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農政:どうなっているのか米国社会

深刻化する米国社会の分断と経済格差拡大 萩原伸次郎(横浜国立大学名誉教授)【どうなっているのか米国社会】2020年10月23日

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今回の大統領選挙がこれまでと決定的に異なるのは、米国の人口は世界の4%なのに新型コロナウイルス感染者、死亡者が世界の20%超という状況のなかで行われていること。感染症拡大の背景には経済的弱者が増え経済的格差が拡大するなど米国社会の分断がいよいよ深刻になってきていると萩原名誉教授は指摘する。

萩原伸次郎(横浜国立大学名誉教授)萩原伸次郎(横浜国立大学名誉教授)

新型コロナ感染症拡大のなかでの大統領選

アメリカは今、11月3日の大統領選挙にむけて、現職大統領ドナルド・トランプとオバマ政権時に副大統領を務めた、ジョー・バイデンとの間で、し烈な選挙戦が戦われている。ドナルド・トランプが政権を樹立したのが、2017年1月だから、それからほぼ3年10カ月、トランプ政権の実績が問われる選挙だ。従来の選挙と決定的に異なるのは、この2020年1月から明らかになった、新型コロナウィルス感染症の広がりの中での大統領選挙であるということだ。
新型コロナ感染症対策の失敗から、劣勢に立たされた現職大統領ドナルド・トランプは、大統領選の日時を遅らせるべきだなどと言ったことがあるが、アメリカ大統領選挙は、オリンピックとは異なる。あの南北戦争が、激しくたたかわれていた、1864年11月にも大統領選は、予定通り実施され、リンカーンが2期目の大統領職を射止めたことはよく知られている。

有権者の54%が期日前投票

野党民主党のみならず、与党共和党の重鎮からも、大統領選を遅らせることはできないとされたから、現在、両陣営の激しい選挙戦が戦われているわけだが、新型コロナ感染症は、選挙に大きく影響し、期日前投票が大量に行われている。3000万人近い人々が、期日前投票に長蛇の列をつくり、投票に臨んでいるが、そのほか投票用紙を郵送する郵便投票が大量に行われている。世論調査では54%が期日前投票を行うと答えているのだ。こうした有権者の多くは、バイデン支持で、トランプ大統領は、とくに郵便投票は、不正の温床だ、などと根拠のない攻撃を繰り返している。また、仮に自分が投票数でバイデンに敗れても、郵便投票は無効だから、政権を渡さないと主張し、あくまでも大統領職に固執している。トランプ大統領は、投票日の直接投票を呼び掛けており、郵便投票の開票には時間がかかるから、郵便投票の開票が本格化する前に、集計作業を打ち切り、選挙の勝利宣言をし、不正選挙を受け入れるわけにはいかない、などとする可能性が危惧されている。
民主的社会主義者バーニーサンダースは、新型コロナ感染症が広がる中、候補者競争をしている場合ではないとして、早々と、民主党候補を、中道派のジョー・バイデンに譲ったが、このトランプ大統領の態度を見て、今回の選挙は、大嘘つきの「デマゴーグ」ドナルド・トランプ対アメリカ民主主義の戦いだとして、多くの国民に反トランプの投票行動を呼びかけている。
しかしなぜここまで、今回の大統領選挙は、従来とは異なった様相を呈しているのだろうか。それは、このトランプ政権下で、アメリカの分断がいよいよ深刻になり、しかも、大統領自身がその分断を煽る行動をとり続けていることが一つの要因といえるだろう。しかも、新型コロナ感染症は、アメリカで最も深刻に広がっているにもかかわらず、トランプ大統領が、その対策を怠り、公衆衛生の専門家によるアドバイスを聞き入れず、勝手にこの感染症は、春の風と共に過ぎ去っていくなどという楽観論をふりまき、現在も、感染症患者と死者が増え続けているにもかかわらず、新型コロナ感染症は消えつつあるなどと根拠ない大嘘をつき続けているからでもある。アメリカの人口は、世界で4%程度だ。しかし、感染者数、死亡者とも、世界の20%を超える事態をみて、トランプ大統領の言っていることはおかしいと多くの国民が思い始めていることが、この大統領選挙での期日前投票数の激増につながっているといってもいいだろう。

激減する健康保険加入者

しかも、トランプ大統領自身が、新型コロナに感染し、入院治療を受けたにもかかわらず、いつコロナ感染症で陰性になったとも明らかにしないまま退院し、選挙活動に復帰した。そして、コロナは怖くない、私を見よ! 元気になったではないか、などとコロナ感染症の99%は無害だとする彼の主張を繰り返している。しかし、知識のあるアメリカ人は、だれもそれを信じてはいない。多くの人は、大統領が受けたような適切な治療は受けられず、死んでいっているし、受けられたとしても、健康保険に入っていない人は、日本円にして何百万円の単位で治療費がかかるのだ。
新型コロナ感染症危機において、アメリカが世界で最も深刻な被害を受けているその理由は、単にトランプ大統領が、対策を怠り、指導力を発揮しなかったことだけにあるのではなく、トランプ政権自身が、2010年に成立した、オバマ政権下の「ケア適正化法」による健康保険制度をズタズタに切り刻み、葬り去ろうとしていることにあるといってよい。9月19日死去したリベラル派ギンズバーグ最高裁判所判事の後任に、大統領は、保守派エイミー・コニー・バレットを指名し、上院での承認を大統領選挙前に、多くの国民の世論に反して行っているのも、大統領選の結果判定が最高裁に持ち込まれたときに自分を有利に判定させようとする魂胆と同時に、憲法違反として訴えられている「ケア適正化法」の、11月10日に最高裁判所で行われる審理を有利に進めることを狙っているのだ。
国民皆保険制度をとらないアメリカでは、多くの人が健康保険に入っていない。オバマ政権の開始時、世界経済危機によって5000万人もの人々が無保険状態だった。2010年にようやく、オバマ政権は「ケア適正化法」を成立させ、無保険者を激減させた。しかし、この法の廃止に執念を燃やすトランプ大統領の3年にわたる画策で再び無保険者が激増している。「ケア適正化法」廃止に執念を燃やすトランプ大統領は、議会共和党の多数をいいことに、その直接廃止を試みた。しかし、共和党上院の重鎮ジョン・マケインが反対し、それに同調する議員とともに、その試みを葬り去った。
トランプ大統領は、こうした失敗にもかかわらず、「ケア適正化法」骨抜きに執念を燃やし、2017年12月20日に議会上院を通過して成立した「減税および雇用法」に「ケア適正化法」骨抜きを狙う条項を滑り込ませることに成功した。この法は、法人税を35%から21%にするなど、レーガン政権以来の共和党保守の新自由主義政策を実施するものだが、その中に「ケア適正化法」の保険加入義務の撤廃、罰金規定の廃止、補助金もとりやめるという条項を滑り込ませた。だから、2018年になると健康保険加入者が激減し、保険料が上昇するという事態が引き起こされた。

感染症が拡大する経済的弱者

アメリカ人の保険適用のほぼ55.1%は、雇用主提供の健康保険である。しかし、この新型コロナ感染症拡大が続く中、失業のために雇用主が提供する医療保険を失う国民が続出している。この新型コロナ危機において見逃すことができないのは、この感染と死亡が、ヒスパニック、黒人、アメリカ先住民という経済的弱者に、より深刻に発症しているという事実である。感染拡大で、在宅勤務が進められているが、アメリカ労働省の調べでは、在宅で仕事ができる人は、大学卒以上の52%に対して、高校卒では13%にとどまるという。アジア系の37%、白人の30%に比較して、黒人は20%、ヒスパニック系は16%にとどまるのである。低所得の人たちは、在宅で仕事をしようにもそうした職種につける人は少なく、生活のために外出して働かなければならない。感染して家に帰れば、狭いところに家族が住んでいるから、たちまち家族に感染するという事態が発生するということになる。
アメリカが世界最多の感染者数と死亡者数を出しているという背景に、こうした格差の拡大が存在していることに私たちは気が付かなければならないといえるだろう。

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孫崎亨 氏



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