農村づくりに人材育成 新しい農村政策検討会-農水省2020年5月28日
新たな基本計画では農林水産省に「農村政策・土地利用の在り方」プロジェクトを設置し、少子高齢化・人口減少が進行する一方、「田園回帰」による人の流れが広がりを持っていることなどの動きもふまえ、農村政策を検討するとされている。そのために同プロジェクトは有識者からなる「新しい農村政策の在り方に関する検討会」を設置、第1回会合を5月19日に開いた。
座長には小田切徳美明治大学農学部教授が選ばれた。小田切氏は今回の基本計画では「地域政策の総合化」を図ることが繰り返し強調されており「その具体化が必要」だと指摘した。
また、新型コロナウイルス感染症の拡大で社会に対立や分断が広がるなか、「低密度空間」である農村の価値を見直し今後の振興策を検討することは「ポストコロナ社会の設計に直結する」と広く国民的な議論を期待した。
会合では農水省が農村の現状を説明。高齢化・人口減少の影響で総戸数が9戸以下の農業集落の割合が増加している。山間農業地域では17.9%になる(2015年)。また、集落の農家率も2015年で7.5%まで低下し9割が非農家となっている。
地方自治体の職員も15年間(2004年~19年)で10%以上減り、農林水産分野の23%~33%とさらに大きく減少している。農協の支所・出張所も20年間(1998年~2017年)で半数近く減少、営農指導員も1998年の約1.6万人から3000人近く減少した。
一方で三大都市圏からの転入が転出を上回っている市町村が北海道から沖縄まで全国的に見られ、「地方に移住してもよいと思う」という声は20~40歳代でそれぞれ半数を超えているという(2017年12月過疎問題懇談会資料)。
何らかのかたちで特定の地方と関係を持つ「関係人口」は、国交省の調査では三大都市圏の居住者約4600万人のうち約2割の1000万人になる。地域づくりの観点から地域運営組織や集落支援員、地域おこし協力隊などの外部からの人材も含めて地域に定着し活動しているところも増えてきた。新たな基本計画では農協など多様な組織による地域づくりも打ち出している。
農水省は検討会での検討事項として、「農村の実態や要望を把握し、分析調査と課題解決まで一貫して実践する人材」を育成する仕組みや、その仕組みを市町村が活用することを促す仕組みなどを挙げた。
また農村を舞台とした多様な複合経営や、「半農半X」など「生業」の観点から農業とその他の所得確保を組み合わせるライフスタイルなどへの支援策を関係府省とともに検討することも挙げた。委員からは「現在の農村は不要という切り捨て論に抗していく必要がある」との指摘や、課題解決よりも「地域を面白くしたいから」と活動している人たちを支援する視点も必要だなどの意見もあった。また、委員の川井由紀JA高知女性組織協議会会長は自治体やJA、地域おこし協力隊などと「なにか線引きがあって地域ではもやもやする。一体となって人材育成をすべき。スピードも出る」などと指摘した。
小田切座長は地域づくりは新しい局面に入り、補助金ではなく「課題解決するための主体形成」が必要になっていることや、多様で多角的な視点で農村での「複合経営像」を考えていくこと、また、弱体化している自治体農政も課題だとした。会議はテレビ会議で行われた。次回は6月を予定している。
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