農政:今こそ 食料自給「国消 国産」 いかそう 人と大地
【今こそ食料自給・国消国産】市民に安心安全な食料を 直売所を核に地産地消で地域づくり JAおちいまばり(2)2022年10月13日
市民に安心安全な食料を 直売所を核に地産地消で地域づくり JAおちいまばり(1)から続く
スマホアプリを活用 午後の販売伸ばす
――売れ残りを減らすためのecobuyサービスを始めていますね。
農産物の売れ残りを減らす取り組みとして、昨年10月から(株)NTTドコモと連携して「ecobuy(エコバイ)」サービスを開始しました(注1)。エコバイとは、午後3時以降に農産物を購入したレシートをスマ-トフォンのアプリで読み込むと、購入商品1点ごとにエコバイポイントが2ポイント付与されるものです。エコバイポイントは「dポイント」などに交換が可能で、dポイントはコンビニ等での商品購入に使用できます。ポイント目当てに午後3時以降を狙ってご来店される方もおられます。現在、登録している消費者は2000名にもなります。
学校給食のパンに今治産小麦100%
――地産地消の取り組みとして他に取り組んでいることは何ですか。
今治市内の小中学校の学校給食に地元産食材を提供しています。21カ所の調理場に1万3000食分です。ただ、学校給食は入札制のため、落札できない場合は出荷ができない問題があります。市内にある10の幼稚園や保育園にも地元産食材を提供しています。こちらは入札制ではないので出荷が安定しています。学校給食や幼稚園等への食材提供は、さいさいきて屋の売上げの5%を占めています。学校給食等への食材提供のメリットは、食育として子供たちへの地元産への関心が確実に高まることです。将来、直売所利用者となってくれれば、農家の売り上げ増にもつながりますからね。
注目されているのは、学校給食のパンを輸入小麦でなく、地元今治産の小麦にしようという取り組みです。これは2001年から始まったものです。愛媛県は裸麦の全国一の産地で、小麦の栽培はわずかでした。そこで、2000年に九州農業試験場が西南温暖地向けに開発した小麦品種ニシノカオリを2ha試験的に栽培することからはじめ、その翌年から今治産小麦のパンを供給したのですが、当初は約2週間分しかありませんでした。現在は後継品種のミナミノカオリの栽培が40haにまで拡大し、学校給食用のパンは9割以上が地元産小麦100%となっています。
産地振興のための新しい取り組み
――コロナ禍でご苦労されたと思いますが。
新型コロナ禍で一時期、直売所の販売がかなり落ち込みました。出荷者からの「何とか売ってほしい」の声に応えて、出荷された品を直売所外に売りにいきました。今では松山市道後温泉のゲストハウスをはじめ近隣の道の駅、大阪や東京の飲食店など100件ほどの取引先に毎週届けています。さらについ先だっての8月25日から松山市のデパート三越の地下1階食品売り場に「さいさいきて屋」の売り場をオープンしました。現在、いろいろな販売方法を試行しています。また、JAおちいまばりは、JAとぴあ浜松、JA晴れの国岡山、JAふくおか八女とともに「AGRIs by JA」(注2)に参加しています。これは、スマートフォン、タブレット、パソコンなどで、各JAの営農指導員が栽培技術を解説する動画(700本以上)の視聴や、農薬の適用、使用時期や希釈倍率などをデータベースで確認でき、JAからの連絡事項や営農情報をタイムリーに閲覧できるサービスです。月額990円のところ、JAの組合員であれば550円の料金で利用できます。基礎的な栽培技術等を学ぶことができるため、直売所の品目拡大につながることを期待しています。
取材を終えて
新型コロナ禍による売上げの落ち込みからの回復途上のさなか、ウクライナ情勢や円安によるコスト増が追い打ちをかけている。そうした状況にあっても、吉田課長は「ただ回復を待つのではなく、攻めていきたい」とたいへん意欲的であった。生産農家の思いを背中に、産地振興のための新たな挑戦を続けていく姿勢に感銘を受けた(椿真一)。
(注1)(https://www.ecobuy.jp/)
(注2)(https://lp.agri-smile.app/)
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日