農ある暮らし、地域で守る 48軒の農家で市民ボランティア手伝い 日野市で都市農業シンポ2025年1月21日
全国で初めて1998年に農業振興条例を制定した東京都日野市で、市民参加で農地を守る取り組みが進んでいる。1月18日、市内で開かれたシンポジウムで、給食やレストランでの地元野菜活用、ジャムへの加工、ネギのブランド化などの実践を紹介し、話し合った。
第21回都市農業シンポジウムには市内農家、市民ら100人が集まった(1月18日、東京・日野市民会館)
日野市が開いた都市農業シンポジウムは21回目。近隣市の広域認定農業者による農産物加工、ブランディング等を知るとともに、野菜運搬に取り組むNPOの活動にもふれ、優良事例を参考に日野農業のブラシュアップを考えるきっかけ作りをめざして開かれ、100人が参加した(市主催、農業委員会とJA東京みなみが共催)。
市民の9割「農地残して」
大坪冬彦市長、奥住匡人市議会議長のあいさつを受け、市都市農業振興課の佐野雅夫課長が、過去10年間の農業振興施策を振り返り第4次農業振興計画を説明した。
市民アンケートでは9割の市民が「農地を残してほしい」と答え、地産地消、食育への期待が大きかった。農地を守るため、日野産農産物のブランディング、女性を含めライフステージに合わせた農業者へのサポート、農地(生産緑地)の公有地化検討などを進めていくと説明した。
B級品がレストランの料理に
NPO法人めぐみの活動を話す山本徹さん(右)。隣は日野市産業スポーツ部の青木奈保子部長
パネルディスカッションでは、NPO法人めぐみ代表の山本徹さん、農産物を使ったジャムの製造販売にも取り組む菱山史郎さん(八王子市広域認定農業者)、ネギを市場出荷する澤井詳直さん(府中市広域認定農業者)が、日野市産業スポーツ部・青木奈保子部長のコーディネートで話し合った。
山本さんは、援農ボランティアを養成する「農の学校」第5期卒業生。せっかく実った農産物の一部が出荷されない現実を目にしてNPOを立ち上げ、七ツ塚ファーマーズセンターみのり處の運営、学校給食への地元農産物運搬支援に取り組んでいる。
「B品でも市内農家から買い取り、センター内のレストランで出したり総菜で売ったりしている。子どもたちには同じ街の農家の作った野菜を食べてほしいし、少しでも農家の収入にしたい」と話した。
道の駅の売れ筋見ながらジャムづくり
菱山さんは八王子市と日野市で、米と野菜を作っている。形の悪いニンジンを生かしたいという思いもあってジャム作りを始めた。菱山さんは「野菜、ブルーベリー、ハッサクなどを半加工して冷凍し、道の駅での売れ筋をみながらジャムにして売っている。女性の目が厳しくアイデアももらえる」と語った。
青壮年部のアイデアもとにブランド化
写真を見せながら「多摩川ねぎ」のブランド化について語る府中市の農家・澤井詳直さん(右)。
隣は野菜、米、花きのほかジャムも作る八王子市の農家・菱山史郎さん
澤井さんは「市場に出す理由は量がはけること。府中のJAの青壮年部での食事中に出たアイデアから『多摩川ねぎ』をブランド化した。買った方がインスタに写真をあげてくれる。面白いと思ったら軽いノリでやるといい。東京産、東京ブランドにすれば、より高く売れると思う」と述べた。
「子どもたちに何を最も伝えるべきか」という参加者からの質問に答え、菱山さんは種まき・代かき見学、田植え体験に始まり収穫した米でのお米パーティに終わる小学生の体験学習、中学生の職業体験などを紹介。学生をアルバイトに使っている澤井さんは「作物を作るよりそれをお金に換える方が難しい。就農希望者には、『物の流れ、流通を学んで』と伝える」と話した。
農業振興策の成果は
参加した農家からは、ジャム加工の許認可、初期投資と回収、ネギの連作の課題、自宅と違う市に畑があることでの苦労など、活発な質問が出された。農業振興策に成果は出ているかとの質問には、大坪市長が「農の学校で学んだ118人の卒業生が48戸の市内農家で援農をし、農地が守られている」と答えた。
JA東京みなみ 小林和男組合長の話
今日のシンポは、都市部で農地をどう守り農業を継続していくかのヒントになると思う。給食や直売所で日野産の農産物を食べてもらったり、ボランティアが農作業を手伝ってくれるのは心強い。日野が田園都市として発展するには、農地が残ることが重要だ。
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