ごはんとおかずの組み合わせ 「ほとんどない」所得200万円未満で2割2022年11月22日
所得が低い世帯ほど主食と主菜、副菜を組み合わせた食事を食べる頻度が低いという実態が厚労省調査などで示されている。低所得世帯では栄養バランスに配慮した食生活ができていないおそれがあるとして、食料・農業・農村基本法の見直しでも経済的な弱者への対策のあり方が論点の1つとなっている。
厚労省の「国民生活基礎調査」によると日本の貧困率は2018年で15.7%で横ばいで推移している。貧困率とは、等価可処分所得の中央値の半分に満たない世帯員の割合で、2018年のОECD調査で米国は18.1%、韓国は16.7%となっており、日本はそれに次いで高い。
1世帯あたりの平均所得金額は1997年の623.3万円が2018年には514.1万円へと低下した。また、高所得世帯数の減少の一方、平均所得以下の世帯割合が増えている。相対的貧困者が増えたことも現行基本法制定以降に起きた変化のひとつだ。
それが食生活にも現れている。厚労省の「国民健康・栄養調査報告」によると、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を1日2回以上食べる頻度について「ほとんど毎日」と回答した割合は600万円以上層(男)では52.5%だが、200万円未満層では37.3%となっている。逆に「ほとんどない」との回答が200万円未満層で20.8%と2割を超えた。
主食とおかずを組み合わせて食べることができない理由のうち「食費の余裕がない」の割合は、600万円以上の世帯では7.6%(男)、5.3%(女)だが、200万円未満では22.1%(男)、28.9%(女)と差があり、統計的な有意差が認められている。
こうした状況をふまえ、今回の基本法の見直しでは、国民の健康的な食生活を確保するための経済的弱者への対策のあり方も論点になっている。
そのためフードバンク活動やこども食堂など民間の取り組みが改めて注目されている。
フードバンクは、食品企業の包装の破損、印字ミス、過剰在庫など、まだ安全で食べられる食料だが販売できないものを廃棄せずに提供してもらい、経済的な困難を抱えた世帯や福祉施設、支援団体に無償で提供する活動だ。
(一社)全国フードバンク推進協議会によると国内では北海道から沖縄まで178のフードバンク団体が活動している。
年間取扱い量は約6000tで1団体当たり平均約34tとなっている。一方、日本国内の食品ロスは年間520万tであり、活動が広がり始めたが、フードバンクの取扱い量はその0.1%程度ということなる。
フードバンクはもともと米国で始まった。50年以上の歴史があり1304団体が活動しており、年間取扱い量は739万tで日本国内の食品ロス量よりも多い。
米国には緊急食料支援プログラム(TEFAP)が実施されており、政府が余剰農産物を買い上げ、各州を通じてフードバンクなどを通じて提供する。1983年から始まった低所得者向けのプログラムで現在まで連邦政府の予算が割り振られているという。
欧州ではフランスがフードバンク発祥の国で1984年に活動がスタート、現在はフランス全土にネットワークを持つバンク・アリマンテールがある。英国では1994年から活動が始まり全国に2000以上あるという。
いずれも団体に対して優遇税制などを措置しているほか、農業政策として位置づけられている。全国フードバンク推進協議会の米山廣明代表理事は「リーマンショックやコロナ禍で貧困問題を社会課題として認知し、その解決に向けた取り組みに理解を示すよう国民の意識は変化してきている」として政策に位置づけるべきと主張している。
また、日本では子ども食堂が急増している。認定NPО法人全国こども食堂支援センター・むすびえによると、2016年には319だったのが、2019年には3718へと2年で10倍以上に増え、2021年には6014となっている。
1999年の現行基本法が制定された時代との違いについて、審議会基本法検証部会の中嶋康博部会長(東大大学院教授)は「90年代に想定していなかったのはNPО」と指摘し、国民への食料への安定供給に向けて「ステークホルダーを広げること」も必要だと指摘している。
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