業務用米の特徴を紹介 播種前・書面契約のリスク管理 東京で業務用米セミナー&交流会2025年12月23日
農水省の補助事業「業務用米推進プロジェクト」のセミナーと交流会(事務局:グレイン・エス・ピー)が12月19日、東京・中央区の日本橋プラザで開かれた。生産者30社、卸・実需者など約100社が参加し、業務用米の安定供給や長期取引に向けた情報交換を行った。1月21日には、大阪でも開催される。
生産者と実需者が交流
セミナーは「業務用米推進プロジェクト」の一環で、中食・外食など実需者向けの業務用米を安定的に供給することを目的に、10年前からスタートした。冒頭、グレイン・エス・ピーの島鏡太郎社長は「当初は相対取引のマッチングとして始まり、登録者が増えてきた。セミナーと交流会で情報交換を促進し、長期の取引継続につなげてほしい」とあいさつした。
来賓として、農水省農産局の小川英伸米麦流通加工対策室長が、鈴木農相の「需要に応じた生産」という発言に触れ、「国内人口は減少しているが、業務用米の需要は今後も拡大が見込まれる。生産者には、業務用に適した米を安定的に生産し、国産米の取引拡大につなげてほしい」と呼びかけた。
農研機構中日本農業研究センターの中込弘二上席研究員
セミナーでは最初に、農研機構中日本農業研究センターの中込弘二上席研究員が、多収米の品質や特性について解説した。
業務・加工用米に求められる特性として、①作業分散への対応、②高温耐性の強化、③耐病虫性の3点を挙げた。また、品種分類では、収量と米飯特性の観点から、①タイプ1:「コシヒカリ」に近い食味を持ち、白飯やおにぎり向けで、一般品種より2~3割多収(10アール当たり700~750kg)、②タイプ2:「日本晴れ」程度の食味で、調理米飯や冷凍米飯向けとし、一般品種より3~4割多収(同750~850kg)と説明し、「いずれも単価は低くても、高収量により生産者の利益が確保できる」とした。
また、近年栽培が広がっている直播(は)栽培にも言及した。直播栽培は、作業時間の短縮による低コスト生産が期待できる一方、苗立ちの不安定さが課題と指摘。低温苗立ち性の改良や、耐倒伏性の重要性を挙げた。あわせて、農研機構が選定した業務用米向け11品種を、直播栽培への適性も含めて紹介し、特に「にじのきらめき」は25県で産地銘柄に設定されるなど全国で普及が進んでいると紹介。「品種特性と地域条件に応じて栽培を進めてほしい」と述べた。
(一財)日本総合研究所調査研究本部所長・主席研究員の青木優氏
(一財)日本総合研究所調査研究本部所長・主席研究員の青木優氏は、全米販からの受託で作成した「米の播種前契約推進のためのガイドライン」について解説した。播種前契約はサプライチェーンを結び付ける有効な手法とし、「ニーズ反映型」「販売・調達先確保型」に分類。生産者、集荷業者、卸売業者、実需者それぞれのメリットを示しながら、数量、価格、品質など契約締結時のポイントを説明し、「契約前のコミュニケーションを密にすることで、関係の強化や深化につながる」と強調した。

フィールドイノベーション代表の佐藤仰喜氏
最後に、秋田県の農業法人フィールドイノベーション代表の佐藤仰喜氏が、卸売業者などとの書面契約におけるトラブル事例を紹介し、リスクマネジメントの重要性を述べた。佐藤氏は、法人化による規模拡大や自然災害の増加、実需者との直接取引拡大に伴うリスクの高まりを背景に、「リスクの予防・回避を想定した書面契約の重要性」を指摘した。
具体例として、卸売業者との契約で納品後に品質不良を理由に買い戻しを求められた事例や、大雨災害で契約数量や等級を満たせず、翌年に繰り延べ対応した事例を紹介。「事前にリスクを想定し、双方で対応策を協議することが重要だ。口約束ではなく、書面で明確化してこそ責任ある行動につながる」と述べた。
会場には、業務用米の試食コーナーが設けられたほか、生産者ブースでの情報交換も行われた。ブース出展したJA佐渡は「業務用米のニーズなど、米業界全体の動向を把握するために出展した」と語った。また、相談コーナーに出展したNEWGREENは、同社の土壌改良AIサービス「Humus(ヒューマス)」や有機栽培の取り組みを紹介し、「実需者の声を直接聞く機会にしたい」と話した。
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