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特集:緊急特集 TPP大筋合意―どうする日本の農業

2015.10.23 
JA大会決議の誠実な実践を一覧へ

加藤善正 岩手県生協連合会 会長理事

 多くの国民や生産者が反対していたにもかかわらず、米国アトランタで行われていたTPP交渉が10月5日に大筋合意した。大筋合意への意見や今後の日本農業の在り方などについて、多くのご意見が次々と寄せられている。これらのご意見を逐次掲載しているが、今回は、岩手県生協連合会の加藤善正会長のご意見を掲載する。

◆県民運動としてTPP反対を展開

加藤善正会長 10月5日、「TPPの大筋合意」が政府から発表され、日本のマスコミも「国益にかなった大筋合意」というキャンペーンを張っている。しかし、外国の新聞は「大筋合意」という表現ではなく、閣僚会議の声明でも「交渉は続く」となっている。しかも、アメリカでは民主党有力大統領候補であるクリントン氏もサンダース氏も、今度のTPPには「反対・不支持」を表明しており、山田正彦元農水大臣は「大統領選挙が終わるまでは米国議会で承認(批准)されない」と発言している。
 こうした段階で早々と、実質的に「TPP反対」の旗を降ろして、安倍首相参加の下で開かれたJA大会での「大筋合意の内容の公表」「万全な対策(予算)運動の構築」という決議は、これまで長い間「TPP反対」運動を共に展開してきた多くの国民の側からは、極めて不可解で納得いくものではないと思うのは私だけであろうか。
 岩手県においては、「TPP等食料・農林水産業・地域経済を考える岩手県民会議」(略称・TPP反対岩手県民会議)を県内の4協同組合連合会会長の呼びかけで、52団体の参加で結成され、学習会・講演会、集会・街頭宣伝、議会請願(県議会など)、紫波町・両盤地区などの地域組織の取り組みなど、幅広い大きな県民運動が展開された。13年4月には「TPPは韓米FTAがモデルである」というアメリカ側の情報を聞き、「韓米FTA調査団」(県民会議に参加する全JAトップ・県労連・生協・農民連など22名 私が団長を務めた)の派遣とその報告会など、様々な創意工夫を凝らし参加団体の信頼関係を強めて実践した。
 

◆国民の声を軽視する安倍政権

 さて、周知のように13年4月の衆参農林水産委員会の国会決議は「5つの重要品目について、引き続き再生産化可能となるよう除外又は再協議の対象にすること、10年を超える段階的関税撤廃も含めて認めないこと」が明記されており、今回の報道されている譲歩は、明らかにこの決議に違反している。安倍首相の「国益を最優先に守るべきは守り、攻めるべきは攻める」の繰り返しての発言も、彼の言う「国益」が「企業が自由に最も活動しやすい国づくり」に示されているように、日米の多国籍巨大企業(投機マネーの日本投資の増大も)の最大利益を実現することは明瞭である。
 12年12月の総選挙で「ウソはつかない。TPP断固反対。ブレない。日本を耕す!」というポスターを全国に掲げて、政権を奪還した自民党であり、その後の国政選挙では自民党も公明党もTPP参加の是非を争点にすることを避け、挙句の果てに「国会決議違反」を平然と国民に押しつける政治は、明らかに「民主主義」破壊行為として理解しなければならない。「集団的自衛権行使」「戦争法案」が明確に「憲法違反」であるのに、「立憲主義・民主主義・法治国家」を破壊する暴挙と同じ文脈で捉えなければならない。秘密保護法、武器輸出3原則廃止、原発再稼動・沖縄辺野古新基地、消費税増税と社会保障制度の連続改悪、など、安倍政権の一連の政治・政策は、反対もしくは疑義を唱える多くの国民の声を無視、もしくは軽視するものであることは、過半の主権者・国民の一致する認識であろう。
 

◆日本農業の未来を閉ざすな
 
 さて、「これからの日本農業をどうするか」がいよいよ問われる。TPPは明らかに日本農業を破壊させる。とりわけ、現在の農政転換、「規制改革会議」「産業競争力会議」などの意思に基づく「官邸農政」が、大企業の参入・大規模企業農業・零細小規模農業の撤退を進める中で、果たして、TPP対策予算がどこまで措置されるであろうか。また、WTO農業協定対策費・6兆円が、その後の日本農業の発展に如何なる効果があったか、当時の国家財制との違いなど、多くの期待を寄せるのは「墓穴を掘る」危険性すらある。
 現在の危機的な農漁村・農業・食料自給率などをいかに改革するのか。それは、国家予算を獲得するために、政権党にすり寄りその理不尽な農協法改悪や「官邸農政」に屈服するかのような戦略では、その展望は切り開かれるのであろうか。
 TPP反対運動で築き上げた国民各階層との連帯と団結の路線を「反故」にして、主権者・国民の真の理解や支援を獲得することはできない。TPPにより、「生鮮野菜の関税撤廃」のニュースは、消費者の不安、とりわけ食料自給率の急速な低下、農薬・添加物など輸入食品の安全検査への不信、遺伝子組替え食品の増大と表示後退など、消費者の不安も増大するが、その一方で低価格への誘惑は、国産の農畜水物への結集に揺らぎが生じる危険性がある。
 勿論、これからのJAの対応によってが「奇妙に感じたり、不信・不安、疑心暗鬼に感じる」ような状況になれば、医療分野や自治体行政、ISDSの主権規制など、多くの分野も含めて、TPPの本質を学び大きな連帯を構築してきた人々から、「日本農業の未来を閉ざす」ことになるのは明瞭ではないか。
 その点で、JA大会決議の第3、「21分野の大筋合意の内容が、国民生活に与える影響を検証し、広範な組織との連携による国民の生命と我が国の主権を守る運動の展開」は、極めて重要なものである。その誠実な実践を求めると共に、TPP反対運動の一層の推進・強化・拡大に私も微力を尽くしたい。

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