【農薬工業会新会長に聞く】食料生産での農薬の役割・貢献を発信(上)2017年6月20日
インタビュー:西本麗農薬工業会会長
農薬工業会は5月17日、第86回通常総会を開催し、新会長に住友化学の西本麗代表取締役専務執行役員を選任した。そこで、農薬業界の現状や農薬工業会の今年度の重点課題などについて聞いた。
◆世界に誇る日本の開発力
――まず、農薬業界の現状についてどのようにご覧になっておられますか?
国内の食と農の市場は人口減少などで縮小するといわれています。しかし、世界的には人口が2050年には100億人に迫るといわれますが、耕地や水資源が限られているので、生産性をあげることしか食料増産の術がありません。そのためには、生産資材の投入や潅漑施設の拡充、あるいは優良な種子開発などによって単位面積当たりの収量を増やすことが必要です。こうした持続的な農業の発展のために農薬の果たす役割・重要性は大きく、日本の農薬メーカーも、こうした世界の市場で活躍しています。
農薬については、病害虫や雑草の抵抗性の問題が、常に起こっていますので、新たな作用機作をもつ農薬の開発が必要です。そして新しい薬剤には従来以上に安全性や環境への影響に配慮したものが求められます。
農薬メーカーは常に新しい薬剤を出していく使命があります。しかし、医薬と同様に新しい薬剤を出していく確率は厳しくなっています。
――どれくらいの確率ですか?
開発して製品化できるのは、10数万個の化合物を合成して1つだといわれています。しかもそのために10数年の時間がかかり、研究開発費として250~300億円の投資が必要です。
新規薬剤を自社開発できるメーカーは、米国と欧州そして日本にしかありません。2004年から14年に世界で開発された農薬が105ありますが、そのうちの36%は日本メーカーが開発したものです。そのうち全くの新規骨格は30程度といわれていますが、その57%は日本のメーカーの開発です。
規模からいえば圧倒的に欧米のメーカーの方が大きいわけですが、小さいのになぜ新しい化合物を開発できるのだと、世界的に注目されています。この日本のメーカーの研究開発力は世界に誇るべきものだといえます。
世界市場への進出と国内農業への貢献
そうした開発力を活かして日本農業に貢献するために、水稲とか果樹・野菜など日本の強い分野に焦点をあてて、研究開発をしていく。そのうえで、グローバルなマーケットにも出て行くという大きな流れが、日本のメーカーが志向している方向だと思います。
――世界の農薬市場は、ビッグ6(今後のM&Aでビッグ4になる見込み)が圧倒的なシェアも持っています。その中で日本のメーカーが存在感を示すのは大変ですね。
規模の差は大きくなっています。その中でユニークさを保っていくのは研究開発しかありません。欧米での研究開発はシステマチックに自動的に進めて行きますので、細かな事象が見落とされるケースが多いと思います。一方、日本は研究者が一つ一つの虫とか草を見つめて、小さな変化を見逃さず、そこに新しいことが起こっていると考え研究開発をしています。日本の研究開発は「匠の世界」に近いといえると思います。
そして日本の研究開発力と大手の販売力を提携・組合わせていくというのがこれからの戦略になってくると思います。
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