担い手の半数 過去5年でパート中心に労働力増 日本公庫調査2019年12月5日
日本政策金融公庫(日本公庫)農林水産事業は、「令和元年7月農業景況調査」の特別設問で、融資先の担い手農家を対象に労働力の状況などについて調査した。
調査は、スーパーL資金または農業改良資金の融資先のうち1万9215先を対象に、7月に、往復はがきによる郵送アンケート調査方式で実施した。有効回答数は5378先で回収率は28.0%だった。

過去5年間の農業経営における労働力の増減(単位:%)(複数回答)
「増加」の定義は、「家族が就農した」「常時雇用をふやしている」「外国人技能実習生を増やしている」「パートを増やしている」のいずれか1つ以上回答した経営体
◆増加はしているが3割強の経営体で労働力が不足
調査結果のポイントは次のとおり。
表1のように、担い手農業者の3割超で労働力が不足が見られる。担い手農業者における過去5年間の労働力増減は「増加」(50.1%)、「変動なし」(46.2%)、「減少」(3.7%)となり、9割以上の経営体で労働力を増加または維持している。一方で、全体の三分の一(34.0%)の経営体で労働力が不足している。
労働力「増加」の方法は、表2のように「パートを増やしている」(24.7%)が最も多い。耕種農業と畜産を比較すると、耕種農業では「パートを増やしている」(26.9%)が多く、畜産では「常時雇用を増やしている」(27.8%)が多い。この背景には、労働力の需要に季節性がある耕種農業と通年雇用がしやすい畜産農業の特色の違いがあると考えられる。
業種別 過去5年間の農業経営における労働力の増減(単位:%)
売上階層別に見ると、売上規模が大きい経営体ほど、「増加」の割合が高くなる傾向がある。また、その方法は、売上規模が大きい経営体ほど「常時雇用を増やしている」「外国人技能実習生を増やしている」の割合が高い。
◆約半数の経営体で女性が経営に関与
農業経営における女性従事者(パート・研修生を除く)の割合は、「変動なし」(75.8%)が最も多く、「増加している」(16.9%)、「減少している」(7.2%)となっている。
女性従事者の割合の増減を業種別に見ると、キノコ、施設野菜、養豚の順に「増加している」が高い。また、売上階層別に見ると、売上規模が大きい経営体ほど「増加している」の割合が高くなる傾向が見られる。
また、役員や管理職などとして女性が経営に関与している経営体は53.2%。女性が経営に「関与している」割合を耕種と畜産で比較すると、耕種48.0%、畜産61.9%で、畜産経営の方が耕種経営に比べて女性が経営に関与している割合が高かった。
女性の経営への関与の内容は、「役員として登用している」(37.6%)が最も多く、売上階層別では、売上規模が大きくなるほど、女性が経営に関与している経営体の割合が高くなる傾向が見られる。
女性従事者が担当する分野は「生産」(67.2%)が最も多く、次いで「経営管理」(53.9%)、「営業・販売」(26.9%)、「6次化」(17.5%)となった。
畜産と耕種を比較すると、「営業・販売」「6次化」は耕種で女性従事者が関与している割合が高い。特に果樹経営でその傾向が高い。個人経営と法人経営では、個人経営で「生産」、法人経営で「経営管理」「6次化」の割合が高い。
売上階層別に見ると、売上規模が大きいほど「経営管理」の割合が高く、売上規模が小さいほど「生産」「営業・販売」の割合が高くなる傾向がある。
前回調査(平成28年実施)との比較では、「稲作」「施設野菜」「茶」「キノコ」を中心に多くの業種で「営業・販売」「経営管理」の分野を女性が担当している割合が上昇している。
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