農政:花開く暮らしと地域 女性が輝く社会
昭和女子大学総長・坂東眞理子氏に聞く 女性活躍 偏見・意識の壁崩せ(3)2025年1月29日
日本は人口減少による労働力不足が深刻化し、政府は女性の活躍推進に力を入れる。だが、2024年のジェンダーギャップ指数は世界118位と低迷し、特に政治・経済の分野が遅れている。この状況をどう突破すべきか、政府機関で男女共同参画に取り組み、農林中金の経営管理委員を2017年から務める昭和女子大の坂東眞理子総長に聞いた。聞き手は千葉大客員教授で元JA全農専務の加藤一郎氏。
男女の違い生かす知恵を
昭和女子大学総長 坂東眞理子氏
加藤 JAグループで女性役員を誕生させるためには、組織としてどのような努力が必要でしょうか。
坂東 女性の管理職や役員の数値目標には反対意見もありますが、お願いしたい。数値目標を決めるのは過渡的な措置です。永遠に続けるのではなく、5年間かせいぜい10年間期間を区切って、女性にそういうポストにチャレンジしてもらう。それぞれの組合が目標を持ち、取り組んでくださるといいなと思います。5年間だけでもいいのです。若い女性たちにどんどん責任ある仕事に就いてもらう。
いきなり役員や管理職と言わず、入社して2、3年、20代や30代前半の若い人たちに、難しいけど面白い仕事に就いてもらう。大変だけど面白い仕事を若いうちに経験させることが大事なのです。
加藤 最後に、なぜ女子大が存在する必要があるのでしょうか。社会的に果たすべき使命や役割をどのように考えておられますか。
坂東 女子大で総長をしていますが、私自身は小中高校から大学まで男子の多い共学で学び、公務員時代も男性の多い職場でした。当時は、女性も専門知識を勉強して能力を開発すれば、社会に出て男性と平等に働けるはず、と思い込んでいました。
現実の社会では成績がいいとか知識があることだけが能力ではありません。体力や集中力なども含め周りの人たちとどういう関係を作るのか、支えてもらい、相談相手にもなってもらう。そうした人間関係を作ることができる総合力を女性が身に着ける必要があります。そのためには女子大はとても強みがあると思うのです。
共学の大学では女性のキャリア教育は難しいですね。女子大であれば、女性に必要な考え方や社会に対する見方、人生設計を教えることができますし、女性がリーダーになる機会が多い。女性も男性も一人一人が責任をもって、生きていく上での戦略を考えることが一般的になれば、女子大だけがそうした教育をしなくてもいいのでしょう。しかし、共学では男性たちはそんなことを考えるより「資格を取れば」「いい成績をとれば」「大会社に入れば」成功すると思う傾向が強いのです。
視野を広げ、長い視野で物事を考える。女性であるということはマイナスではありません。それを与えられた条件として、どう活用していくかという考え方が必要です。いいか悪いかではなく、違っているからこそ、どう違いを生かすか。違うから劣るのではなく、違っていることを活用する知恵を必要としているのではないかと思っています。
【インタビューを終えて】
男性が女子大学に入構する機会はあまりありません。校門から入って総長室まで歩みを進めるなか、構内がきれいに整備されていることを実感しました。私が客員教授をしている千葉大学園芸学部とは大きな違いがありました。構内をきれいに保つことのキーは何かを聞き忘れたことが悔やまれます。私が大学に在学していたころ(1971年卒)は女性はごくわずかでした。今や女性が半数を超えております。成績優秀者表彰10人はほとんど女性です。大学祭などの運営も女性がリードしているように感じます。しかし、卒業して就職するとまだまだ男性優位の企業文化があるように思います。今年、後期高齢者になった私はこの状況がどうなるか興味深く見守りたいと思います。(加藤一郎)
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