農政:花開く暮らしと地域 女性が輝く社会
【花開く暮らしと地域 女性が輝く社会】持続性は"男女協働"から 茨城・JA水戸に学ぶ<1>人として重視 多様性を尊重2021年4月13日
JAは食と農、暮らしにかかわる総合事業を展開しており、暮らしと地域に女性の果たす役割は大きい。しかし女性の経営参画、管理職としての登用は遅れている。女性職員を営農・経済の現場に積極的に配置し、女性の能力を引き出そうとしているJA水戸の挑戦を井坂英嗣代表理事組合長と、南部営農資材センター長の平澤博美さんに、その経過と現状を聞いた。(進行は加藤一郎千葉大学客員教授、元JA全農代表理事専務)
人として重視 多様性を尊重
――ダボス会議主催のスイス・ジュネーブの研究機関「世界経済フォーラム」がこのほど、2021年版の男女平等度ランキングを発表しました。日本は156カ国中120位、先進国の中では極めて底辺に位置しています。JAグループは2019年度第28回JA全国大会で、女性の参画目標に正組合員30%以上、総代15%以上、理事15%以上を掲げていますが、目標達成状況は正組合員30%以上のJAは13%、総代15%以上は約17%、女性役員15%以上は約9%で、この三つの目標を達成したJAは8JAにとどまっています。
制度的には女性活躍推進法が施行され、社会全体で問題意識が高まっている一方、実際の状況はなかなか進んでいないのが実態です。協同組合運動の根幹は平等主義であり、JAグループは本来、多様性が尊重される企業風土であると思います。JA水戸の状況や考え方について聞かせてください。
代表理事組合長 井坂英嗣氏
いさか・ひでつぐ
2009(平成21)年4月にJA水戸理事就任。12年4月に同代表理事専務、20年6月から同代表理事組合長。
井坂 2020(令和2)年度末は正職員が240人、その中で女性職員は77人で約3分の1が女性です。実際の採用時は約40%の女性職員を採用しています。全体の管理職は108人で、うち女性が24人。管理職の女性比率は22%です。私は人権擁護委員を長く務めていたこともあり、男性、女性という捉え方ではなく、人としての権利や義務を果たし、個人が活躍できる世界を提供することが重要だと思っています。
JA水戸で、最初に若干の違和感を覚えたのが労働組合でした。常勤役員に就任した際、労働組合と団体交渉で職員の労働環境を改善していきたいという強い思いがありました。ところが労働組合との交渉の中に女性職員が一人もいなかったのです。
そこで労働組合五役に、女性職員の要望をどのように吸い上げているのか聞いたところ、団体交渉の場以外で聞いているという返答がありましたが、実際には女性職員の声が届いていないことに驚きました。女性職員が3割いる中で、団体交渉にもそれだけの女性が参加していてもおかしくありません。団体交渉に女性を入れるようお願いするとともに、労働環境の改善に取り組んできました。
例えばコロナ禍で、渉外活動を担当し出産を控えている職員には、通常の産休より1カ月早く外勤の渉外活動をストップさせ、産休に入る日までは内勤にするよう指示を出しました。たしかに法的な部分はありますが、やはりトップリーダーの考え方ひとつで環境をよくすることができると思います。そうすれば、外勤でウイルスに罹患する確率が低減され、母子の健康に配慮してもらえる職場なら、長く働きたいと考えるようになると思います。
ここ3、4年でやっと女性が出てきてくれるようになりました。しかし、出席者に私が直接要望を聞くと、日頃はよく会話しているにも関わらず組合長を意識して萎縮し、発言を控えてしまうとの声も聞かれました。このため、これまで機会を設けていない若手職員や、女性が発言や要望のできるようにする必要があると思っています。
職員の女性比率は32%ですから、その中で女性管理職が32%になるのは当然です。現在、女性管理職の比率は22%ですので、あと10%は上げていきたいと思っています。また、人事課の管理職に女性を入れていくことも重要だと考えています。
――老若男女問わず、多様性が尊重される企業風土が一番重要だと思います。JAは農業法人、専業農家から兼業農家など多様性のある組合員・顧客を持つ組織です。この強みをこれからの社会の変化に柔軟に対応できる組織にしたいものです。
井坂 JA水戸の女性部は574人、青年部は116人で、合わせて690人が在籍しています。高齢化が進む中で引退する人もいますが、現在南部センターではフレッシュミズと合同で活動しています。さらに会員を増やすためには、統合したかたちで活動を継続するのか、次世代は次世代で育てていくのが良いのかは、さまざまな組織で、実情に合わせて考えるべき課題だと思います。
――JA水戸ではどの部門が営農指導を行っているのでしょうか。そこでの女性職員に何を期待されますか。
井坂 営農関係は営農販売部と営農経済部があります。そこにはTAC(営農経済渉外)が11人います。これまで営農関係の女性は、購買担当や女性部担当ができる人を配属してきましたが、今年は営農資材センターで販売や営農指導に携わりたいという大学で農業を専攻した女性職員を南部営農資材センターに配属しました。
将来はTACとしての活躍にも期待しています。また、女性部など地域の女性の活動にも深く入り込めるのでないかと思っています。
――女性職員の視点を入れてJA改革を進めておられますが、JAの事業にどのように生かされましたか。
井坂 各事業所の統合や施設の跡地利用には、女性の意見を尊重してきました。例えば、支店の統合で発生した跡地利用で直売所に変更する場合は、店舗のレイアウトを含め女性の意見を反映してきました。また、食育活動に関しても、米やトウモロコシの植え付けから収穫までを女性部や青年部に携わっていただいています。
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