サトウキビの収量増に影響 "見えない敵"に効果 BASFの「プリンスベイト」2019年10月25日
沖縄県にとって東北や北陸の水稲に匹敵する重要な農産物がサトウキビ。その防除で生産者から高い評価を得ているのがBASFジャパンが販売するサトウキビ用殺虫剤「プリンスベイト」だ。ハリガネムシやメイチュウなど主要害虫の防除に効果を発揮するが今年6月、新たにモロコシネグサレセンチュウの登録を取得した。これまであまり認知されてこなかったモロコシネグサレセンチュウを積極的に防除の対象に加えることで、さらなる生産の効率化と収量アップが期待できると考えられる。
(写真)サトウキビ栽培に大きな防除効果を発揮する「プリンベイト」
「プリンスベイト」(有効成分:フィプロニル)は、2006年にBASFジャパンが登録を取得し2007年から販売している。ハリガネムシが好むエサに殺虫成分を配合した餌で殺虫するベイト製剤で、根から吸収されるためメイチュウも同時に防除する。
ハリガネムシは地下の芽を好んで食害するため、サトウキビの一般的な栽培方法である収穫後の株から出てくる萌芽茎を育てる「株出し」にも大きな影響を与える。特にサトウキビの被害で深刻なハリガネムシの防除では「プリンスベイト」は大きな効果をあげてきたが、今回の適用拡大では新たに土壌中で根を食害する見えない敵、モロコシネグサレセンチュウにも効果を発揮することが認められた。
(写真)モロコシネグサレセンチュウの拡大画像(写真提供:アグリランド 河野辺雅徳氏)
同社は2018年3月から今年2月、沖縄県久米島のサトウキビ畑を試験地として、プリンスベイトの殺線虫効果とサトウキビ(2018 年春植え)の収量への影響を第三者機関と調べた。その結果、プリンスベイトの処理区と無処理の対照区で比較した場合、プリンスベイト処理区ではモロコシネグサレセンチュウを防除したことにより、茎の重さが対照区より増えたことを確認。茎重の増加は収量増加の一因であるため、モロコシネグサレセンチュウの防除が収量の増加に寄与すると考えられる。
モロコシネグサレセンチュウは、肉眼では見えないほど小さいこともあり日本ではあまり認知されていない。しかし、世界的には有名な害虫で積極的に防除が行われており、BASFジャパン アグロソリューション事業部マーケティング部の野田信介部長は「ブラジルやオーストラリアではセンチュウ被害で20~40%も減収しているという報告もある」と説明する。
実際、プリンスベイトによりハリガネムシの被害が減り、薬剤の使用量が減ると、モロコシネグサレセンチュウの被害が出てきてしまうことも考えられることから、「プリンスベイトを継続的に使うことでセンチュウの防除とハリガネムシの再発を防ぐことにもつながり、より省力化と収量アップにつながる」(野田部長)という。
左は健全なサトウキビの根、右がモロコシネグサレセンチュウで黒化したサトウキビの根
沖縄県でサトウキビの収量が最も大きい宮古島で「プリンスベイト」は必要不可欠な資材。同社アグロソリューション事業部マーケティング部 畑作マーケティングの坂本佳彦さんは「資材の名前を一つひとつ覚えていることはあまりないと思うが、宮古島では生産者のみなさんに『プリンスベイト』と覚えていただいていることにびっくりした。今後はモロコシネグサレセンチュウにも使えることを知っていただき、より効率的な栽培につなげてもらえれば」と述べた。
同社は10月29日、宮古島で現地のサトウキビ生産者や製糖業者などを対象に「さとうきび防除技術研修会」を開く。講演では、沖縄県農業研究センター病虫管理技術開発班から農学博士の新垣則雄氏による「フィプロニル製剤によるさとうきび害虫の防除方法」など、プリンスベイトを使うことでより効率的にサトウキビ生産の収量を行う情報などを発信する。
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