農政:時論的随想 ―21世紀の農政にもの申す
(111)不当介入招いた農協法「改正」2016年12月7日
◆与党内から反発あるも...
11月11日、規制改革推進会議農業ワーキンググループが「農協改革に関する意見」を発表した。改革どころではなくJA解体を意図しているといっていい「意見」については20日付本紙ですでに解説されているので、内容についてふれる必要はないだろう。この「意見」に関していささか気になる報道があったのでそれについてふれておきたい。
気になった報道というのは、11月19日付日本農業新聞の石田祝稔公明党政調会長の発言に関してである。こういう記事だった。規制改革会議の「農協改革に関する意見」について11月18日にもたれた党農林水産部会の会合で石田氏は、
"民間団体への不当介入だとの認識を示し、「非常に問題が多い。理解できない」と苦言を呈した。
提言の内容について......「2014年6月の与党取りまとめを大きく逸脱している」との認識を示し、「極めて高圧的。民間に対して、いくら何でも言い過ぎだ」と述べた"
この限りでは、公明党の先生方も「意見」反対の方向で動いてくれるのだろうと、小生などにも感じさせてくれる記事なのだが、気になったのは、これに続く次の記事である。
"石田氏は14年当時、の農林部会長として与党のとりまとめに当たった責任者の一人。農水省の奥原正明事務次官が当時、経営局長として関わった経緯に言及し、「農水省が(提言を)認めるとは思わない」と強調した。同会議は、全農改革が進まない場合、国に「第二全農」の設置を求めているが、石田氏は「農水省として『できない』と発表すべきだ」と求めた。"
◆効き出した法の改悪
農水省は"できない"と言えるだろうか。
昨年8月に成立した農協法改正は、14年6月の"与党取りまとめ"を受けてつくられた改正だが、それは農協法からの教育の完全追放、農協諸事業の目的が一般企業とはまったく違うことを宣言していた"その組合員及び会員のために最大の奉仕をすることを目的とし、営利を目的としてその事業を行ってはならない"という条文の削除、逆の意味の"高い収益性を実現し"事業から生じた収益をもって、"...投資又は事業分量配当に充てるよう努めなければならない"という条文の附加、その駄目押しとも言える"農畜産物の販売その他の...事業...に関し実践的な能力を有する者"の役員任用規定の新設、そして中央会の廃止、准組合員の利用制限である。
茨城県玉川農協(現JAひたち野)の組合長だった山口一門氏の次の文章を紹介しておこう。
"農協の教育活動は、農協組織の人間の結合体である側面を強化することにある。そのことによって、資本主義社会のなかで、それとはまったく同質の資本活動を展開する経済活動に対して、一定の方向性を与え、協同組合としての性格を持たせようとするものである。この教育活動が欠けると、農協は協同組合の性能を持たない組織に変更し、完全に資本化してしまうことは必然である。"(家の光協会「いま農協をどうするか~むらの仲間とともに」)
農協法改正の狙いは、JAを専門農協化し、"営利を目的"とする一般企業と同じ方向に持っていこうというところにあるとしていいだろう。山口の憂えた"完全に資本化"する方向を法的に強要するのが今回の改正なのである。その改正をやった農水省である。"できない"ということはまずないとみた方がいいのではないか。
◆現場から抜本見直しを
日本の農協法改正のこうした動きについて、ICA(国際協同組合同盟)は早くから"協同組合組織を「脱協同組合化し株式会社にしようとしているが、それは非合理的なプロセスである"と批判声明を出していた(14・10・9の「ICA理事会による日本政府の農協改革に関する声明」)。最近では11月19日"政府の規制改革推進会議農業WGの提言について「民間組織である協同組合の機能に対する不当な干渉」と批判して、JAグループなど日本の協同組合運動を支援するメッセージをまとめた"(11・21「日本農業新聞」)。
14・10・9声明では"明らかに次の協同組合原則を侵害するものと考える"として"自治と独立の原則""民主制の原則""地域社会への関与の原則"をあげていたが、これらの国際組織からの批判声明に対して、農水省はこう答えたという話は聞いたことがない。
公明党や自民党の先生方に「農水省として『できない』と発表」してもらうのを期待するのではなく、JA各機関等をはじめとして現場の意見をよく聞き、"民間団体への不当な介入だ"とする自らの判断に基づいて規制改革推進会議の間違った判断を正してもらいたいと思う。そして農水省の考え方も変えてもらいたいと思う。
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