農政:どうするのか?この国の進路
【新政権発足・高市政権を考える】政治も経済もハードルだらけ 月刊日本編集長・中村友哉氏【どうするのか?この国の進路】2025年11月25日
高市早苗首相の誕生で、政治の季節が大きく動き始めた。女性初の総理という期待感の一方で、物価高、対中関係、維新との連立など難題が山積している。高支持率を追い風に船出した新政権は、果たしてこの国の進路をどこへ導くのか。「月刊日本」編集長の中村友哉氏に寄稿してもらった。
第219回国会で所信表明演説をする高市早苗内閣総理大臣(官邸HPより)
高市早苗内閣は高支持率でスタートした。組閣までは連立組み換えによってドタバタしたが、女性初の総理大臣ということで国民の期待感は高い。
しかし、高市内閣が安定的な政権運営を行っていくには、いくつかのハードルを越えなければならない。
第一に、何と言っても物価高対策である。岸田文雄内閣や石破茂内閣が崩壊したのは物価高対策がうまくいかなかったからであり、安倍晋三内閣が長期化したのも、あえて言うなら、安倍首相の目論見に反して物価が上がらなかったからである。現在の物価高を解決できなければ、国民の不満は大きくなり、高市内閣の支持率は下落するだろう。
高市首相は物価高対策としてガソリン暫定税率の廃止や電気・ガス料金の補助などに取り組んでいるが、物価高対策のためには円安是正が必須である。しかし、高市首相の進める積極財政は物価高で苦しむ国民生活を改善するどころか、円安を加速させ、さらなる物価高を招く恐れもある。
第二に、目下最大の懸案事項である日中問題である。高市首相の台湾有事をめぐる国会発言に中国が強く反発し、水産物の輸入停止をはじめ対日圧力を強めている。中国側は高市首相に発言撤回を求めており、撤回しなければさらなる措置をとると警告している。
高市首相が踏み込んだ答弁をしたのは確かだが、首相が一度口にしたことを撤回するのは難しい。コロコロ発言を変えていては政権の信用も権威も失われる。しかも、今回は相手が中国である。野党相手ならまだしも、外国から批判されて発言を修正すれば、外圧に屈したと見なされ、政権基盤は揺らぐだろう。
とはいえ、このまま中国と対立を続けるわけにもいかない。中国の圧力が強まれば、日本経済は打撃を受け、国民生活はさらに苦しくなる。日本の財界も高市内閣と距離をとるだろう。そうなればやはり内閣支持率は下落することになる。
この問題は時間が経てば経つほど日本に不利になると思う。政治体制や経済体制の違いを考えれば、中国のほうが持久戦に有利である。また、対立が長引けばトランプ米大統領が介入してくる可能性もある。
日米首脳会談は成功だったと言われているが、この問題に関してトランプ大統領が日本側に立つ保証はない。高市首相の国会答弁を受け中国の大阪総領事が「汚い首を斬ってやる」とSNSに投稿したが、FOXニュースがトランプ大統領に「中国は我々の友人と言えないのではないか」と尋ねたところ、トランプ大統領は「多くの同盟国も友人とは言えない。中国以上に貿易で我々を利用してきた」と答え、中国批判を避けた。トランプ大統領は中国の習近平国家主席との首脳会談でも台湾について議論せず、米中両国を「G2」と呼び、中国の覇権を認めるような発言までしている。
ウクライナ戦争やガザ紛争を見ればわかるように、対立する双方に圧力をかけるというのがトランプ大統領の仲裁のやり方だ。日中に関しても同じ手法をとるだろう。しかし、中国が米国の圧力に屈することはない。それは米中貿易交渉からも明らかだ。他方、日本は米国に強い圧力をかけられれば簡単に受け入れるだろう。そのため、日本はトランプ大統領の圧力により中国の主張を受け入れさせられるということになりかねない。そうなれば日中関係はおろか日米関係まで揺らぎかねない。
高市首相が越えなければならない第三のハードルは、維新との連立である。これまで維新は企業・団体献金の禁止を掲げていたが、自民党の反対が強いため棚上げした。その代わり一丁目一番地として要求しているのが、議員定数の削減である。
しかし、高市首相は定数削減に消極的である。できるだけ幅広い賛同を得ることが重要だとし、来年に結論を持ち越すことも示唆している。高市首相の主張は正論である。定数削減は議会全体に関わる問題であり、自民と維新だけで決めていいものではない。定数を削減すべきかどうかも議論しなければならない。
しかし、自民党が消極的な最大の理由は、維新を舐(な)めているからだろう。定数削減を先送りしても、どうせ維新は連立から離脱しないと高を括(くく)っているのである。
維新と入れ替わる形で連立を離脱した公明党は、自民党が彼らに不都合なことをしても連立を続けたため、「下駄(げた)の雪」と揶揄(やゆ)されてきた。しかし、自民党の政治とカネの問題を受け、ついに連立から離脱した。もし維新が定数削減を軽く扱われても連立を続けるなら、維新こそ「下駄の雪」と言わねばなるまい。
もちろん維新内部にも自民党への不満の声はあるが、一度与党の立場を味わうとなかなか手放したくないものである。この先、連立維持派と連立離脱派の対立が強まれば、維新が分裂することも考えられる。
かつて自民党・自由党・公明党による自自公連立政権から自由党が離脱する際、自由党の議員たちは新たに保守党をつくり、自公保連立に形を変えた。再び同じことが起こらないとは言い切れない。
臨時国会の会期は12月17日までである。そのころには現在と違う政界の景色が広がっているかもしれない。
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