日米貿易協定を承認-参議院2019年12月5日
日米貿易協定は12月3日の参議院外交防衛委員会で可決された後、4日の参議院本会議に上程され与党などの賛成多数で可決、承認された。日米両政府は2020年1月1日に発効させる方針で新年からすでに発効しているTPP11、日欧EPAに加えてかつてない農産物貿易の総自由化に突入する。コメなどは除外されたがさらなる協議が予定されており、米国から農産物のさらなる自由化協議を求められる可能性も否定できない。
日米貿易協定は昨年(2018年)9月の日米共同声明に沿って今年4月から交渉を開始した。政府は、昨年末のTPP11発効と今年2月の日欧EPAの発効を背景に5か月の交渉で短期決着したと説明している。5か月間の交渉では8回の閣僚会合を開いた。
9月25日の日米首脳会談で最終合意を確認、10月8日(米国時間7日)に両首脳が署名した。
その後、開会中の臨時国会に協定の承認案が上程され衆議院を11月19日に通過した。
審議前から日米貿易協定の内容と政府の説明には多くの問題点が指摘されていた。
政府は自動車と自動車部品の関税撤廃は約束されたとして米国側の関税撤廃率(貿易額ベース)で92%としている。しかし、米国側の付属文書には自動車・部品の関税撤廃は「関税の撤廃に関してさらに交渉」とされているだけで国会審議でもその点を野党から追及されたが、関税撤廃は前提とされているとの答弁に終始した。
経済効果もGDPを4兆円押し上げるとしたが、自動車の関税撤廃を前提としており、関税撤廃がない経済効果試算を提出すべきとの野党からの要求には最後まで応じなかった。
日本側の農産物の関税撤廃についてはTPPの範囲内に抑制したと政府は説明する。日米貿易協定ではTPPの関税撤廃率約82%より大幅に低い約37%にとどめたという。しかし、自動車関税の撤廃についての再協議で残る農産物の関税撤廃が取引材料にされなかねない。すでに指摘されているが内閣府の渋谷政策調整統括官は、自動車関税の再協議で「農産品というカードがないことはないと思います」と9月25日の現地の記者会見で話している。
また、協定自体にも「米国は将来の交渉において、農産品に関する特恵的な待遇を要求する」と明記されている。また、牛肉のセーフガードについては発動されたら「発動水準を一層高いものに調整する協議を開始する」とサイドレターに記されている。このようにさらなる農産物市場の開放が求めれる協定内容になっており農業生産現場には不安が広がる。
日米貿易協定とTPP11をあわせた農林水産物の生産減少額は約1200億円から約2000億円と試算。しかし、対策を講じるため生産量や食料自給率は変わらないと政府は説明している。関税撤廃で輸入増となった食料はどこに行くのだろうか。
発効後は4か月以内に再協議に向けた予備協議を行う。その後の交渉ではサービス貿易や投資障壁なども対象となることが9月の日米共同声明には盛り込まれており、日本政府は否定するが日米FTAに向けた交渉となることも考えられ、食の安全や保険制度など暮らし全般に影響を与える協定となることも懸念される。
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