農政:自給率38% どうするのか?この国のかたち -食料安全保障と農業協同組合の役割
わが家の自給、地域の自給、そして国の自給へ ~JAは地域社会の守護神~3【星 寛治(高畠町)】2018年10月3日
◆地域の全体向上をめざす
半世紀も前のことだが、山形市本沢農協組合長横尾健三郎氏の講話に、いたく心をゆさぶられた記憶がある。氏はアララギ派の歌人で、ガンジーの思想に引きつけられ、現地に赴きながらその真髄にふれる。そこで、サルボダヤ(地域の全体向上)という理念が、運動の原点を成すことを悟ったと語られた。
その頃、一樂照雄氏は、協同組合運動は構成員の利益や生活を守るだけに留まらず、公正な社会の実現を目的とする所に本質的な意義があると明言した。50年も前に、時代を洞察し、地域住民の生き方を示唆した先建に学び、いま地域再生に注力すべき時だと思う。その推進の母体は、市町村自治体とJAである。まず地域自立のシナリオを描き、産業振興だけでなく地域の全体向上をめざす。総合農業としての強みを十分発揮し、漁協、生協、森林組合とも連携し、生活文化を高める原動力になって欲しい。そのために、情報と価値の共有が必要であろう。身土不二、地産地消の気運を醸成し、域内自給を限りなく高め、その延長で心である市民の食卓と健康を支えて欲しいと願っている。
◆新たなローカリズムへ置賜自給圏構想
置賜広域圏の3市5町の有志が結集し、上杉鷹山の藩政改革に学ぶ地域自立の運動が始った。置賜自給圏構想である。行政、生協、酪農協、商工観光、福祉、住民団体、大学などが連携し、推進機構を創って実践に着手した。食と農とエネルギーの自給を基軸に、地域にストックする改革をめざす。但し、閉ざされてた地域主義ではなく、北前船と最上川舟運の交易と文化遺産を活かし、開かれたローカリズムを指向する。その切り口として、豊富な水と森林資源を活用し、水力発電やバイオマスの実験に着手した。また、美しい散居村の風景をツーリズムに活かし、一方で先端産業の研究拠点を創出する飯豊町の取り組みが注目される。そのベースには、美まし米づくりや、米沢牛の産地としての農の自給力がある。
◆孫の世代にバトンを継ぐ
3.11の大震災が誘発した東電福島原発の苛酷事故(文明災)に遭遇し、浜通りの住民は故郷を丸ごと奪われる悲劇に追い込まれた。以来7年半、再生のための懸命な努力が続けられている。そのひたむきな農魂に脱帽の他はない。
原発から100km圏の置賜でも、風評被害に苦吟し、上和田ゆうき米は受注が激減した。生産組合は、苦渋の自主減反を行い、厳密な分析データを以って、信頼回復に努めた。その背中を見て、20代の若い世代が立ち上がった。苦境をのり切る担い手になり、15名の青年部を作り、学習や実務にいそしんでいる。数年後の予測では、町内に50名位の若い担い手が誕生しそうだ。農の文化性や"幸福度"という新たな価値への覚醒もあるようだ。わが家でも、来春に孫(次男)が就農する。JAは、彼らにとって頼れる守護神であり続けて欲しい、そして国は、食の安全、安心を確保し、国民と共に食料主権を確立する道へ舵を切ることを切望してやまない。
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