コメ騒動 8月供給追いつかず 来年から端境期は週単位で流通実態調査 農水省2024年10月30日
農林水産省は10月30日に開いた食糧部会に今年8月に量販店など小売店の店頭からコメが消えた端境期の需給状況に対する分析結果と今後の対応方向を示した。
農林水産省は生産から小売まで各段階への聞き取り調査を行った。
集荷団体への聞き取りでは、23年産米の集荷では生産量の減少にともなって集荷量が減少し、一方では販売は前年を上回って好調に推移したことから在庫量も減少したという。全国ベースで前年産から9万t減の661万tだった。
また、販売が好調だった業務用向け等の比較的低価格帯の銘柄の在庫が大きく減少したという。
卸売業者への聞き取りでは、22年産米の持ち越し在庫が少なかったなかで、小売向けの販売は「一段と好調」となったため、手持ち在庫を消化して販売したが、一方で23年産米の手当が十分にできず在庫が減少していったという。また、精米歩留まりの低下で例年より原料玄米の消費が進み、それも在庫減少につながった。
こうしたなかで「業務用向けの在庫ストックを小売向けに振り替えて供給を維持した」という卸業者もいる。
ただ、こうした対応で新米が出回るまで何とか供給できる見込みとなったところに、南海トラフ地震情報などで「平年を大きく超える買い込み需要」で量販店での欠品が生じるようになった。
集荷業者から卸売業者への販売数量データをみると、4月から7月までは前年を100とすると111~105などむしろ好調だった。しかし8月は87へと落ち込んだ。
卸売業者から小売業者への販売数量も同様で4月から7月までは前年を上回っていたが、8月に入ってからは前年を下回った。
量販店や米穀店への聞き取りでは「全体需給はひっ迫していないと言われても、消費者心理として店頭から消えると不安に感じ買いだめが行われた結果」との声の聞かれた。
また南海トラフ地震情報などで「家庭内備蓄の需要もあったが、品薄を伝える情報が広まることによる影響が大きかった」との指摘も。「毎日一定量を入荷しても開店後すぐに売り切れる状態」だったという。
米の販売数量は8月第1週に前年比139%、第2週に同121%、第3週に同149%となった。
農水省はこうした聞き取りやデータから、各流通段階での供給状況は昨年と同程度か、または昨年以上に供給が行われていたが、8月の買い込み需要に各流通段階からの供給が追いつかない状況が発生したと分析するとともに、農水省として春以降、情報収集は行っていたものの、品薄に関しての情報発信や流通業者への働きかけは事態が顕在化した8月下旬からとなったと対応の遅れを認めた。
一方、卸への聞き取りでは在庫量に占める業務用向けと小売向けの比率は大きく異なり、小売向けが少ない卸ばかりではなく、業務向けを小売に向けに仕向けた卸もあった。農水省の聞き取りに応じた10社のうち4社が4月以降に業務用向け契約分を取り崩して小売向けに販売したという。
こうした分析を踏まえて農水省は▽主要集荷業者・卸売業者に対する端境期前(6月以降)から端境期(9月中旬)まで集荷量、販売量、在庫量を週ごとにきめ細かく調査、▽卸や量販店、米穀店などへ流通実態に対してヒアリング、▽米流通の現状のポイントを消費者へ発信、▽米の需給についての基本情報の月例記者ブリーフィングの実施を行う。
聞き取りのなかでとくに小売段階からは米の需給状況は定期的に販売業者にも情報提供をという声も出ている。
一方、9月後半から10月にかけての状況について卸売業者からは「特売を行っても売れ残りが出るなど売れ行きは鈍っている。販売価格の高騰から消費量が減少し販売は鈍化すると見込んでいる」との声や、小売からは「8月の反動で9月後半から販売量は落ちている。価格高騰の影響もあるのではないか。1.5倍となった価格が消費者に受け入れられるかは販売動向を見ないと分からない」との実態もある。
30日の食糧部会では委員から農水省の情報発信が遅かったことへの批判も出た。大臣が需給はひっ迫していないと話しても「実際に店頭には米がないではないか」と不信が広がると指摘や、「予防的な措置として行動を落ち着かせるための情報発信も必要」、「SNSで広がる情報など多チャンネルでの対応を」などの意見が出た。
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