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農政:緊急特集 TPP大筋合意―どうする日本の農業

TPPで薬の値段が上がる!?~懸念される医療保険制度への影響2015年11月6日

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東公敏日本文化厚生農業協同組合連合会常務理事

 多くの国民や生産者が反対していたにもかかわらず、米国アトランタで行われていたTPP交渉が10月5日に大筋合意した。大筋合意への意見や今後の日本農業の在り方などについて、多くのご意見が寄せられている。これらのご意見を逐次掲載していくことにしている。
 今回は、TPPが医療にもたらす影響について文化厚生連の東公敏常務理事のご意見を掲載する。

 政府は、社会保障制度はTPPの対象外なので影響を受けないと説明しています。本当でしょうか。確かに、越境サービス貿易や金融サービスの項で、社会保障は協定の適用外とされました。しかし、医薬品や医療機器(ステントやペースメーカー等の特定保険医療材料)の値段が上がる仕掛けが巧妙に仕組まれてきます。医療機関や調剤薬局でもらう保険対象の薬や医療機器は、厚生労働省により公定価格(薬価、保険償還価格)が決められます。この公定の価格が上昇するとなると、公的医療保険の財政に大きな影響を与えます。


◆儲け続けるために特許期間を引き伸ばす

 仕掛けの第一は、医薬品の知的財産保護の強化。薬品は、特許出願→開発・臨床試験→申請→市販承認(保険収載)されてやっと初めて販売となります。圧倒的な強さを誇るアメリカの製薬企業としては、特許期間をいかに引き伸ばし他の参入を阻止して儲け続けるかが肝心です。
 そこで、1)特許期間延長制度(新薬の申請後に市販承認されるまでの数年の期間を特許期間として延長)、2)バイオ医薬品データ保護期間8年の設定(特許期間とは別にデータ保護期間が重なり実質的に延長)、3)特許リンケージ制度(後発品の申請があったら政府が特許権者に通知して確認、訴訟した場合係争中は後発品の製造承認を保留)-が合意されたようです。
 全世界でのバイオ医薬品の市場規模は23兆円弱(2015年予測)、新薬には年間1兆円を超える売り上げをたたき出すものもあります。「後発医薬品の登場をできるだけ遅らせよ」というわけです。
 特許の対象に、診断方法・治療方法・外科的方法を入れようとしているのも問題です。日本の特許法ではこれらは「産業上利用できる発明」には該当しないとしています。人命にかかわる医療技術を特許で独り占めしてよいものでしょうか。


◆薬価決定に米国製薬会社が?

 第二は、まだ詳細は不明ですが、薬価の決定機構(日本では中医協?)に「アメリカの製薬企業を入れろ」という要求。いかに早く、そしていかに高く販売にこぎつけるかということです。
 以前リークされた協定附属書案には、非関税措置としての薬価決定に「透明性と手続公正」を求めるとなっています。日米2国間交渉で直接的な要求をしてくる可能性もあります。すでに豪米FTA(2005年発効)、韓米FTA(2012年発効)においては、「もっと値上げを」とアメリカ企業が不服申立てできる仕組みが入っています。
 韓国には、なんと韓米両国の担当官が共同議長となる医薬品・医療機器委員会や、異議申立てを受け付けるための韓国政府の人事権が及ばない独立検証機関が設置されています。


◆新薬はいつまでも高い価格で

 第三は、TPPとは別にすでに突きつけられている具体的な直接要求です。TPPの合意内容だけを見ていると事態を見誤ります。
 アメリカの通商代表部は、以前のような医療サービスへの参入(営利病院や混合診療解禁要求)ではなく、最近は医薬品・医療機器価格決定に対する具体的な要求に絞り込んできています(2012年以降の『米国外国貿易障壁報告書』)。
 すなわち1)新薬創出・適応外薬解消等促進加算の恒久化、2)市場拡大再算定ルールの廃止、3)外国平均価格調整ルールの改定-です。
 薬価は2年ごとの改定で徐々に引き下げられます(公的な保険財政の安定のための当然の措置)。そこで、「新薬をいつまでも高い値段のまま据え置け、値下げするな」という、あからさまな圧力です。日本及び欧州の製薬企業団体もいっしょになって要求しています。
 新薬創出・適応外薬解消等促進加算(2010年から「試行」の段階)とは、後発医薬品がない先発品で、市場実勢価格の値引き率の小さいものに一定の加算をして高薬価を維持するもの。要は医療機関との交渉で高値を維持すれば公定の薬価も下げない。医療機関の経営を直撃するため大きな反対の声がある制度です。すべての医薬品費の約3割、3兆円を占める新薬のほとんどがこの加算の対象品目となっており、2010~2013年の4年間で約2800億円の加算額が製薬企業に転がり込んだといいます。
 新薬のイノベーションを推進するのが目的となっていますが、研究開発投資ではなく内部留保やM&A、営業宣伝費に回っているという指摘もあります。
 市場拡大再算定ルールとは、予想以上に売れた薬(予測の市場規模より2倍以上、150億円を超えた場合)は薬価を最大で25%引き下げるもの。
 外国平均価格調整ルールとは、欧米諸国と比較して高過ぎる日本の価格を下げるもの。
 製薬企業はこれらのルールが気に入らない。「アメ(1))をもっとくれ、ムチ(2)3))はやめろ」ということです。


◆医療を守る国民の声を広げる

 わが国の医療費(2015年度)は総額約43兆円。うち医薬品は10兆円、特定保険医療材料(上記でいう医療機器)は1兆円で、合わせて4分の1を占めます。
 製薬企業の言いなりで価格上昇、高止まりを許せば、保険財政を圧迫することは目に見えています。そのツケは、医療機関に支払われる診療報酬の削減や国民の保険料負担増、患者の自己負担増に回されるでしょう。
 まるでTPPに歩調を合わせるがごとく、様々な医療費抑制の保険制度改正や患者負担増が進んでいることは国民にとって大問題です。このままでは、形は皆保険だけれど一部しか面倒を見てくれないボロボロの制度に空洞化してしまいます。
 TPPはまだ成文化も調印もされていません。「TPPはノー!」の世論がいまこそ重要です。厚生連医療を育ててきた農協組織が先頭に立ち、農業と合わせて医療を守る国民の声を広げていく時だと思います。

なお、皆さまのTPPに関するご意見を下記までメールでお寄せ下さい。

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