「共同購入はフィクション」 小泉進次郎・自民党農林部会長が講演2016年11月17日
自民党の小泉進次郎農林部会長は11月15日に東京都内で講演し、農協改革について、政府の規制改革推進会議による農協改革の提言を評価する考えを述べた。講演の中から、小泉部会長が農業・農協についてどのような認識を持っているかを垣間見ることができる。関係者から聞き、講演の要点を整理した。
小泉氏の農業・農協についての認識は、現在、高齢化で日本の農業の持続可能性がなくなっている。だが若い人のなかには経営感覚を持って規模拡大・販路開拓を行い、JAだけに頼らないいくつかのチャネルを持ちながら頑張っている生産者がいる。こうした生産者はJAの利用率が低く、「そうした状態ではJAに未来はない」と指摘。つまりJAは意欲ある農業者のニーズに応えていないとして、農協改革が必要というわけだ。
また、農業イコール衰退産業、弱者、儲からないというのはおかしい、として「そこを変えたい」という。TPPはその契機になるはずだったが雲行きが怪しくなり、その結果、JA関係者が、JAは「このままでいいのだ」と考えるようになったら、「それが最大の脅威」だという。
そこで小泉氏のJAへの認識を探ると、「(経済事業が)赤字でも最後は(他の部門で)埋めてもらえる」、「最高のサービスを顧客・利用者に提供できていない」ことを挙げる。
特に生産資材は、JA以外から購入すると安いとしてJAは「まだやれることがあるはず」という。全農は共同購入で安く購入できるというが、民間の企業は全農ほどの規模でなくても安くしているとして「共同購入はフィクションだ。そう思わざるを得ない」と指摘。全農は安く購入する努力を怠っているというわけだ。
信用事業については、組合員の高齢化や人口の減少で経営が厳しくなり、「JAはこのまま金融でやっていこうとおもっても無理だ」という。だったら農林中金の代理店となり、それで浮いた信用部門の人員を経済部門に移して、農家のための経済事業に専念すべきだという。その選択は「苦しいかも知れないが、山登りと同じ。登り切ったら次の展望が見える」。その具体的展望を明確に示したわけではないが、「縮小し続ける国内のマーケットだけを見ず、世界のマーケットを広げていく」としており、その一つに農産物の海外輸出を挙げた。
また、畜産の飼料は海外に頼らざるを得ない現実を認め、「自給力と調達力(輸入力)が大切」と指摘する。全農は「飼料を海外から持ってくることは、やっていたが、輸出はやってこなかった」と、全農グレインの例を挙げて、これから全農は輸出に力を入れるべきだと指摘した。
規制改革推進会議の提言にある全農の買取販売については「農家がリスクを負うか、全農がリスクを負うか。これ以上農家にリスクを負わせるべきではない。買い取ってしっかり売り、農家の手取りを増やすよう、営業力をつけるべきだ」との考えを示した。
さらに、日本の農業は家族経営が大事としながらも、新規就農のほとんどは法人経営であり、「所得を上げるには、最終的には経営感覚をしっかりもってもらわなければならない。意識改革、構造改革が進めば、結果として所得増大に繋がって担い手も集まるのではないか」と、生産者・JAの経営感覚向上の必要性を強調した。
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