蜜蜂の大量失踪事例 確認されず-農水省調査2016年7月8日
農林水産省は7月7日、25年度から27年度にかけて実施した農薬による蜜蜂被害事例調査結果と今後の取り組み課題について発表した。調査結果から蜜蜂の大量失踪事例は確認されず、発生した被害は比較的小規模だったが、被害軽減のために農薬使用者と養蜂家の情報共有、巣箱の設置場所の工夫などが有効だとしている。
報告された被害事例は69件(25年度)、79件(26年度)、50件(27年度)。被害にあった巣箱の比率は全国の巣箱数の1%未満だった。
どの年も報告された被害は1巣箱あたりの死虫は最大で1000~2000匹以下という比較的小規模な事例が多かった。一般的に巣箱には数万匹の蜜蜂がいて、数が多少減少しても、飼養管理によって蜂群は維持回復するという。
この調査は2000年代から欧米で蜜蜂の大量失踪(蜂群崩壊症候群、CCD)が問題となったことから農薬と蜜蜂減少との関連性を把握するために実施された。3年間の報告事例では蜜蜂の大量失踪に該当する事例はなかった。
ただ、巣箱の前から採取した死虫からは各種の殺虫剤が検出され、それらの成分は水稲のカメムシ防除剤としても使用可能だった。
3年間の被害を詳しく調査したところ、(1)被害の77~90%は巣箱を置いた場所の周辺で水稲が栽培。(2)それら被害事例を作期別にみると80~85%は水稲のカメムシ防除が行われる時期に発生。(3)被害の57~67%は被害の発生直前に水稲カメムシ防除剤が蜂場周辺の水稲に散布されていた、ことが分かった。 また、死虫中の農薬を分析したところ、約7割の死虫から蜜蜂の半数致死量(暴露することで半数が死亡すると予想される量)の10分の1以上に相当する濃度の水稲カメムシ防除剤が検出されたという。ただ、水稲カメムシ防除以外に使用される殺虫剤も少ないながらも検出された。
こうした結果から、農林水産省は被害の原因について、水稲のカメムシ防除に使用された殺虫剤に蜜蜂が直接暴露した可能性が高い、と推測した。 この問題をめぐって関心が高いネオニコチノイド系農薬は、農水省調べで水稲カメムシ防除の散布面積で63%(24年)だった。今回の調査で死虫から検出されたネオニコチノイド系の割合は66%だったことから、ネオニコチノイド系農薬が原因と結論づけるデータは示されなかった。
農水省が被害軽減のために都道府県に対策を聞き取ったところ、▽農薬使用者と養蜂家の間の情報共有、▽巣箱の設置場所を水田に囲まれた場所以外にする工夫・農薬散布の連絡を受けた場合の退避、▽蜜蜂の活動が盛んな時間帯の農薬散布の回避・蜜蜂が暴露しにくい形態の農薬(粒剤等)使用などが有効なことが分かった。
農水省は今後も被害情報について収集し知見を集積するとともに、水稲のカメムシ防除時期の注意喚起なども含め、対策を継続していく。
重要な記事
最新の記事
-
【現地レポート・JAの水田農業戦略】新たな輪作で活路(2)子実コーンの「先駆者」 JA古川2024年3月29日
-
農業者所得増加へデジタルビジネス加速 農林中金 中期ビジョンを策定2024年3月29日
-
「子ども世代に農業勧めたい」生産者の2割 所得向上が課題 農林中金調査2024年3月29日
-
東京・大阪で組合長らが 「夢大地かもと」スイカをPR JA鹿本2024年3月29日
-
全国から1,000名を超える農業の担い手が集う 「第26回全国農業担い手サミットinさが」開催 佐賀県2024年3月29日
-
家族みんなで夏の農業体験はじめよう 食農体験イベント「土袋でデコきゅうり」開催 JA兵庫六甲2024年3月29日
-
(377)食中毒1万人は多いか?【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年3月29日
-
【浅野純次・読書の楽しみ】第96回2024年3月29日
-
【人事異動】全国農業会議所(4月1日付)2024年3月29日
-
品種で異なるメロンの味わいを体験 自由が丘「一果房」で29日から 青木商店2024年3月29日
-
第160回勉強会「レジリエントな植物工場運営・発展に向けて~災害からの復旧・復興事例から学ぶ」開催 植物工場研究会2024年3月29日
-
創立55周年記念 ガーデニング用 殺虫・殺菌スプレーなど発売 住友化学園芸2024年3月29日
-
「核兵器禁止条約」参加求める26万の署名 藤沢市議会が意見を採択 パルシステム神奈川2024年3月29日
-
尾鷲伝統の味「尾鷲甘夏」出荷開始 JA伊勢2024年3月29日
-
令和6年能登半島地震 被災地農家を応援 JA全農石川へ寄付 KOMPEITO2024年3月29日
-
林木育種センター九州育種場 九州育種基本区の「スギエリートツリー特性表」公表 森林総研2024年3月29日
-
農業フランチャイズのクールコネクト シードラウンドで3200万円を調達2024年3月29日
-
鳥インフル 米メイン州からの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年3月29日
-
畜産施設の糞尿処理で悪臭対策 良質な堆肥化を促進 微生物製剤を開発 B・Jコーポレーション2024年3月29日
-
水田のスマート水管理で東大大学院農学生命科学研究科と共同研究開始 ほくつう2024年3月29日