農薬:現場で役立つ農薬の基礎知識 2013
【現場で役立つ農薬の基礎知識 2013】[18]26年産米に向けた水稲除草剤のポイント2013年10月16日
・1年性雑草と多年生雑草
・処理層が安定するまでの水管理が大事
・有効剤を組み合わせて防除することが肝要
・17草種で抵抗性個体を確認
・特徴ある新規成分が登場、普及
25年産米の収穫が終わりホットするのもつかの間、ここ数年、SU抵抗性雑草や難防除雑草が増えてきているという報告もあるように、この1年を振り返り、新たに起きた問題や課題を整理しながら、26年産米の防除計画などの準備にとりかかっているのではないだろうか。そこで、26年産米に向けた水稲雑草防除のポイントについて、日本植物調節剤研究協会(日植調)の高橋宏和事務局長に執筆していただいた。
適切な水管理と畦畔整備を!
◆1年性雑草と多年生雑草
水田に発生する雑草の種類は多いが、繁殖のしかたから一年生雑草と多年生雑草とに大別される。
一年生雑草は種子で繁殖する雑草で、ノビエ、タマガヤツリ、コナギ、アゼナ、キカシグサ、イヌホタルイ等がある。雑草の生産する種子の量は非常に多く、種子の土壌中での寿命も長いため一度たくさんの種子が落下すると長年にわたって発生することになる。
多年生雑草は地上部の茎葉が枯れた後も土壌中の塊茎や根茎などの繁殖体に栄養分を蓄え、翌年そこから芽を出す雑草で、ミズガヤツリ、ウリカワ、オモダカ、クログワイ、コウキヤガラ、ヒルムシロ、セリ等がある。種子に比べると地下に形成される塊茎の数は少ないが蓄えている栄養分が多いため、除草剤散布後に地上部が枯れた後も再生することがある。
水田雑草全般に除草効果が高く効果の持続性の長い一発処理剤の普及により、これらの雑草を容易に防除できるようになったが、不適切な水管理や適期を過ぎた散布などで残草してしまうケースが見られる。また、同一成分剤の連用や圃場管理の問題等により依然として問題視される雑草の発生状況がある。
(写真)
水田に多発生したSU抵抗性コナギ
◆処理層が安定するまでの水管理が大事
雑草が残ってしまった場合、次年度の対策にあたってその原因を考えることが大切であり、水管理はどうであったか、適期の散布であったかを振り返ってみることも必要である。
水稲用除草剤使用にあたって最も留意すべきことは適正な水管理である。
湛水散布された除草剤の有効成分は一旦水田水に溶けた後、徐々に土壌の表面に吸着される。有効成分の吸着された土壌表層部分を処理層という。雑草は土壌表面から発芽するため処理層から除草剤を吸収して枯死する。確かな除草効果を得るためには処理層が安定するまでの水管理が大切であり、この間にかけ流しをしたり、畦畔のモグラ穴や水尻から水が漏れると除草成分が流亡することにより除草効果が不十分となる。従って除草剤散布後7日間は水田水が水田外に流出しないように管理することが大切である。
適正な水管理のためには春先からの圃場の整備に留意し、耕起、代かきはていねいに行い、田面を均平にする。不均平だと田面の高い部分に雑草が残りやすい。畦畔の整備も大切で適切な時期に畦塗りをし、漏れやすい畦畔には畦シートを設置する。
適期を過ぎた散布も残草の原因である。ノビエ2.5葉期や3葉期まで効く一発処理剤が普及しているが、例年と同じ時期の散布計画でいると、急な気温上昇により雑草の生育が旺盛となり散布適期を超えてしまったとのケースが増えている。近年は温暖化傾向にあるので特にこの点の注意が必要である。
(写真)
オモダカ生育期(矢じり葉)
◆有効剤を組み合わせて防除することが肝要
適期防除し水管理も適切に行ったが特定の雑草が残ってしまうケースもある。クログワイ、オモダカ、シズイ、コウキヤガラ等の多年生雑草が発生する水田では一発処理剤だけでの防除は難しい。これらの雑草は土中深くからも発生し、発生期間が長いため昔から難防除雑草といわれている。
多くの一発処理剤でこれらに有効であることが確認されているが効果は完全でなく処理後30日頃から再生育してくることが多い。そのため有効剤を組み合わせて防除することが肝要となっているが、防除が徹底されないことにより発生面積は増加の傾向にある。
徹底防除のためには、これらの雑草に有効な初期剤や一発処理剤を散布した後、再発生が見られたら、有効な中・後期剤を散布して枯らし、新たな塊茎を作らせないことが大切である。この管理を2?3年継続することで発生数を激減させることができる。
参考までにこれら問題雑草に登録のある中・後期剤を表1に示した。問題雑草の発生始めに散布する剤、草丈30cmまでの生育期に散布する剤など薬剤によって特徴が異なるので登録内容を確認し、不明な点は普及指導機関に確認する。
(写真)
クログワイ
◆17草種で抵抗性個体を確認
ベンスルフロンメチル、ピラゾスルフロンエチル、イマゾスルフロン、シクロスルファムロンなどスルホニルウレア系除草剤(以下SUと略)はノビエ以外の水田一年生雑草、多年生雑草全般に効果が高いため1980年代以降一発処理剤の主要成分として広範に使用されてきた。
近年、SU剤が効かない雑草が問題となっており、SU抵抗性雑草とよばれている。水田雑草ではアゼナ、イヌホタルイ、コナギ、ミズアオイ等17草種で抵抗性個体が確認されている。
防除対策として、SU剤を含まない一発処理剤や体系処理による防除、また、一発処理剤にブロモブチド、クロメプロップ、ベンゾビシクロン、ピラゾレート、ピラゾキシフェン、ベンゾフェナップ、テフリルトリオン、メソトリオン、ペントキサゾン、ピラクロニルなどホタルイやコナギ、ミズアオイ、アゼナ等に有効な成分を加えた剤の開発・普及が進められている。
(写真)
シズイ
◆特徴ある新規成分が登場、普及
SU抵抗性雑草が発生している地域では予防的にあるいは発生量の少ないうちに対応剤に切り替える。写真のように多発してしまった圃場では次年度は初期剤や中・後期剤と組み合わせた防除を検討したほうがよい。
最近は難防除多年生雑草のオモダカにSU抵抗性個体が確認され、対策が検討されている。ベンゾフェナップ、ピラゾレート、ピラゾキシフェン等の白化剤を含む薬剤やピラクロニルで初期の発生、生育を抑える効果が確認されており、再生や後発生した個体をベンタゾン剤等で防除する方法が有効である。
近年は特徴のある新規成分が開発・普及している。平成21年以降新たに登録された水稲除草剤に混合される新規成分を表2に示した。
ピリミスルファン、プロピリスルフロン、メタゾスルフロンは従来のSU剤と同様ALS阻害作用を有するが、ノビエにも効果が高いことから1成分のみあるいは2成分剤の一発処理剤が開発・普及されている。
テフリルトリオンは白化作用により枯殺する薬剤で、ノビエを除く一年生雑草、多年生雑草、SU抵抗性雑草にも高い効果を示すことからノビエに有効な剤との混合で2成分の一発処理剤として開発・普及されている。
新規作用の除草剤であっても同じ作用の剤を使い続けると、効かない雑草が残ってしまうことが懸念されるので作用の異なる剤のローテーション使用が望ましい。最近は成分数の少ない剤を選ぶ傾向にあるが、作用の異なる成分が3?5種混合された剤をローテーションに入れるなどの検討も必要ではないか。
(写真)
コウキヤガラ
◇ ◇
前述したように畦畔を整備し、水管理に留意して適切に除草剤を使用することにより除草効果は安定し、生産コストの低減となる。
除草剤の河川等への流出をなくし環境への負荷を低減するためにも適切な水管理?除草剤散布後7日間水田水を水田外に流さない管理?を遵守していただきたい。
表1 難防除雑草に有効な中・後期剤
表2 近年開発された新規除草剤成分
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