みどり戦略 適正な農産物価格を 自民党が提言へ2024年12月18日
自民党は12月17日に環境と調和した持続可能な農業推進委員会(みどり委員会)を開き、みどり戦略の取り組み状況をもとに意見交換した。来年3月末に閣議決定される次期食料・農業・農村基本計画に向けて来年2月にも提言をまとめる。
12月17日に開かれた自民党のみどり委員会
会合では農水省がみどり戦略の取り組み状況を説明した。
生産資材やエネルギーの調達と生産から加工、流通までの環境負荷低減と持続的発展を支援する「みどりの食料システム戦略推進交付金」を農水省は2023年度補正と24年度当初予算で確保、これを活用した取り組みが全国で429件ある。
群馬県嬬恋村ではこの予算を活用し、農研機構と県農業技術センターが作成した施肥マップをもとにキャベツ栽培で畝立同時施肥機の利用、追肥分も含んだ施肥を行い、追肥量の低減や作業省力化
を検証した。その結果、追肥回数が4回から1回となり、追肥量は35%減となり、追肥作業時間も最大75%減という効果も確認されている。
また、熊本県山都町では有機農業の担い手を育てるため、この交付金を活用し技術講習会、消費者と生産者をつなぐ販促イベントなどを行った。その結果、有機JAS認証者が53から57へと増え、小中学校への有機JAS米の提供は2021年の2.3tから23年に6.7tへと約3倍増えた。
みどりの食料システム法では23年度から環境負荷低減事業に取り組む生産者の認定が始まり、これまでに1万9000経営体が認定されている。JA福井県では水稲生産者9600人が認定され、早期秋耕や農業用プラスティクを削減した肥料の活用に一丸となって取り組んでいる。
地域ぐるみで環境負荷低減の取り組みを行う特定区域(モデル地区)は12月で18道県35区域で設定されており、有機農業の団地化、地域資源の活用による温室効果ガスの排出量削減などに取り組んでいる。
みどり戦略では2050年までに有機農業面積を25%、100万haを目標としているが、23年末で3万ha、0.7%にとどまっている。ただ、対前年度比では14%増、3700ha増えた。
地域ぐるみで有機農業の拡大を実践する「オーガニックビレッジ」は2025年に100市町村が目標だったが、今年8月時点で45道府県129市町村まで拡大し目標を前倒しで達成、2030年までに200市町村に拡大することをめざしている。
学校給食に有機食品を利用している全国に市町村は2022年度に193市町村まで拡大している。
会合では議員から有機農業の取り組み面積をペースを上げて増やす必要があるとして「JAS認証を取得しなくても有機にトライする農家を増やしていくことが大事だ」との意見や、オーガニックビレッジを増やしていくべきとの意見が出された。また、土壌の微生物分析の知見などを生産現場に活かして農業者が有機農業を始めやすくする取り組みなども指摘された。
会合で強調されたのは価格形成。一方で適正な価格形成の仕組みづくりが検討されているが、みどり戦略もそもそも持続可能な食料システムを構築することが目的であるとして「(有機栽培などは)かかるコストが既存の食料システムとは違う」として「適正な価格」で取引される必要があるとの指摘が出た。そのために温室効果ガス削減への貢献度を表示する「見える化」がいっそう重要とされた。
そのほか現場ではJAが主導してみどり戦略を実践していくべきだとの指摘もあった。
宮下一郎総合農林政策調査会長はオーガニックビレッジなど取り組みと「地域計画」との連携が必要だが、有機農業の取り組みを計画に盛り込むことは現時点では少ないと見られるが「今後ブラッシュアップを図るべき」との考えを示した。
宮崎雅夫みどり委員会委員長は、「環境と調査のとれた食料システム」は改正基本法の理念の一つであり「理念の実現に向けて一歩進めて議論する必要がある」と話し、来年1月にも委員会を開催、2月にも政府への提言をまとめる考えを示した。
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