准組合員の事業利用 JAが判断-農水省方針2021年5月14日
農林水産省は改正農協法の附則に規定されている改正法施行から5年後に見直すことになっている准組合員の事業利用規制の在り方について、今後は各JAが准組合員の意思反映と事業利用方針を定め総会(総代会)で決定し、経済事業などの自己改革の取り組み成果と合わせて、組合員が毎年評価し改革を実践していくサイクルを構築していく方針を示した。

方針は5月13日に開催された規制改革推進会議農林水産ワーキング(WG)会合で示した。
農水省はJAグループに対して自己改革の継続的な実施のため、組合員との対話を通じて自己改革を実践していくサイクルを構築することを求める。
具体的には(1)自己改革を実践するための具体的な方針、(2)中長期の収支見通しについてのシミュレーション、(3)准組合員の意思反映と事業利用についての方針を策定し、組合員との徹底的な対話を行って総会で決定する。
自己改革実践の具体的な方針は、農業者の所得向上につながる実績を判断するための農産物販売高などKPI(重要業績評価指標)など目標を設定し、それを具体化する行動内容を示す。
中長期の収支見通しについては、健全で持続的なJAの経営を確保するため経済事業だけでなく、共済事業、信用事業についても将来の収支見通しを作成する。
准組合員の意思反映については、その仕組みをJAが明確し、事業利用については組合員が准組合員の事業利用状況を把握したうえで、「農業者の所得向上を図るとの農協改革の原点」に立って判断し、方針を定める。
この3本柱を総会で決定しJAは具体的アクションを実行する。そのうえで毎年、自己改革の実績や取り組み状況を組合員に説明し、組合員の評価と意向をふまえ、さらなる改革の向け方針などの修正を行う。こうしたPDCAサイクルを毎年継続していくことをJAに求める。
JA全国連に対してはJAが方針を策定することについて助言や優良事例の横展開などを図るとともに、これまでも取り組んできた生産資材価格の引き下げや、輸出や他業種とのアライアンスによる販売拡大などに取り組みJAの自己改革を支援することを求める。
一方、農林水産省と都道府県は、こうしたJAの自己改革の実践サイクルに対して指導・監督を行う。毎年、自己改革の実績について進捗状況や収支状況などを把握し、改革の加速化や見直しが求められる場合は、必要な措置を検討、実施する。
また、JAバンクについても規制改革推進会議から3月の会合で今後の取り組みについて議論が必要との指摘があったことをふまえ、農業者向けの事業融資の強化や、関連産業への投融資など向けて中期的な戦略を策定することを求める。これをふまえ農林中金、信連、JAそれぞれが目標を設定し具体的なアクションを実行する。
農水省は、今回、准組合員の事業利用規制についてJAで組合員が判断するとの方針を示した。その前提は組合員との徹底した対話運動にある。規制改革推進会議から委員からはこうした方針に異論は出なかったという。
佐久間総一郎座長(日本製鉄顧問)は自己改革のさらなる進化と具体化をめざしてほしいと述べ「今後もフォローアップを行っていきたい」と話した。
今後、規制改革推進会議は生乳流通改革問題なども含めて会議としての答申を策定し、それを受けて政府は例年6月末に規制改革実施計画を策定する。JA全中の中家徹会長は13日の定例会見で「その動向を注視していきたい」、「どういう意見があるにしても自己改革に終わりはない。不断の自己改革に取り組んでいく」と話した。
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