自動車関税で交渉難航-日EU・EPA交渉2017年6月15日
政府は7月上旬の日EU首脳会談で日EU・EPA交渉の大枠合意をめざしているが自動車関税の撤廃をめぐって難航している。ただ、双方で早期合意をめざすことで一致していることから国内農産物への影響など交渉を注視する必要がある。
日本とEUのEPA交渉は2013年3月に交渉開始を決定した。EU(28か国)は総人口約5億人(日本の4倍)で世界のGDPの約22%(同約4倍)を占める。日本の対EU輸出額は8兆円、輸入額は8.2兆円で、日本の輸出入総額の10%を占める。
日本政府は海外展開を押し進める日本企業・日本産品にとってEUは大きな魅力だとして、乗用車10%、電子機器最大14%などのEU側の高関税の撤廃・削減や、日本の農畜産物への輸入規制の改善などによって日本産品のEU域内での競争力を高めたい考えだ。
交渉は物品市場アクセス、非関税措置、原産地規則など27分野で行われており、5月のG7サミットに合わせて行われた安倍首相とトゥスクEU大統領との首脳会談で▽大枠合意が手の届くところまで来ている、▽双方が政治的指導力を発揮する段階に来ているなどの認識が共有されたという。 これを受けて安倍首相は7月7日からのG20首脳会合の機会に大枠合意をめざす方針で、自民党は日EU等経済協定対策本部を設置した。本部長には西川公也氏が就任した。本部のもとに分野別に5つのグループを設置。農林水産分野(第4グループ)の主査は小泉進次郎農林部会長が就任した。 交渉は行われているが情報はほとんど開示されていない。6月15日の自民党の会合で小泉農林部会長はEUへの輸出拡大という「攻め」の姿勢も重要だと強調したが、同時にTPP交渉にくらべても情報提供が少ないことを指摘し政府には「そこも忘れずに」と釘を刺した。農業団体からも、可能な限り情報開示し、「必要な国境措置をしっかり確保することを基本に交渉していることを周知し、農業者をはじめ国民の不安の解消に努めること」(全国農業会議所)などの要望があった。
ただし、交渉は自動車分野が難航しているとされる。
日本は韓国がEUとのFTAで5年で関税撤廃した水準を要求しているとされるが、一方、TPP交渉では日本は米国の乗用車関税2.5%を25年かけて撤廃することに合意したことから、EUは抵抗している。
かりにTPPと同水準を求めた場合、EUは米国の4倍の関税率10%となっていることから、削減期間も米国の4倍、すなわち25年×4=100年がTPPと同水準だという話になりかねない。
それは非現実的だとして関税撤廃・削減の期間短縮などを要求すれば、EU側は農林水産物分野で高水準の要求を突きつけてくることも考えられ、それは豚肉、乳製品などでTPP水準以上の合意ということになりかねない。このため交渉が大枠合意に至るかどうか、そのハードルの高さを指摘する声もあるが、「これまでは守れ、守れの大合唱だったと思うが、今回は攻めろ、こじ開けろという声も出た」(小泉農林部会長)など農林水産物の輸出拡大のチャンスという声もある。与党内で6月中に政府に求める対応方針を決める予定で短期間の議論に注視が必要になっている。
重要な記事
最新の記事
-
【JA全農の若い力】家畜衛生研究所(1)養豚農家に寄り添い疾病を防ぐ クリニック北日本分室 菅沼彰大さん2025年9月16日
-
【石破首相退陣に思う】戦後80年の歴史認識 最後に示せ 社民党党首 福島みずほ参議院議員2025年9月16日
-
【今川直人・農協の核心】全中再興(6)2025年9月16日
-
国のプロパガンダで新米のスポット取引価格が反落?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年9月16日
-
准組合員問題にどう向き合うか 11月15日に農協研究会開催 参加者を募集2025年9月16日
-
ファミリーマートと共同開発「メイトー×ニッポンエール 大分産和梨」新発売 JA全農2025年9月16日
-
「JA共済アプリ」が国際的デザイン賞「Red Dot Design Award2025」受賞 国内の共済団体・保険会社として初 JA共済連2025年9月16日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」北海道訓子府町で じゃがいもの新品種「ゆめいころ」を収穫 JAタウン2025年9月16日
-
山形県産「シャインマスカット」品評会出品商品を数量限定で予約販売 JAタウン2025年9月16日
-
公式キャラ「トゥンクトゥンク」が大阪万博「ミャクミャク」と初コラボ商品 国際園芸博覧会協会2025年9月16日
-
世界初 土壌団粒単位の微生物シングルセルゲノム解析に成功 農研機構2025年9月16日
-
「令和7年8月6日からの低気圧と前線による大雨に伴う災害」農業経営収入保険の支払い期限を延長(適用地域追加)NOSAI全国連2025年9月16日
-
農薬出荷数量は1.3%増、農薬出荷金額は3.8%増 2025年農薬年度7月末出荷実績 クロップライフジャパン2025年9月16日
-
林業の人手不足と腰痛課題解消へ 香川西部森林組合がアシストスーツを導入 イノフィス2025年9月16日
-
農業支援でネイチャーポジティブ サステナブルの成長領域を学ぶウェビナー開催2025年9月16日
-
生活協同組合ユーコープの宅配で無印良品の商品を供給開始 良品計画2025年9月16日
-
九州・沖縄の酪農の魅力を体感「らくのうマルシェ2025」博多で開催2025年9月16日
-
「アフガニスタン地震緊急支援募金」全店舗と宅配サービスで実施 コープデリ2025年9月16日
-
小学生がトラクタ遠隔操縦を体験 北大と共同でスマート農業体験イベント開催へ クボタ2025年9月16日
-
不在時のオートロックも玄関前まで配達「スマート置き配」開始 パルシステム千葉2025年9月16日