農政:農は国の宝なり
【農は国の宝なり】第1回 「まちづくり条例」に農魂を見た(上)2019年5月7日
鳥取県北栄町松本昭夫町長に聞く
聞き手:小松泰信(一社)長野県農協地域開発機構研究所長
連載開始にあたって
「地方創生」とか「地域振興」といわれるが、それを実現するには地域の経済・文化やくらしの基である農業振興がカギだといえる。そこで「農業は国の宝、町の宝」と考え積極的に農業施策を進めている地方自治体の首長に随時インタビューしていく。聞き手は、小松泰信(一社)長野県農協地域開発機構研究所長(岡山大学名誉教授)。
鳥取県東伯郡北栄町の松本昭夫町長へのインタビューを上・下に分けて紹介します。
北栄町は、『週刊少年サンデー』に1994(平成6)年より連載が開始された、人気推理漫画「名探偵コナン」の作者青山剛昌氏の出身地で、「名探偵コナンに会えるまち」づくりを展開中。年間を通じて国の内外から、多くの方が会いに来ています。2005(平成17)年10月に旧北条町と旧大栄町が合併して誕生しました。全国第2位の出荷額を誇る大栄スイカをはじめ、ラッキョウ、ねばりっこ(長芋の新品種)、ぶどう、白ネギ、そして畜産物など出荷額1億円以上の農産物を16品目ほどもそろえる、名実ともに農業が基幹産業のまちです。
鳥取県北栄町 松本昭夫町長
◆農業を基幹産業に
小松 松本町長が3期目の当選となった2013(平成25)年に「北栄町農業のまちづくり条例」を作られましたね。
松本 以前から農業が盛んな地域ではあったのですが、やはり町の「宝」として位置づけ、守り続けていく姿勢を示しておかねば、と考えたわけです。第一条で「この条例は、農業を北栄町の基幹産業と位置づけ、環境の保全に配慮した農業の持続的な振興及び発展を図り、農業のまちづくりを推進することを目的とする」と宣言しました。。
小松 第2条の基本理念も、農業者はもとより、町民全体へのメッセージ性に富んでいますね。
松本 「消費者に新鮮で安心・安全な農産物を供給し、次世代に継承していくこと」「担い手を確保し、自然環境と調和した持続的な農業の発展を図ること」「将来にわたって、農業に夢と希望を持ち、確かな豊かさを実感すること」の三項からなっています。
小松 「次世代」、「持続」、「将来」という単語から、「今だけ」のことを考えるべきではない、という強い願いが込められているように感じました。
松本 ありがとうございます。第3条に「町・農業者・町民は、関係機関と連携し、農業のまちづくりの推進に努めるものとする」として、それぞれの立場が担わねばならない役割があることを示しました。
◆減少に転じた耕作放棄地
小松 2011(平成23)年からの耕作放棄地面積データによれば、2013年の134.9haが最も多く、それから徐々に減り2017年には35.5haにまで減少していますね。
松本 生産の条件そのものは悪くないので、近隣の農業者や法人が白ネギ、ゴボウ、ラッキョウなどを作っておられます。もちろん、離農を防ぐという観点も必要です。そのために、農家の子弟が農業の後継者となること、つまり親元就農がしやすい環境整備に努めています。鳥取県が取り組む「親元就農促進支援交付金」が機能しています。これは、認定農業者等の後継者が親(3親等以内の親族を含む)の経営に従事しながら、親元で研修を行う場合に、月10万円を最長2年間交付するものです。負担割合は、県が3分の2、町が3分の1です。
小松 現在の交付対象者はどれくらいですか。
松本 15名ほどで、大変好評です。最近では、親が元気なうちに就農し、技術や経営ノウハウを学んでおきたいと、公務員を辞めて親元就農した人がいます。
◆充実の農政力
小松 『農業と経済』(2019年5月号、昭和堂)という雑誌を読んでいたら、小田切徳美氏(明治大学教授)や岡田知弘氏(京都橘大学教授)が市町村の農林水産関係職員数が減少していることから、「市町村の農政力低下」を指摘しています。いかがでしょうか。
松本 農業関係の職員数は増やしているぐらいです。職員数以上に大切なのは、農政の大本である農林水産省の動き、そしてそれと連動した県農政と連携することです。その点、国の動きにもアンテナをしっかり伸ばしていますし、県とも極めて良好な関係を構築し、各種農業関連予算の活用に努めています。
小松 条例では、「関連機関との連携」も謳われていましたが、具体的にはどのような取り組みがなされていますか。
松本 JA鳥取中央組合長、北栄町農業委員会長、そして私の三者による「北栄町農政懇談会」を年に一回開いて、意見を交換しています。そこでの方針を具体化して現場に提起していくための協議体が「北栄町農業指導者連絡協議会」です。メンバーは、県園芸試験場、農業改良普及所、土地改良区、農業委員会、JA、そして町の担当者です。決して名ばかり協議体ではないので、日常的にも敷居を低くして、情報の交換や共有に努めています。
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