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【JA改革の本質を探る】「農業補助金」とは安全保障のため 国民の命を守る食料守れ(下)2016年9月29日

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TPPの落し穴輸出増大は空論
鈴木宣弘
東京大学教授

◆安全な食料を 消費者が理解

【JA改革の本質を探る】「農業補助金」とは安全保障のため 国民の命を守る食料守れ(下) 輸入農産物は、成長ホルモン(エストロゲン)、成長促進剤(ラクトパミン)、GM、除草剤(グリホサート)の残留、収穫後農薬(イマザリル)などのリスクがあり、まさに、食に安さを追求することは命を削ることになりかねない。このような健康リスクを勘案すれば、実は、「表面的には安く見える海外産のほうが、総合的には、国産食品より高い」ことを認識すべきである。
 カナダの牛乳は1L300円で、日本より大幅に高いが、消費者はそれに不満を持っていない。筆者の研究室の学生のアンケート調査に、カナダの消費者から「米国産の成長ホルモン入り牛乳は不安だから、カナダ産を支えたい」という趣旨の回答が寄せられた。生・処・販のそれぞれの段階が十分な利益を得た上で、消費者もハッピーなら、高くても、このほうが持続的なシステムではないか。つまり、「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」の価格形成が実現されている。カナダでは、MMB(ミルク・マーケティング・ボード)を経由しない生乳は流通できない。法律違反で起訴される。酪農団体とメーカーはバター・脱脂粉乳向けの政府支持乳価の変化分だけ各用途の取引乳価を自動的に引き上げていく慣行になっており、実質的な乳価交渉はない。
 スイスの卵は国産1個80円もする。それでもその卵のほうが売れていた(筆者も見てきた)。小学生くらいの女の子が買っていたので、聞いた人がいた。その子は「これを買うことで生産者の皆さんの生活も支えられ、そのおかげで私たちの生活も成り立つのだから、当たり前でしょう」と、いとも簡単に答えたという。それでもスイスの農業所得のほぼ100%が補助金だというのだから、まだまだ十分に買い支えていないということになる。
 それについては、イタリアの水田の話が象徴的である。水田にはオタマジャクシが棲める生物多様性、ダムの代わりに貯水できる洪水防止機能、水をろ過してくれる機能、こうした機能に国民はお世話になっているが、それをコメの値段に反映しているか。十分反映できていないのなら、ただ乗りしてはいけない。自分たちがお金を集めて別途払おうじゃないか、という感覚が税金からの直接支払いの根拠になっている。


◆多様な価値 国民に説明を

 農産物には様々な価値が込められている。それを機能ごとに個別具体的に数値化して、それについて国民がどう応分の負担していくのか、そういうシステムをEUは作り上げてきた。だから消費者もきちんと納得して、支えることができるし、生産者も誇りを持って作っていくことができる。
 さらに、米国では、農家の皆さんが再生産していくためには最低限これだけの価格は必要だから、その水準を切ったときは政府がしっかりと補填するので、それを目安に投資計画を立てて頑張って下さい、と宣言している。これが食料をみんなで守っていくということである。これができていないのが日本である。農業政策は農家保護政策でなく、国民の命を守る安全保障政策である。
 だまされても、だまされても、おこぼれを期待し、見せしめを恐れて従い続ける選択に未来はないことは農業・農村も農協も農水省も同じだ。真っ向から対峙することで未来は切り開けることを先の参院選結果も示している。国民の命を守る使命に誇りを持ち、ひるむことなく前進するしかない。

・「農業補助金」とは安全保障のため (上) (下)

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