農政:今こそ 食料自給「国消 国産」 いかそう 人と大地
【今こそ食料自給・国消国産】市民に安心安全な食料を 直売所を核に地産地消で地域づくり JAおちいまばり(1)2022年10月13日
愛媛県のJAおちいまばりは、1997(平成9)年に、今治市と越智郡内の14農協が合併して誕生した。市町村合併にともない、現在は今治市(立花地区は今治立花農業協同組合)と越智郡上島町の1市1町を管内としている。JAおちいまばりの農産物直売所「さいさいきて屋本店」は、開店して今年で16年目を迎えた。コロナ禍の影響でやや減ったものの20~23億円の売上げを誇り、全国のJA直売所の中で売上げトップ3にランクインしたこともある人気店である。2012年には第41回日本農業賞特別部門「食の架け橋賞」大賞を受賞している。JAおちいまばりの2021年度の販売事業取扱高61億円のうち直売所の売上げは3分の1を占める主力部門だ。今治市の人口は15万人だが、さいさいきて屋にはその8倍の年間120万人の来客があり、地域経済を支えている。地産地消の取り組みをさいさいきて屋の店長兼直販課課長の吉田敏彦さんに聞いた。(取材は椿真一・愛媛大学農学部准教授、村田武・九州大学名誉教授が同行)
さいさいきて屋 吉田敏彦店長兼直販課課長
食と農のテーマパーク「さいさいきて屋」
――さいさいきて屋をオープンした背景はどこにありますか。
消費者の輸入農畜産物への不信感が高まっていく中で、地元産の新鮮で安心・安全な食料を継続的に市民に供給することで消費者ニーズに応えたい、同時に高齢化にともなって共選共販出荷が難しくなった生産農家が少量でも販売できる場が必要になったということです。まずは2000(平成12)年に、市内中心部に近いわずか30坪ほどの空き事務所を改装して、生産者会員92名の直売所「さいさいきて屋」をオープンしました。予想を上回る売上げがあり、生産者会員もすぐに400名を超えました。2年後には郊外にあったAコープの空き店舗を改装して2号店をオープン。その後も売上げが伸び続けたことで会員数も800名にまで増え、販売スペースの確保が必要になって、大型店舗構想が持ち上がり、2007年4月にこの560坪の「さいさいきて屋本店」をオープンすることになりました。現在の出荷会員は約1500名で、毎日300名から500名の会員が出荷しています。直売所ではJAおちいまばり管内産の米、野菜、柑きつに代表される果物、花きや牛肉、豚肉、鶏卵のほか、愛媛漁連に出荷してもらっている瀬戸内の新鮮魚介類が人気です。
農産物直売所「さいさいきて屋」
店舗横に併設したカフェテリア方式の「彩(さい)菜(さい)食堂」が地元産品をふんだんに使ったおかずを豊富に取りそろえており、カフェ「SAISAICAFE」も地元産イチゴやブルーベリーをふんだんに使ったスイーツが人気です。地産地消を楽しい体験として味わってもらっています。食堂やカフェの併設は、農家が出荷した野菜の売れ残りを全国一少ない直売所にしようという方針が背景にありました。入荷量が多くその日に売れ残りそうな野菜は、直売所が直接買い入れて食材にする、また自前の加工施設で乾燥粉末やペーストに加工したうえで、食堂やカフェの食材として利用しています。
また、直売所の隣に80aの農園も併設し多種類の柑きつの実証ほ場、今治市民を対象とした貸農園・市民農園や小学生を対象とした学童水田、新規就農者の育成につなげるべく本格的な農業が実践できる体験農園を開設しています。これらは市民に作物の育ち方や「安全・安心」な栽培方法はどんなものかを見てもらうことで、農業への理解促進につながっていると思います。
出荷困難者を取り残さない
――出荷会員は各自で農産物を直売所まで持ってきているのですか。
会員の3分の2はそれぞれ持ってきていますが、3分の1の会員については持ち込みが容易ではないので、さいさいきて屋が農産物の集配サービスを行っています。農協管内は瀬戸内海に浮かぶ島々を抱えており、また、内陸部であっても直売所まで持って行くことが困難な生産者が少なくありません。集配は島嶼部ルートと陸地部ルートの2つがあります。島嶼部ルートの集荷拠点は5カ所。朝7時に大三島を出発し、しまなみ街道沿いに上浦(かみうら)、伯方(はかた)、宮窪(みやくぼ)、吉海(よしうみ)の各拠点を経由して8時30分に到着します。45kmの道のりです。陸地部ルートの集荷拠点も5カ所で、こちらも朝7時に出発します。各ルートともに2tトラックで集配していますが、1ルートにつき、多いときで100戸分、少ないときでも30戸分は運んでいます。生産者からは出荷コンテナ1個につき100円の手数料をいただいています。橋で陸続きになっていない旧関前村(せきぜんむら)などの離島についてはAコープに商品を配送した帰りの便で集荷を行っています。
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