備蓄米の運用改善など米の需給対策が課題2018年11月19日
JA全中の30年産および31年産以降の水田農業対策に関する政策提案では、米の需要減少が想定されるなか、31年産の全国生産量を減らさざるを得ない状況だとして、水田フル活用の推進と政府備蓄米の運用改善など、需給と価格の安定のための政策強化が必要だとしている。
政策提案では▽食料安全保障を担保する国の基本政策の確立、▽水田フル活用による需要に応じた生産と生産者の万全な所得確保、▽SBS輸入米と政府備蓄米制度の運用改善などを挙げている。 政策提案に向けJA全中の水田農業対策委員会では「TPPやEPA、生産調整の見直し、種子法の廃止など農家は相当混乱している。国として農業・農村をどういう方向に持っていくのか、食料自給率45%に対してどういう対策をしていくのかまったくみえない」、「現場は不安があるなかで生産活動。10年先、20年先に地域・農業・農村はどうなるのか絵を描くことが必要」など、基本政策確立の必要性を指摘する意見が出されている。
また、水田フル活用政策については「米の問題は現実的に需給バランスを取らなければ解決しない。食料安保や多面的機能の面からも予算については長期的な施策を」、「飼料用米を30~40ha作付けしている農家もいる。支援水準見直されると主食用米にもどってしまう。支援水準はぜひ維持を」との声が上がっている。
需給変動をふまえた対策の必要性については、「需要に応じた米の生産、や『売り先が確定している場合は、どんどん生産してください』というのは生産者に誤まったメッセージを与える。主食用米については需要と供給のバランスが見合うような形で生産を進めてもらうよう、農家にも分かりやすく示すべき」などの意見や、全国組織の役割についても「全国組織が各県に作付け参考値として打ち出すことができないか。各県に任せているだけでは増える県、減る県が出てくるので力を入れてやってほしい」との要望もある。
当面は主食用米の需要見通しとそれに基づく31年産米の全国の適正生産量がどうなるか。7月策定の農水省の需要見通しでは30年7月から31年6月までの需要量を741万tとしているが、過去3年平均で推定すると726万t程度という推計もある。その場合は6月末の民間在庫量が7月見込みの184万から197万t見込みとなる。在庫が200万tを超えると米価が下落することから適正な在庫とするための生産量をどう見通すが課題となる。
もうひとつはTPP11の発効で現実化する豪州産SBS輸入米枠の設定だ。来年度は3月までの2000tと4月以降の6000tの計8000tの枠が設けられる。TPP等関連政策大綱では「国別枠の輸入量の増加が国産の主食用米の需給および価格に与える影響を遮断する」として国別枠の輸入量に相当する主食用米を政府が備蓄米として買い入れることを決めている。
その具体化が課題となるが、30年産では20万t買い入れる予定の政府備蓄米は12万tしか落札していない。そのためJAグループは備蓄米が確実に落札されるような運用改善や、主食用米並みの買い入れ価格とすることなどを求めている。
(関連記事)
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