西日本豪雨の爪痕、各地で生々しく 農業被害の実態把握に懸命2018年7月27日
・冠水の事後対策も早急に
7月の豪雨は愛媛、広島、岡山県を中心に大きな被害を与え、7月26日時点の農林水産関係被害は1600億円を超え、うち農業被害は877億円にのぼる。政府は5月20日から7月10日の大雨被害に対して、7月24日に激甚災害に指定したが、被災地では、冠水した家屋の片付けや、道路や水道などライフラインの復旧が優先され、農業関係の被害の実態は、まだ十分把握されていないのが実情で、さらに被害額が増えるのは確実。現地では猛暑が続いており、冠水した農作物は病害虫の発生など、事後対策がこれから問題になる。各地の農業の被害状況を拾った。
写真1 まるで蟻地獄のよう。いたるところで土砂崩れが起こったミカン園(宇和島市喜佐方で)
今回の西日本豪雨の被害は、愛媛、広島、岡山の3県に集中している。特に愛媛県のミカン産地である宇和地方は、傾斜地の園地が多く、土砂崩れで流され、大きな被害を受けた。被害の大きかったJAえひめ南管内、吉田町の玉津地区では、国交省の調査で700か所近い土砂崩れが確認された。同じく吉田町の喜佐方では大きな山崩れでミカン園の跡形もなくなった園地もある(=写真1)。
「農道も崩れて入れず、どこまで被害を受けているのか分からない」(JAの職員)というのが実態だ。スプリンクラー施設も破損し、残ったミカン園も冠水、農薬散布ができず、収穫は期待できない園が多く出るものとJAでは心配している。
写真2 泥が流入し使用不能になった選果場(愛媛県野村町で)
農業関係被害はミカン以外でも大きく、JAひがしうわでは、ダムの放流で水位が上がって被害を大きくした肘川沿いにある西予市野村町にあるキュウリの共同選果場が冠水し、まったく使用できなくなった(=写真2)。JAは仮の集荷施設のひとつとして米の低温倉庫を活用しているが、機械がなく作業ができないため農家は自分で選別し、仮の集荷施設に運んでいる。
キュウリの栽培と収穫はこれからも続くが共同選果場がないままでは重労働となり「秋の収穫をあきらめる生産者が出ないか心配だ」とJAひがしうわの被害状況を同JAの古本陽一営農部長は心配する。
仮の集荷場としている米の低温倉庫は例年8月のお盆のころから米の受け入れが始まるが、野村町では水路とポンプが破損して水が使えないという。「出穂後の水がいちばん必要なときに水がない。雨も7月7日から降らず、稲はだんだん枯れあがっている」と言う。
畜産農家でも牛の飲み水用のポンプが壊れたために水の運搬を余儀なくされている。樹園地も道路が寸断するなど現地に近づけず、被害状況が分からないところも多い。スプリンクラーや急傾斜地の運搬用モノレールが破損している樹園地もあり、古本部長は「高齢農家がぎりぎりで農業をやってきた。耕作放棄が増えるのではないかと心配だ」と、地域の農業の将来を懸念する。
写真3 山崩れで施設の一部が倒壊したライスセンター(三原市大和町で)
広島県でも、県南部を中心に各所で大小の山崩れが発生し、水田やミカン園が流されたり、泥をかぶったりした。JAの施設被害も大きく、JA広島中央では土砂崩れで三原市大和町にあるライスセンターの一部が倒壊した(=写真3)。
写真4 土砂崩れで半壊したピオーネのブドウ園
河川の氾濫で、住宅の冠水被害が大きかった岡山県だが、農業関係では、施設被害が大きく、JAびほくではブドウ選果場や育苗センターなどが冠水し、山間部では県内トップのブドウ「ピオーネ」のハウスが倒壊したところもある(=写真4)。8月下旬から始まる出荷を控え、JAや生産者をやきもきさせている。
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