31年産米 前年比で最大17万t減-適正生産量2018年11月29日
農林水産省は11月28日、食料・農業・農村政策審議会食糧部会を開き、31年産主食用米の適正生産量を718万t~726万tとすることなど「米の基本指針」を諮問、部会はこれを了承し決定した。31年産米の適正生産量は、735万tの30年産にくらべ最大で17万t減産することが必要となる。
◆人口減少 影響大
農水省は米の基本指針の策定で今回、需要見通しの算出方法を変えた。
これまでは平成8/9年から直近までの需要実績をもとに傾向(トレンド)を推計して算出してきたが、最近は推計値より実績値が大きく減少するようになった。たとえば、29/30年(29年7月~30年6月)はトレンドで見通した値は752万tだったが、実績値は740万tだった。
農水省はこの要因として27年産からの米価上昇による消費減のほかに、平成20年をピークにわが国の人口が減少局面に入ったことが影響しているとして、算出方法の見直しを検討した。
(写真)食糧部会であいさつする小里泰弘農水副大臣(右)、中央は中嶋康博部会長、左は天羽隆政策統括官
具体的な算出方法は、(1)平成8/9年から直近までの需要実績をそれぞれの年の人口で割って各年の1人あたりの消費量を算出、(2)算出した1人あたり消費量のトレンドをもとに、将来の1人あたり消費量を推計、(3)算出した消費量推計値に人口(推計)をかけて需要見通しを算出する、というもの。
その結果、30/31年の1人あたり消費量は58.3kgとなり、人口(約1億2635万人)から算出した需要見通しは736.4万tとなった。同様に31/32年は消費量(57.7kg)と人口(約1億2594万人)から726.3万tとなった。 このうち30/31年については30年産米の相対取引価格が29年産くらべて60kgあたり200円程度上昇していることから、これが需要減に影響すると見込み、1万減と補正し735万tを需要見通しとた。
その結果、今年6月末の190万tに30年産主食用米予想収穫量の733万tを加えた923万tが供給量となる。需要量は735万tのため来年6月末の民間在庫量は188万tの見込みとなった。
◆備蓄買い入れ増へ
一方、31/32年の需要量は726万tとされた。需要量はこれまで年間8万t減のペースとされていたのが、年間10万t減の見込みとなったことを示す。農水省は31年産主食用米の適正生産量は需要量と同じ726万tとした。この場合は32年6月末の民間在庫量は188万tとなる。
ただし、翌年6月末の民間在庫量についてはJAグループなどは180万tが適正水準としている。農水省も安定供給が確保できる水準として幅を持たせて指針で示し、180万~188万tとした。
それに即した適正生産量は718万tとなる。いずれにしても31年産の適正生産量は30年産にくらべて▲9万から最大で▲17万tとなる。前年の生産量目安より2.3%~1.2%の減産が求められることになる。
また、農水省は基本指針で備蓄米と米の輸入についての方針も示した。 備蓄米の基本的な買い入れ数量は20万tだがこれを増やす。年末にTPP11が発効し、豪州に対するSBS(売買同時入札)輸入米の国別枠ができるからだ。30年度は2000t(12月~3月までの4か月分)、31年度は6000t(当初3年間)の枠となる。
政府はTPP対策で輸入米が主食用米の需給と価格に影響を与えないよう、国別枠輸入量に相当する国産米を備蓄米として買い入れることを決めた。これを受けて買い入れの基本的な数量を21万tとする。
また、30年度のSBS輸入予定数量10万tのほかに、豪州枠の2000tを設ける。ただ、30年度のSBS輸入米入札はこれまでに2回実施されているが、落札量は7400tにとどまっている。
TPP対策は輸入米の影響を遮断するため政府備蓄米として国産米を買い入れるというのが基本。しかし、30年産米の買い入れ契約数量は12万tにとどまっている。JAグループは備蓄米が確実に落札されるような運用や、主食用米並みの買い入れ価格とすることなどを国に求めている。この日の食糧部会でJA全中の金井健常務は「まずは国産米でしっかり20万tの備蓄米を買い入れ、その後に豪州枠相当を買い入れるべき」と実効性ある需給対策を求めた。
また、需給見通しでは今回、欄外にSBS方式による輸入米が主食用として流通する、との注釈は設けられたものの、需給見通しのなかに具体的な数量としては示されなかった。なお、農水省は今回算出した1人あたりの米消費量にSBS輸入米は含まれていないと回答した。部会では今後、インバウンド需要による外国人の日本国内での米消費なども含め、さまざま米消費の動向を精査していく必要があるとの意見も出された。
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