米の問題に全力 消費者目線の農政を強調 小泉新農相2025年5月22日
5月21日に就任した小泉進次郎農相は同日夜、就任会見に臨んだ。「米を消費者に安定した価格で供給できるよう全力で取り組みたい」と述べ、政府備蓄米の放出について競争入札から随意契約に変更するとして5月28日から実施を予定していた入札を中止することを明らかにした。農政については「消費者の皆さんの立場をもっと考えた農政を実現する、そこが国民が求めていることではないか」と強調した。

――就任にあたっての所感。
今もっとも力を入れなければならないのは米。とにかく米に尽きると総理からも指示を受けた。
来週予定していた入札を一旦中止し、随意契約のもとでどのような売渡しができるかなど、具体的な対応策を早急に整備するよう指示を出した。
日米交渉にあたっては農業を犠牲にしないという方針のもと国益の確保に向けて関係省庁と連携してしっかりと対応していく。
食料安全保障の抜本的強化を図るため、初動5年の農業構造転換集中対策期間に新たな基本計画に基づき、生産性の向上に向け農地の大区画化、共同利用施設の再編集約化、スマート農業技術の導入加速化を集中的計画的に進めていく。
――備蓄米の放出など米対策について。
ゼロベースで新たな制度を考えるよう指示を出している。需要があれば無制限に出す。それぐらいのことをやらなければマーケットのマインドも変わらない。
米の価格が下がったという実感を消費者のみなさんに持っていただけるための制度に変えていきたい。次回の入札はやめて随意契約をやるというのは政治の責任。その結果責任を負うのも政治の役割だと思っている。随意契約の制度設計次第では、それでも下がらないという懸念もあるので具体的な詰めを行っている。結果を出すことによって政治行政の信頼につなげていきたい。
――随意契約の対象について。
幅広く募りたい。全農を含めてかなり集中しており、現場にまだ届いていない。川下のスーパー、外食の方々を含めて随意契約によって現場に届けていければと考えている。
――日米協議について。
赤沢大臣には日本の農業を守る、決して犠牲にしないという思いを持ちながら関税交渉に臨んでいただきたい。トランプ大統領にとっては貿易赤字が重要だが、農林水産分野だけを見れば日本が貿易赤字約3兆円、米国が2兆円の黒字。これを踏まえてお互いメリットがあるような交渉結果につなげていただきたい。
――水田農業の見直しについて。
石破総理は世界で主食を作るのはいけないという国はない、意欲を持ってつくっていただくのが農政の基本という思いを持っていると思う。生産調整をやめても、結果として需給を見なければならないから、そういったマインドになっている方が多いと思う。
まずはしっかりと米の価格を下げることを実現したうえで、中長期的な米政策のあり方、また、余ったときにどうするのかという輸出や新たな需要の開拓、さらには農家のセーフティネットのあり方、安心して農業をしていただくことを省全体として考え取り組んでいきたい。
直接支払いを含む米の生産者への支援のあり方については基本計画に即して令和9年度に向けた制度や政策のあり方を検討していくなかで、現場の実態を調査、検証して議論を深めていきたい。
生産性向上の取り組みを後押しし付加価値の向上と輸出の拡大を促進して米の生産を儲かる産業にできるよう政策の構造を転換していきたい。
今、農政に求められていることは将来、生産者の皆さんが意欲を持って農業に従事できるということを達成すると同時に、消費者の皆さんの立場をもっと考えた農政を実現する、そこが国民の皆さんが求めていることではないか。
――JAグループに対する期待は。
JAグループは日本最大の農業グループであり農業政策の基盤や地域社会ができていることも事実。今回、米を何とか流通させたいというときに全農も含めて協力していただいているのも事実だ。
一方でJAグループに改革が不可欠ではないかという思いで農林部会長の時期に向き合ってきて、JAグループは自己改革を進めてきたと承知している。私の問題意識はとくに全農は海外から資材を仕入れて農家に売るのではなく、農家の作ったものをいかに高く売れるマーケットを開拓していけるか、そういったビジネスモデルに転換していただきたいという思いは今も変わらない。
今ではその役割と意義はより重要になっている。そういう思いを持ちながらもよくコミュニケーションをとらせていただきたい。
農業のためにJAグループができることはまだあるし、JAグループの枠ではないところで農業をやっている全国の皆さんに政治はもっと目を向けていかなければならない。
(こいずみ・しんじろう)1981年4月生まれ。神奈川県出身。関東学院大経済学部卒。米国コロンビア大大学院政治学部修了。2009年衆議院議員当選(当選6回)。2015年~17年自民党農林部会長。2019年環境大臣兼内閣府特命担当大臣(原子力防災)。
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