農業DXで都会と農村の共同体を 検討会が「未来予想図」提示2024年2月26日
農林水産省が設置した農業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるための有識者の検討会(農業DX構想の改訂に向けた有識者検討会)は2月22日、農業と食関連産業のDX化の道筋とそれを実現した「未来予想図」を示した「農業DX構想2.0」を取りまとめた。
農業DX構想は2021年3月に初めて策定され、有識者検討会は23年5月からその見直しに向けて議論してきた。
現在のデジタル技術の生産現場への導入状況について、スマートフォンで提供される経営・生産管理アプリは初期費用も極めて低く抑えられるようになっているとして、一部では利用が常識になっており、デジタル技術を活用してコスト構造や収益構造を把握しようとしている経営体が増えていると評価する。
その一方、個々の農業者のデジタル化の取り組みが行われていても有機的な連携が行われていない場合が多く、マクロレベルではまだDXが実現しているとはいえないとして、活用事例を創出して横展開する必要があると提起した。
そのための道筋としてデジタル化に取り組もうとする農業者への資金、情報、技術などでの支援することや、導入コストを低下させることが期待される農業支援サービス事業体の機能発揮や、導入後の支援として導入事例の紹介など成功後のイメージを示すことや、行政による情報提供などの支援も必要だとしている。
また、デジタル化推進にあたっての留意点として、生産の効率化、高付加価値化、収益性の向上を通じて持続的な農業・食関連産業の経営を実現し「すべての国民が健康的で幸せな食生活を営む世界をめざすもの」と強調したほか、デジタル技術を導入すれば、それだけで経営展望が開けるものではなく、安定的に収支を改善するための「事業のDX計画」を立てることが必要と指摘した。
検討会はこうした取り組みによって広がる「未来予想図」を初めて示した。
その予想図は、生産現場では気象や土壌、病害虫などのデータを農業者の端末に提供され、農作業に関するアドバイスとともにサービス提供されたり、リアルタイムで区画ごとの土壌データを詳細に把握し、収量も向上し高品質な生産物が新鮮な状態で店舗で販売され、国民への食料の安定供給に大きな貢献をしているなど。
また、生産と消費両面の需給情報が精緻化することによって、画一的なものを提供するレディ・メイド型のモノ消費だけでなく、「今だけ、ここだけ、あなただけ」の付加価値を生み出すテーラー・メイド型のコト消費も盛んになり、「生産物や食の提供スタイルが変容」していると予想している。
都市と農村の関係もデジタル技術の活用で都市住民を含むほとんどの国民にとって、農業と農村は身近な存在となり「多くの国民が直接・間接に農業に携わったり、農業に当事者意識を有する者が飛躍的に増加している」と予想している。
こうした変化がデジタル技術によって起きて、食料を「作る人」、「使う人」、「食べる人」のそれぞれが信頼関係に基づき「商品の売買にとどまらない情報交換や意見交換を行うことができる共同体的な関係」が築かれるとしている。
検討会はこの文書を農業・食関連産業のデジタル化に取り組むすべての関係者へのメッセージと位置づけ、取り組みを促したいとする。また、1年後をめどに2026年当初を目標に構想を見直すことにしている。
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