農政:今こそ 食料自給「国消 国産」 いかそう 人と大地
【今こそ食料自給・国消国産】「多様な担い手」育成着々 高まる市民の"農"守る意識 JAはだのの挑戦(2)2022年10月11日
「多様な担い手」の育成着々 高まる市民の"農"守る意識 JAはだのの挑戦(1)から続く

さつまいもを収穫する春木伸夫さん
無農薬米づくり目指し参入 食料危機不安なら「一緒に米を作りましょう」
この春、秦野市に近い大磯町から新たな参入者が加わった。春木伸夫さん(63)。2017年に娘と参加した健康セミナーで、千葉県香取市で農家の安全安心な無農薬米作りにかける思いに打たれたのが農業を志すきっかけだった。会社員生活がひと段落した2020年春から片道2時間かけて香取市に通って米作りを手伝った。「自然と触れ合う非日常の世界を日常的に味わえる感動の連続でした」と振り返る。
来年から自ら無農薬米作りに挑戦したいと農地を探していたところ、宮永組合長を通じて中山間地域の田んぼ15aで耕作できることになった。すでにこの春から70日間通い続け、大豆とさつまいも作りを続けている。今年と来年の2年間、地元農家の指導を受けて本格的に米作りを学んだあと農家として独立する計画だ。
食料危機が話題に上っても春木さんは不安を感じることはないという。「米作りを手伝って100キロの米をいただいたとき、これで1年間食べられると思いました。米の値段が上がろうと関係ありませんし、不安がある方には田んぼで一緒に米を作りましょうと話したいですね」と語る。
将来的には無農薬米の仲間づくりも視野に入れている。「農家が減り、耕作地が放棄されるといわれていても、実は農業は簡単に始められません。私がある程度米作りの知識や技術を身につけたら、米作りを始めたいという人をサポートして仲間を増やすことができたらと考えています」。

新規就農者も支える直売所「じばさんず」
販路を支える直売所 生産者への理解呼びかける掲示
春木さんのような新たな担い手が続々と生まれる秦野市には、新規就農者が作った農作物を受け入れる直売所がある。野菜など200品目、1000種類もの農産物を扱う神奈川県最大の直売所「じばさんず」だ。食料安保が叫ばれる中、最近は来店者が増えて1日平均約1200人~1500人が訪れるという。
現在、約600人の農家が登録し、毎朝、新鮮な野菜が持ち寄られる。スタッフの守屋香さんは「例えば同じナスでも新しい品種に挑戦する農家の方もいます。売れれば励みになりますし、店としても支援したいと思います」と語る。
店内には数カ所に農家への理解を呼びかける文書が掲げられていた。「値上げの波は生産者にも!」とのタイトルで、コロナや国際情勢、異常気象の影響を受ける農家を応援してほしいと呼びかけている。店を訪れた60代の女性客は「私自身は新鮮な農産物は多少高くてもいいと思っています。農家が困らずに生産できるようになってほしいです」と話していた。
「JAが核にならずして誰がやるのか」

JAはだの 宮永均組合長
「多様な担い手」の育成を着々と進める秦野市。しかし、宮永組合長はまだ課題は多いと話す。「例えば『はだの市民農業塾』で多くの非農家が参入したのは大きな成果ですが、一方で後継者をしっかり育てることも必要です。バランスよく進めることがJAの役割だと思います」。そのためにも生活が成り立つ農業への支援が欠かせないと強調し、「販路の確保やいかにコストを落としていい農産物をつくれるか、すでにお手本となる農家もいるのでJAとしても支援を続けたい」と語る。
一方で、秦野市のように戦略的に担い手づくりを進める地域はまだ少数だ。国消国産が叫ばれる中、地域はどう取り組むべきか。宮永組合長はまさにその中核をJAが担うべきと語気を強めた。「農地、農業のことをJAが核になってやらずして誰がやるのかということです。農家もJAに向いてくれているはずです。国消国産もいいが、まずは地産地消、ボトムアップで進めるべきで、その舵取りをしっかりJAが努め、汗を流して取り組むことが大事だと思います」。
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