農薬:現場で役立つ農薬の基礎知識 2013
【現場で役立つ農薬の基礎知識 2013】[3]春野菜の病害虫防除のポイント 低温多湿で発生量が大きく2013年4月27日
・夏場の発生量を減らすチャンスこの時期に発生する病害虫
・ハクサイべと病発病初期に徹底した薬剤防除を
・キャベツ・レタス菌核病まず治療効果がある薬剤を散布
・越冬チョウ目害虫防除を主な害虫防除のポイント
春野菜とは文字通り「春に出てくる野菜」で、寒い冬を乗り越えて春の訪れとともに顔を出す「ふきのとう」やきれいな黄色い花を一面に咲かせる「菜の花」などを思い浮かべる人も多いだろう。一般的には、3月から6月ころに収穫されて店頭に並ぶものを春野菜と呼び「うど」や「アスパラガス」、「春キャベツ」、「春はくさい」、「春レタス」といったものも含まれる。
ただ、春はまだ冷涼な日も多く、病害虫が活発に動き出すにはまだちょっと早い気候であるため、発生する病害虫も限られてくるが、大きな被害を引き起こすものもあるので、丁寧に対処しておきたい。
以下、春野菜の病害虫防除のポイントを整理したので、参考にしてもらいたい。
※この記事は2013年に掲載した内容です。最新記事はこちらをご覧ください。
◆夏場の発生量を減らすチャンス この時期に発生する病害虫
春野菜の時期は、冬に比べれば暖かいもののまだ冷涼な時も多く、キャベツやレタスの菌核病、ハクサイべと病といった低温を好む病害が多く発生する。
これらは、いずれも糸状菌(かび)が引き起こす病気で、低温に加え、多湿な条件が加わると発生量が多くなる。
一方、害虫は、越冬したチョウ目害虫やアブラムシが発生するくらいで、まだ発生量も少なく、被害も少ない。ただ、発生量が少ないということは、防除もしやすいということでもあるので、このチャンスを逃さずきちんと防除しておきたい。
なぜなら、春のうちに害虫の密度を下げておけば、害虫の活動が本格化する夏場の発生量を減らし、夏場の被害を少なくすることにもつながるからである。
◆主な病害防除のポイント
ハクサイべと病
発病初期に徹底した薬剤防除を
発生の始めには、外葉に淡黄色の不規則な形をした病斑ができ、葉裏には灰白色のかびが生えるのが特徴である。その淡黄色の病斑は、やがて淡褐色となり、発生が多くなると外葉から枯れてくる。
黄芯系品種では、葉柄部に糸状の黒点症状が現れた後、墨が入ったような症状になり、やがて墨状の部分が陥没して、それが外葉だけではなく結球葉でも発生する「茎べと」呼ばれる症状が多く発生する。
病原菌は、糸状菌(かび)で、気温が低く、湿気が多い日が続くと発生が多くなる。温度でいうと3?25℃で生育し、7?13℃ぐらいが最適な温度である。
防除対策としては、まずは畑の排水を良くして、湿気を持たないようにするのが先決である。
また、この菌は病気になった株の根部や葉の残渣にくっついて越冬して伝染するので、できるだけ病気になった葉っぱなどは畑の外に出して処分するようにすると、病原菌が減り、発病を減らすことができる。
この病気は、発生が多くなると薬剤でも防除しきれなくなるので、発病初めのころから徹底した薬剤防除を行う。特に、葉の裏面や株元に十分にもかかるよう丁寧に散布する。
薬剤の選択にあたっては、初めに治療効果のある薬剤を使用して一旦作物の内部にいる菌を抑えた後に予防効果のある薬剤を使用すると効率的である。
(写真)
地際の葉柄から水浸状にあめ色の病斑が生じ、軟化腐敗する
キャベツ・レタス菌核病
まず治療効果がある薬剤を散布
茎や葉の地際部に水浸状の病斑が現れて、だんだん淡褐色水浸状となって軟化腐敗しながら、葉が順番にしおれる症状を示す。腐敗した部分には、白色綿状のかびが生じるのが特徴で、しばらくすると、そこにネズミの糞に似た黒色の菌核を作るのが特徴である。腐敗した部分は、軟腐病のような腐敗臭はしない。
病原菌は、糸状菌(かび)で、気温が15?20℃の頃に発生しやすく、25℃以上になると活動しなくなる。排水を良好にして、換気を十分に行うなど、多湿にならないよう十分に注意する。
病気になった株は、圃場に残さないよう圃場外へ持ち出し伝染源とならないように注意したい。
薬剤は、初発生がみたらまずは治療効果のある薬剤を散布して、菌の活動を抑えてから、定期的な散布が重要である。
(写真)
上:病斑は茎、葉柄を伝わって結球部に進展し軟腐する
下:はじめ下葉の葉柄基部に水浸状の病班が
◆越冬チョウ目害虫防除を主な害虫防除のポイント
この時期は、越冬したチョウ目害虫防除を中心に行う。この時期は、幼虫も小さく、防除しやすいので、モンシロチョウ(アオムシ)などの飛来を確認したら、幼虫の数が増えたり、大きくなる前に、きちんと防除しておくようにしたい。
(写真)
アブラムシ類、発生量が少ないうちが防除のチャンス
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