農政:花開く暮らしと地域 女性が輝く社会
昭和女子大学総長・坂東眞理子氏に聞く 女性活躍 偏見・意識の壁崩せ(2)2025年1月29日
日本は人口減少による労働力不足が深刻化し、政府は女性の活躍推進に力を入れる。だが、2024年のジェンダーギャップ指数は世界118位と低迷し、特に政治・経済の分野が遅れている。この状況をどう突破すべきか、政府機関で男女共同参画に取り組み、農林中金の経営管理委員を2017年から務める昭和女子大の坂東眞理子総長に聞いた。聞き手は千葉大客員教授で元JA全農専務の加藤一郎氏。
家事、育児は男性も自分事として
千葉大客員教授、元JA全農専務 加藤 一郎氏
加藤 米国に駐在した1985年頃は、米国の女性は家計を夫任せで、日本の方が進んでいると思いました。
坂東 そうなんです。米国で女性解放運動、ウーマンリブが盛んになった背景として、当時の米国の男性は財布のひもを握り、妻は経済的にも社会的にも力がない存在でした。レディファーストなどマナーとしては女性を大事にしていても、女性は力がなかった。そのために女性たちの怒りが爆発したのだと思います。
その点、日本では平安時代、親の屋敷や財産、荘園を相続したのは娘でした。お嫁入りするようになったのは武士の時代です。また、武士は男尊女卑でしたが、商人の世界は違います。船場の大きな商人の家で、もし息子の出来が悪ければ、隠居させて、番頭さんなどを養子に迎え、財産を娘に相続させました。
一方で、社会的地位や権力、ステータス、戦争などは父親の役割でした。地位は父親、財産は母親から相続する、母系でも父系でもない「双系制」と言われています。農地も、昔は娘たちも相続していました。国立公文書館にもそうした文書が残っているんですよ。
加藤 日本の社会では共働きであっても男性が主で、女性はサブという流れが強かったですね。
坂東 20世紀の高度経済成長以降の流れですね。性別の役割分担として、男性が稼ぎ、女性が家庭で子育てや介護をするのは、20世紀後半では一般的でした。
加藤 今は共稼ぎが増え、男女の差はなく育てられています。
坂東 まだ男性フルタイム、女性パートの夫婦が多い。有名進学校に行くような男の子は、相変わらず受験勉強だけして家事をしない子もいます。普通の男の子は、子育てをしはじめています。
昭和女子大にはこども園があり、0歳から預かっています。朝の送りを担当するのは3分の2がお父さんです。お迎えはまだ女性のほうが多いかな。若いご両親は協力して子育てをしています。
企業も男性の育児休業を奨励し、働き方改革で男性も残業時間をしないでワークライフバランスを考えるように変わっています。しかしまだ、ワークライフバランスは女性の問題と思っている方も多く、これからは男性も長時間労働ではなく、家事や育児に加えて、自分で勉強することが必要でしょう。
実は、30代、40代の社会人は、日本が一番勉強しない国なのです。米国でもアジアでも、働きながら大学院に通ったり、通信教育を受けたりする人が多い。ICTなど世の中はどんどん変わっています。勉強しなければいけないと思っている人が多いのです。
加藤 30代、40代では、育児や介護はまだ女性が主体的ですね。
坂東 男性の25%は生涯未婚ですが、それは男性の意識が変わらず、家事や介護を分担しないから結婚できないのではないでしょうか。日本の少子化の一番の理由は、結婚しない男性、女性が多いからです。相変わらず昔のように、奥さんに何から何までやってもらい、世話してもらおうと考えている男性は...
加藤 結婚できませんね。
坂東 はい。農家も心配です。農家の男性は未婚率が高い。農家の若い男性が女性と協力して新しい家庭を作り、子育ても家事も一緒にやっていこうと変わってほしいですね。
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