農政:花開く暮らしと地域 女性が輝く社会
【花開く暮らしと地域 女性が輝く社会】持続性は"男女協働"から 茨城・JA水戸に学ぶ<2>「扶助」が救い前を向く力に2021年4月13日
「扶助」が救い前を向く力に
南部営農資材センター長平澤博美氏
――そうした環境のなかで、平澤さんは家庭では娘さんを育てながら、JA資材店舗での農薬などの陳列・POP(店内広告)を競い合う「JAーPOP甲子園」の最優秀賞を3年連続で受賞されるなど、JA事業で活躍されています。女性の継続就労は第1子の出産を機に、約6割が離職するといわれています。仕事・家事・育児を振り返ってみて、どのようなご苦労がありましたか。
平澤 私の場合は周囲に助けられたのが一番ですが、自分で苦労しているとか、大変だとは思っていません。主人を事故で亡くし、無我夢中で子育てをしてきました。子どもに対しては、母子家庭の負い目を背負って成長してほしくないと思っていたので、意地の部分が大きかったと思います。
今回、20歳になった娘に、このインタビューを受ける話をしたら、「父親がいない寂しさはあったが、母子家庭で苦労したことはない」と言ってくれたので心から安堵(あんど)しました。
当時を振り返ると、主人が亡くなった1カ月後に離職を考えました。主人も同じ職場だったため、関わりのある職場から逃げ出したい衝動に駆られましたが、現在の上司である統括センター長から「仕事をしていれば気も紛れるし、いろいろな部分で助けるから」という言葉をかけてもらい、自分を奮い立たたせることができました。
2度目に離職を考えたのが、LA(ライフアドバイザー)に異動になった時です。自分は共済・信用部門に向いていないという先入観がありましたが、その時の上司に「とりあえず1週間来てみろ」、次に「1カ月がんばれ」と励まされ、業務をこなす中で1年目の成績が上位に上がりました。
その後、LAを4年担当し、5年目で営農経済部に戻りましたが、その時の職場環境と、家族の支えは大変ありがたいものでした。今、私は職場環境を一番大事にするよう心掛けて仕事をしています。
POP甲子園2020水稲部門で優秀賞獲得のディスプレイ
――これまで営農資材部門、店舗運営に従事されている期間が長いようですが、女性ならではの視点が新しい発想やサービスの開発につながった事例はありますか。
平澤 これまではお客さまを待っている店舗運営でしたが、「JAーPOP甲子園」を機に店舗ディスプレイの"見える化"を進めてきました。営農資材センターの店舗のほかに直売所も担当しており、季節に合ったディスプレイでは手書きのPOPが得意なパートの人に書いてもらいながら、目を引く温かみのあるディスプレイを心がけています。
いま、スーパー2店舗のインショップで直売所の野菜を販売し、売り場に手書きのPOPを設置していますが、温かみがあると、大変好評です。
――農家組合員に対応するなかで、女性であるがゆえの困難や課題がありましたか。
平澤 無我夢中で働く中で男性と同じ仕事をしたいという気持ちが強く、フォークリフトの免許を取得し、肥料の積み込みや米作業などもしました。ただ、男性と女性の身体のつくりが違うことに気づき、女性として私に何かやれることがあるのではと思い、今からの若い人を応援する側にまわろうという考えに切り替えました。
南部営農資材センターは職員とパート合わせ約30人が在籍していますが、一人ひとりの個性に合わせた育成方法を日々考えています。次の世代を育てる役目を担っていかなければならないという強い思いがあります。
特に若い職員が生き生きと仕事ができれば、おのずと農協全体が元気になり、農家組合員さんへの対応もよくなると思っています。
井坂英嗣組合長(左)と進行の加藤一郎千葉大学客員教授
【インタビューを終えて】
平澤さんのお話をお聞きし、ご本人のご努力とまわりの方々の暖かい眼差しを感じ、娘さんの言葉には感動いたしました。また1年後にお会いしたいです。
NHK大河ドラマ「青天を衝け」の徳川慶喜の弟、徳川昭武が建設し、後半生を過ごした戸定邸(千葉県松戸市)に隣接する千葉大学園芸学部は歴史的にみても茨城県水戸とは深い関連があります。井坂組合長は園芸学部の卒業生であり、私の同窓です。学生時代には空手部に入り、先輩の古在豊樹氏(後に千葉大学学長)に鍛えられたとお聞きしました。JA改革の旗手である前八木岡組合長(現茨城県農協中央会会長)とともに茨城県、JA水戸のブランド確立をめざす取り組みが必要だと思います。千葉大学としても得意とする園芸品の栽培指導など、全面的に協力を惜しまないつもりです。(加藤一郎)
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