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農政:コロナ禍 どうなるのか?日本の食料 変動する世界の農業生産

米国農業 5つの落とし穴(下)【コロナ禍 どうなるのか?日本の食料 変動する世界の農業生産】2020年8月24日

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農業ジャーナリスト・山田優

ニューヨーク地下鉄内でマスク配布が行われたニューヨークの公共交通機関でマスク配布が行われた(MTA提供)

移民労働力依存に影

第3は移民労働者に依存する園芸や酪農などの農業への悪影響だ。果実や野菜の管理や収穫の多くは、ヒスパニック系の移民が担っている。収穫シーズンに大勢の労働者が国境を超えて農場を渡り歩くが、感染予防を理由にしてトランプ政権は南側の国境を閉じ、多数の農家が収穫を諦めるなどの打撃を受けた。厳しい取り締まりを恐れて逃げ出す不法移民労働者も相次いだ。
パンデミックが長引き、労働者の手当てが難しい状態が続けば、人手に依存する農業経営の持続すら危ぶまれる。収穫作業の自動化などが対策として挙げられているが、時間がかかる。


閉鎖相次ぐ食肉加工施設

第4には食肉や食品加工の現場でコロナ感染が深刻なことだ。農業の調査サイトによると、8月17日時点で農家の感染確認は94にとどまる。一方で食肉・食品加工施設は743か所。最低でも5万5348人が感染し、237人が死亡した。「出荷できない」という農家の不満を受け、トランプ政権は強引に加工施設の再開を急がせた。だが、移民労働者に依存し、劣悪な労働環境という構造的な問題は手付かずのままだ。今後もこうした施設が混乱の震源地になる可能性は大きい。

放置される温暖化、水不足対策

第5には地球温暖化や水不足という長期的課題への対応が、先送りされることだ。洪水や干ばつ、ハリケーンなど異常な規模の気象災害が世界各地を襲う。米国も例外ではない。地球温暖化で被害は拡大の方向だ。気温上昇で、病害虫の発生が深刻になることも想定されている。農産物の収量減少は農家の経営を直撃するが、別の面からも打撃になる可能性が指摘されている。
米農業法では農家保護の最大の柱は収入保険だ。価格下落や不作で収入が減った場合に補てんされる。100以上の品目を対象に、毎年、日本円で10兆円を超える規模の保険金額が設定される。農家が支払う保険料は、国の補助金を除く4割を少し割り込む水準に抑えられている。だが、年々被害額が膨らみ続ければ、保険料が跳ね上がることは確実だ。農家にとっては真綿で首を絞められるようなものだ。
トランプ政権は、地球温暖化防止のための国際的な枠組みから脱退し、国内でも環境規制を次々に緩めている。政権は目先のコロナ対策には金をばら撒くが、米国農業の未来を左右しかねない環境悪化の課題から目をそらし続けている。

◇  ◇  ◇

マイク・ウイルソン氏マイク・ウイルソン氏

米マイク・ウイルソン氏に聞く
米農業雑誌「ファームフューチャーズ」のマイク・ウイルソン編集長に8月、コロナ感染を農家がどのように受け止めているのか聞いた。


――パンデミックを農家はどうとらえているのか。

「最近、全米1044の農家にコロナウイルスに関連し質問した。88%がパンデミックの影響で予想したよりも販売価格が下がったと回答した。また9%は雇用に悪影響をもたらしたと答えている」

――多くの食肉加工施設が生産を停止し、食肉流通に混乱が生じた。

「明らかになったのは、米国の食肉処理産業が一握りの企業に集約され過ぎていることだ。感染拡大時に農家が受け取る販売代金と消費者が支払う金額との格差が広がった。食肉処理企業が価格を談合した疑いで、現在捜査が進行中だ」「食肉処理場の混乱はほとんどが収まった。しかし、影響は残る。処理場では死者が出ているし、安全性の不安に抗議した労働者は職場から解雇された」「食肉処理業界の寡占は過去10年間、問題視されてきた。巨大処理場が相次いで感染者の急増で閉鎖。地域の人たちにも感染を広げた。地方の小さな処理場は急増した注文に追いつかず、生産者は出荷できなくなった。ミネソタ州の調査によると、パンデミック以前でも64%の生産者にとって、食肉処理が経営の阻害要因になっており、54%は食肉処理がスムーズにできるのであれば増頭すると回答していた」


――政権がビザ発給を厳しく制限、園芸や酪農で人手不足が深刻だ。

「園芸などの農家は、感染拡大で市場が混乱し、労働力の手当てが難しくなるダブルパンチを受けた。移民労働者の多くが密な状態で作業をし、密な状態で生活をするため、ウイルス感染を恐れる声が寄せられている」「米政府はこの夏、多額のコロナ対策の補助金を農家に支払った。ただ、園芸農家などは十分に支援されなかった。パンデミックの打撃は大きかった」

米国農業 5つの落とし穴(上)

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