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農政:2020年を振り返って

「生命経済」のビジョンを――新型コロナと気候変動を超えて 広井良典 京都大学こころの未來研究センター教授【特集:2020年を振り返って】2020年12月3日

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ポストコロナ時代は、これまでの“重厚長大型成長経済”的発想から、「生命」を基本コンセプトとした経済のあり方に発想を変えなければいけない。そしてその中心に農業があると、広井教授は指摘しています。

広井良典 京都大学こころの未來研究センター教授広井良典 京都大学こころの未來研究センター教授

今年はなんといっても新型コロナのパンデミックが勃発し、日本や世界の状況が一変した年として記憶されることになるだろう。同時に、これまで経験したことがないような暑さが続くとともに、豪雨などの自然災害も多発し、異常気象ないし「気候変動」ということが実感として感じられる年でもあった。
ところで以上の二つ、つまり「新型コロナ」と「気候変動」について、私たちは通常、さしあたり別個の問題としてとらえているが、これらは互いに関連しているのではないか。つまり両者は、いずれも私たち人間と自然あるいは「生態系」との関係に関わるものであり、人間が過度に自然の開発や改変を行ったり、莫大な量の二酸化炭素の排出を行うことで大気や気候そのものに影響を及ぼしたりすることで生じているのだ。
言い換えれば、人間の行う経済活動の規模が、いささか自然環境や地球の許容度を超え出るまでに至ろうとしていることが、新型コロナと気候変動という二つの現象の、共通の背景にある。だとすれば、これらの問題を克服していくためには、人間の経済活動のあり方を何らかの形で根本的に見直し、その発展の方向を変えていく必要があるという発想が自ずと浮かび上がってくる。

ポスト・コロナ時代の基本コンセプトとしての「生命」

ではどうすればよいのか。ここで、「生命」を軸とする経済のあり方というテーマを考えてみたい。
私は、ポスト・コロナの時代においては、「生命」というコンセプトが社会の中心的な概念として重要になると考えている。この場合の「生命」とは、生命科学といった狭い意味のみならず、英語の「ライフ」がそうであるように、「生活、人生」といった意味を含み、また生態系や地球の生物多様性といったマクロの意味も含んでいる。
このように、これからの時代の基本コンセプトとして「生命」が重要になると言うとき、それには科学技術に関する側面と、経済社会に関する側面の二者がある。
まず科学技術に関する側面では、「情報から生命へ」という視点が重要となる。すなわち、17世紀にいわゆる科学革命が起こって以降、科学のコンセプトは大きく「物質→エネルギー→情報」と推移してきた。一見すると、「情報」に関するテクノロジーは現在爆発的に拡大しているように見えるが、「情報」が科学の基礎概念となったのは、アメリカの科学者クロード・シャノンが情報量の最少単位である「ビット」の概念を体系化し、情報理論の原理が作られた1950年頃のことである。
つまり「情報」は既に技術的応用と社会的普及の成熟期に入ろうとしており、情報の次なる基本コンセプトは明らかに「生命」であって、新型コロナ・パンデミックは逆説的な形でこのことを示したのである。昨今、「デジタル」の議論が盛んだが、私たちはむしろ「ポスト・デジタル」の経済社会を構想する時代を迎えているのだ。

「生命関連産業」あるいは「生命経済」のビジョン

一方、「生命」の経済社会に関する側面はどうか。これについては、これからの時代には、いわば「生命関連産業」あるいは「生命経済」と呼ぶべき領域が、社会の中で大きな比重を占めるようになっていくという視点が重要である。
ここで「生命関連産業」とは、具体的には少なくとも次の5つの分野を指している。すなわち、(1)健康・医療、(2)環境(再生可能エネルギーを含む)、(3)生活・福祉、(4)農業、(5)文化であり、これらはいずれも先ほど述べた広い意味での「生命」に深く関連している。最後の「文化」はやや意外に聞こえるかもしれないが、これはドイツのメルケル首相が、新型コロナが広がっている状況にあっても「文化」に関する活動は絶やしてはいけないとし、"文化は生命の維持に不可欠"と述べたことと関わっている。
ここでポイントになるのは、以上のような「生命関連産業」は、いずれも概して比較的小規模で、「地域」に密着した"ローカル"な性格が強いという点だ。したがって、こうした分野を発展させていくことは、昨今の「地域再生」あるいは地方創生の流れとも呼応すると同時に、ローカルな経済循環や地域コミュニティの再生に寄与し、またコロナ後の「分散型」社会という方向とも共鳴するのである。もちろんこれらと他の様々な経済分野とのネットワーク的連携も重要となる。
また、「生命関連産業」として挙げた領域は、単純な"利潤極大化"とは異なる側面、つまり相互扶助とか循環、持続可能性といったコンセプトと親和性が高い領域であり、通常の意味での「産業」という概念に収まり切らない性格をもっているだろう。
それゆえに、「生命関連産業」という言葉と並べて先ほど「生命経済」という表現を使ったのだが、大きく言えば、それは「資本主義」の今後のありようというテーマともつながるし、また昨今議論が活発なSDGs(持続可能な開発目標)やいわゆる「ESG投資」などをめぐる話題とも接続するのである。

工業化発展モデルからの脱却を

振り返れば戦後の日本は、高度成長期を中心に"工業化を通じた経済成長"という発想が強く、それが一定の成果を収めたため、その「成功体験」にとらわれ、いわゆる"重厚長大型の経済発展モデル"から抜け出せず、実はそのことこそが平成を中心とする「失われた○○年」を帰結させてしまったのではないか。
「農業」が以上述べてきた「生命関連産業」あるは「生命経済」の中軸に位置していることは言うまでもない。そうした新しい時代の包括的な経済社会のビジョンを構想し、「生命」中心の経済ないし産業構造への転換を進めていくことが、「ポスト・コロナ」時代の基本的な課題になると私は考えている。

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