営が成り立たないことを家族経営はやっていることを認識する必要がある。だが、家族経営だけだとスキルが上がらない問題があ

る」と指摘する。
 同会長は今後の目標として、10年で売り上げ1億円のスーパー農家の育成、そのため現在23haの施設を40haに拡大する。「担い手を確保し、営農を継続させるには所得の安定が第一。そのためのモデル経営をつくりたい」と抱負を述べた。


■下郷農協(大分県)

◆人を呼ぶ産直 田園に新風が

 長い産直運動の歴史を持ち、産直運動では草分け的な存在である大分県の下郷農協。かつて注目されたころに比べ、販売額は大きく落ち込んでいるが、都市消費者との連携で築いた産直の精神は、現在の同農協の事業や、組合員の中心とする地域の人の中に生き

ている。同農協の松本聡雄参事はそれを、新規住人の増加にみる。
 下郷農協のある耶馬溪町は人口の減少が著しく、2014年の高齢化率は50%を超える。さらに農協合併で農家の出荷場所や資材の購入先が近くになくなり、耕作放棄地が増え、役場も支所になって縮小した。
 そのなかで下郷農協は未合併のまま残り、残された数少ない地域の拠点となっている。もう一つの拠点である小学校統合の話があった時に総代会で決議し、中心になって反対運動をしたのは農協だった。
 一方で、震災・原発事故などを契機にさまざまな価値観を持って下郷地区を訪ねてくる新規就農や移住希望者が増えた。「いまの里山への流れは、かつての就農を目的としたものとは違うが、下郷農協の存在があることで生活できることには間違いない」と言う


 小さな農協ながら下郷農協は、働き場(加工事業)、農産物の出荷場、店舗、金融機関、医療機関(診療所)、高齢者施設、そして存続している小学校と、里山で暮らす条件を備えている。「行政から見放される山村で下郷農協の存在が人々を安心させていると

強く感じている」と松本参事は、高齢山村における農協の役割を強調した。


■JA庄内みどり(山形県)

◆消費者と共に 地域社会守る

 JAと生協との提携が各地で進んでいるが、長い歴史を持ち、大きな成果をあげている提携の一つにJA庄内みどり(当時遊佐町農協)と生活クラブの取組みがある。1971年、ササニシキ3000俵の契約から始まった。
 その後、品種・農法・価格・食べ方など全般にわたって生産者と消費者が直接話し合って創った「共同開発米」の取組みに発展。さらに生産原価保障方式の採用、生産者全員のエコファーマー取得、減農薬・減化学肥料栽培導入などへと広がった。
 一方、1993年の米不足の時は、「どんぶり一ぱい運動」を展開して、生活クラブへ米を届け、2004年の潮風害の時は生活クラブからカンパを受けるなど、双方の苦境の時にはお互い助け合った。
 この延長線上に、開発米部会の若い後継者による、持続可能な地域社会をめざす「ゆめ遊佐プロジェクト」が生まれ、また生活クラブ・遊佐町・JA庄内みどりの3者による「地域農業と日本の食料を守り、持続可能な社会と地域を発展させる共同宣言」の締結などが

ある。
 佐藤支店長は生協とのつき合いの中で、「農民運動とは違う情報の活用や活動の仕方を教えてもらった。かつては何を決めるにも農家や消費者と何度も話し合って最終判断していた。しかしいまは職員だけで決めることが多い。これでいいのかと思っている」と

、問題提起した。

■ディスカッション

◆協同活動攻撃に警戒を

 産直は、モノの取引と共に人と人の交流が重要だが、それが最近、モノだけの取引きに終わる傾向がある。ディスカッションではこうした産直の本質的な問題点が指摘され、「産直本来の姿に戻るべきだ」との意見があった。
 この考えから「産直は事業ではなく、運動として展開すべきものであり、人づくりの場でもある」、「販売という狭い範囲でなく地域、コミュニティを維持・発展させるためのツール。その地域を壊そうとしているのが農協改革であり、これは当然ながら、やが

て生協の共同購入や、産直の協同活動に対する攻撃になるのではないか」などの意見が出た。

(写真)産直と地域創生でディスカッションするシンポジウム

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