農政:森田実と語る!どうするのかこの国のかたち
農協こそ地域社会崩壊防ぐ役割を 改めて農協運動の原点に立ち返るべき 石破茂・元農相【森田実と語る】2022年7月8日
政治評論家の森田実氏が、各界のキーマンと語るシリーズ「森田実と語る!どうするのか この国のかたち」。今回は、自民党の石破茂衆議院議員にインタビューした。日本のトップリーダーとして、農相や防衛相などを歴任した石破氏に食料安保や今後の農政、JAのあり方などについて考えを聞いた。(敬称略)

石破茂 衆議院議員
「歴史の本当の転換点にいる」
森田 まず石破さんには時局認識などについて伺いたいと思います。激動する世界と大変な状況にある日本。こうした中にあって政治の果たすべき課題、その原則論についてのお考えをお聞きかせください。
石破 よく政治家は「今は100年に一度の歴史の転換点」と言いますが、本当に今はそうなんだなという感じがしています。100年前は、1914年から18年までの第一次世界大戦、1917年がロシア革命、1918年から20年まではスペイン風邪、1929年が世界大恐慌。1939年から45年までが第2次世界大戦。今起こっていることも似てきている感じがしています。もちろん大戦争もやってはいけないし、大恐慌も起こしちゃいけない。スペイン風邪では5000万人が亡くなったと言われ、今の新型コロナウイルスは全世界で600万人超が亡くなっていると言われています。
また、平成とは何だったんだろうと検証しないままに、令和も4年目になってしまった。やはり一つは「戦後」が終わった、戦争を経験した方がほとんどおられなくなったのが平成だと思います。もう一つは民主主義が大きく変わってしまった。投票率は下がる、健全な批判が行われない、少数意見が尊重されなくなったというのが平成の時代だったと思います。資本主義も大きく変質し、民主主義や資本主義が大きく変わりつつある歴史の本当の転換点にいると思っています。
森田 ジョージ・ソロスは20年前に「世界秩序の崩壊」を書きました。その副題が「自分さえ良ければ社会」への警鐘で、序文にアメリカでは政界も経済界も学界もジャーナリズムもあまりにも自分さえ良ければ思想に侵され始めていると、こういう国がちゃんとやっていけるはずはないと警告した書でした。今、政界を見ていて、日本のトップリーダーを目指す人の中で、石破さんは自分さえ良ければ思想に馴染むことなく、自らの道を貫いていると思っています。一般大衆が目覚めたときには自らの信念を貫く政治を求める時代は必ず来ると思います。長期的に見れば日本の政界も思想的変遷を迫られる時期が来るのではないでしょうか。
石破 日本は冷戦期に、そのメリットを最大限享受してきた国ですが、その間に食料自給率やエネルギー自給率は戦前よりも低い状況になってしまいました。自衛隊はその成り立ちや憲法との関係を整理しないまま、「軍隊」としての法的な基盤が脆弱で、アメリカ軍とともに行動することを前提としています。エネルギー、食料、防衛について非常に脆弱なまま、冷戦時代という中で未曾有の繁栄を遂げた国ではなかったかと思います。そのエネルギー、食料、安全保障を根幹から問わねばならない時代を迎えているのに、いま行われている参議院選挙でも、これらのことをきちんと国民に問う政党も候補者もあまりいないように見えます。これで大丈夫かなという感じがしています。
日本ほど農業に向いた国はない
森田 そうした中で、まさに今、食料安全保障をどのように確立するかいうことが課題となっています。すでにいろいろなところで発信されていますが、改めて石破さんの考えをお聞かせください。
石破 私は日本ほど農業に向いた国は世界にないと思っています。日本ほど土が豊かであり、春夏秋冬、まんべんなく雨や雪があって、国土が急峻ですから水が流れて連作障害が少なく、水田農業が行える。土が豊かで水が豊かで日の光も非常に適度に降り注いでいる、この三つの条件をすべて満たす国は世界中にそんなにあるわけではありません。加えて勤勉な農業者がいるわけです。ところがいわゆる食料自給率は37%であると。これは結局、この国の政策としてそういう選択をしてきた結果だと思っています。
高度経済成長期には、本業の農業はそんなに頑張らなくてもいい、農業にかかる労働時間を短くして、浮いた時間をいわゆる製造業を中心とする誘致企業や、あるいは公共事業などに回す、という政策でした。日本農業の持っている力を引き出さないままここまで来たことも、自給率が低いことも、偶然ではなく政策選択の結果だと思っています。
今、食料安全保障が言われるようになりました。工業製品と違って穀物は少しの需給の変動で価格が大きく振れる不安定な貿易構造を持っていますので、今のようにあまりにも外国に依存する体制は好ましくないと思っています。今まではあえて農業の潜在力を引き出さないような政策をとってきたわけですから、政策を変えることで農業のポテンシャルを引き出すことは十分に可能だと思っています。
大切なのは「自給率」より「自給力」
森田 続きまして食料・農業・農村基本法ですね。秋ごろから見直しに向けた議論が始まる見通しですが、石破さんのお考えを聞かせていただけますか。
石破 農業政策は、産業政策であると同時に社会政策、地域政策でもあると思っています。まず、産業政策として成り立っているかというと私はそうは思いません。やはり需要に合わせて、少量多品種高付加価値という方向に変わっていかなければならないと思っております。何でも安ければいいということではなく、価値に見合った価格で農業所得を向上させる、産業政策としての農業という観点から基本法をもう1回見直していかなければなりません。また、私は「自給率」という言葉よりも「自給力」が大切だと思っています。自給率とはその国の人たちが自分の国で作ったものでどれだけ食生活をまかなっているかという話ですから。アフリカで飢餓に苦しんでいる国などの自給率は高くなります。なぜならお金がなくて外国から食料が買えないからです。そういう意味で、「自給率」という数字を政策目標にすることにあまり意味があるとは思っていません。むしろ農業者の人口構成がどれほどサステナブルか、後継者がいるかどうか。あるいは農地やかんがい排水など農業インフラがどれだけ健全に維持・整備されているか、単収や品質がどれほど高く維持されているか、そして農業技術。こういうものをきちんと維持し向上させることに政策目標を切り替えないといけないと思います。
もう一つは、地域政策、社会政策としての農業のあり方です。私は、地方や農村が豊かな国こそがサステナブルな国だと思っています。農地が荒廃し、農業者がいなくなり、農村が消滅の危機に瀕している国は決してサステナブルな国ではありません。その地域政策、社会政策としての農業政策、その色彩がもう一度、農業農村基本法を見直すときには強調されなければいけませんが、そこにおいてJAがいかなる役割を果たすべきかという議論がJAの中でもっと活発に行われてほしいと思います。「1人は万人のために、万人は1人のために」という協同組合の理念、そして日本だけがとっている総合農協というあり方が、地域政策における農協の果たすべき役割としてもっと見直されるべきではないかと考えています。
森田 石破さんが話されたように地方の農村は人口減少や高齢化による担い手不足で疲弊しています。改めて農業政策やJAのあり方ということについて石破さんの思いを語っていただけますか。
農協運動のあり方は日本のあり方そのもの
石破 地域社会がどんどん崩壊しつつある現状を止めなければと強く感じています。私は日本で人口最少の鳥取県が選挙区ですが、平成の大合併をする前はもっと地域社会に活気があり、思いやりがありました。小さい町や村でも役場があって町長・村長がいて議員がいて職員がいて、一つ一つの集落で今何が起こっているのかを行政がきちんと把握をしていました。それが大合併で役場はなくなり村長もいなくなった、そうすると集落に対するいろんな配慮が行き届かなくなったと実感しています。
今から合併を元に戻すわけにはいきませんが、そういう現状において誰がその役割を果たしていくかというと、それはJAと土地改良連合会と郵便局なのではないかと思っているんですね。いずれも公的な性格をもっていて、純然たる民間企業とは少し違う。だから地域に対するいろんな配慮、目配りというものをもう1回取り戻していく、そういう考え方にどれだけ農業者やJAの方々が共鳴していただけるかということが大事だと思っています。農林水産大臣のときに長野県のJAが運営している佐久総合病院を視察させていただいて、そこではお医者さんも看護師さんも辞めないというので、それほど待遇がよいとは思えないのになぜですかと聞いたところ、病院長は、ここは農協の病院なんだと、1人は万人のために万人は1人のためを実践している病院なんだと、だからたとえ待遇がそれほど良くなくてもみんな辞めないとはっきりおっしゃっていました。一つのあるべき姿だと思いました。協同組合とは何か、総合農協とは何かという原点に立ち返って、もう一度農協運動のあり方は、日本のあり方そのものだということをJA関係の方々に語っていただきたいと考えています。
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