農薬:現場で役立つ農薬の基礎知識2015
【現場で役立つ農薬の基礎知識 2015】確実な防除 今が好機 春夏野菜の病害虫防除2015年4月10日
・耕種的防除で病害虫を抑制
・農薬の使用は「適期」捉えて
・病害虫とその防除対策
(アブラムシ類、コナジラミ類、うどんこ病、べと病、疫病)
本年は、昨年の大雪のような災害もなく、平穏であった。やはり災害などは無いに越したことはないものだ。そんな中、三寒四温を繰り返しながら、本年も春の病害虫防除の時期がやってきた。既に多くの越冬害虫も動き出しており、農繁期を前に防除の準備も必要だ。そこで、春夏野菜の病害虫防除について取材した。防除の備えの参考にして頂きたい。
※この記事は2015年に掲載した内容です。最新記事はこちらをご覧ください。
春夏野菜といえば、トマトやキュウリ、ピーマン、ナス、といった果菜類やスイカやカボチャ、トウモロコシやバレイショが主なものである。この時期の気候条件では、発生する病害虫の密度もまだ少なく、被害も比較的少ない。こう書くと、防除も手抜きできそうだが、この密度が低い時こそが、確実に防除できるチャンスである。なぜなら、病害虫の密度が低いと防除効率も高くなるし、次世代の発生密度も低く抑えることができるので、今シーズンの病害虫の発生密度全体を抑えることにつながるからである。
◆耕種的防除で病害虫を抑制
防除の効率をあげるには、対象となる病害虫の発生密度を低くするとよい。その初期の方法として、耕種的防除がある。この防除方法は、圃場を病害虫の嫌がるような環境に変えてやることで、病害虫を発生しにくくする狙いがある。病害虫の密度が低いと、農薬の効果が出やすく、効率的な防除ができるようになる。
例えば、アブラムシは、銀色を嫌う性質があるため、シルバーマルチをするだけで作物への寄生を少なくすることができる。 この方法は、使用できる時期が異なる場合もあるが、是非お試しいただきたい。
[耕種的防除の例]
【害虫】防虫ネット、有色粘着紙、シルバーマルチ、周辺雑草防除、手取り など。
【病害】熱消毒、土壌還元消毒、拮抗微生物利用、有機物施用、輪作、抵抗性品種の利用、弱毒ウイルス、栽培時期の移行、適正施肥、雨よけ栽培など。
【雑草】機械除草、耕運、マルチかけなど。
◆農薬の使用は「適期」捉えて
農薬は、それぞれに個性があり、それを十分に把握した上で、それを活かした使い方が必要になる。使おうとする農薬のラベル、解説技術資料などをよく読み、特に「使用適期」(農薬の効果が最も出やすい使用時期)は十分に把握した上で散布したい。
例えば、「害虫が小さい時に散布する」と書いてある農薬の場合、既に大きくなった害虫にはまず効かないと思ってよいし、「病害が発生する前に散布する」と書いてある場合、病害の発生後にいくら散布しても効果がなく、無駄な散布になってしまうと考えて良い。
このようなことを避けるだけでも、防除の効率は格段によくなるので、農薬の情報は常に仕入れるようにしておきたい。
◆病害虫とその防除対策
アブラムシ類
春夏野菜では、ワタアブラムシやモモアカアブラムシが問題となる。ワタアブラムシは、年に10数回発生し、6月から8月が発生のピークになる。
薬剤としては、有機リン系やピレスロイド系、ネオニコチノイド系の効果が高いが、有機リン系やピレスロイド系など薬剤抵抗性の発達事例が多いので、薬剤選択にあたっては指導機関の情報などの確認が必要だ。
モモアカアブラムシは、4月上旬から5月下旬がピークとなり多くの作物に寄生して被害を起こす。各種ウイルス病を媒介するので、しっかりと防除したい。有機リン系やピレスロイド系、ネオニコチノイド系の効果が高い。
コナジラミ類
コナジラミ類は果菜類に多く発生する害虫で、オンシツコナジラミ、タバココナジラミ、シルバーリーフコナジラミがある。
特にトマトでは、トマト黄化葉巻病というシルバーリーフコナジラミが媒介する病害が大きな問題となっている。これは、トマト黄化葉巻病ウイルス(TYLCV)によって起こり、新葉が巻いたり、小葉化、黄化などの症状が起こり、株全体が萎縮する。短期間にシルバーリーフコナジラミがほ場全体に病原ウイルスを伝播して発病させるため、収量が激減し、世界中のトマト農家に恐れられている。
コナジラミ類の防除は、側窓・入口・天窓への防虫ネット(0.4ミリ目)の設置や苗での防除の徹底、植付時の殺虫粒剤の使用による初期防除、栽培終了後の施設の蒸しこみ処理、地域一斉対策(野良トマトの除去、周辺雑草の防除、家庭菜園への防除依頼など)があるが、実施可能なことはできるかぎり全部実行したい。
防除薬剤としては、オンシツコナジラミは、登録のある薬剤であればうまく防除できるが、タバココナジラミやシルバーリーフコナジラミでは、薬剤ごとに効き目がちがうので、指導機関等の情報を確かめる必要がある。
タバココナジラミに効果の高い薬剤について、指導機関等が出している情報を調べてみると、サンマイトフロアブル、スタークル顆粒水溶剤、ベストガード水溶剤の3剤の効果が高かった。これらよりは落ちるが、モスピラン水溶剤やアドマイヤー顆粒水和剤やアクタラ顆粒水和剤、ダントツ水溶剤、ハチハチ乳剤なども効果があるとのこと。地域の指導情報などを参考に防除対策を組み立ててほしい。
うどんこ病
キュウリやスイカ、カボチャなどウリ科野菜に多く発生する。葉っぱの表面などに白い粉状の病斑を発生させ、ひどくなると葉柄やつるの部分にも発生し、だんだん樹が弱って収量が減ったり、実の品質が悪くなるので確実に防除したいものである。
診断は容易なので、発生が認められたら、発生初期の頃から定期的に丁寧に防除したい。防除薬剤は、ダコニールやフルピカなど予防効果の高い薬剤を防除の中心にして、やや発生が増えてきたら、EBI剤など効果の高い薬剤を散布するとよい。ただし、うどんこ病は、複数の薬剤で耐性菌が発生しているので、薬剤の選定にあたっては、地域の指導機関に確認する必要がある。
べと病
春夏野菜では、主にキュウリなどウリ科野菜に発生する。
淡黄褐色の葉脈に囲まれた不整形病斑を発生させ、病気の広がり方が早く、樹勢が衰えて、商品性や収量が低下する。
病原菌はべん毛菌類と呼ばれる湿度を好む病原菌(かび)で、卵胞子という形で土中に潜み、降雨があると分生胞子を形成して、飛散し伝染していくため、梅雨時など降雨が多く、湿度が高い時に発生が多くなる。
この病害は感染から発病までの期間が短いため、気付いた時には既にかなりの範囲で病気が広がっている可能性が高いので、べと病がいつも発生するような畑では、初期病斑をできるだけ早く発見し、発病初期に徹底して薬剤散布を行うとよい。
その際、葉の裏側に病斑があるので、葉の裏にもしっかりと薬剤が届くよう丁寧に散布することが重要である。
薬剤防除は、予防効果に優れ残効も長い保護殺菌剤(ジマンダイセン、ダコニール、ペンコゼブなど)をローテーション散布の基本として、少しでも病勢が進むようなら速やかに治療効果も有する薬剤(アミスターフロアブルやリドミルMZなど)を使用して、病勢を止めるようにするとよい。ただし、ストロビルリン系薬剤などの耐性菌が発生しているので、薬剤の使用の前に指導機関の情報を確認してほしい。
疫病
春夏野菜では、主にトマトなどナス科野菜に発生する。
植物体のいろいろな場所に発生し、葉では暗褐色から灰緑色の水浸状の病斑を形成し、乾燥した被害部分は黒褐色になる。果実にも発生するので、商品価値の低下が著しく、しっかりと防除したい病害である。
べと病と同じように湿度を好む病害なので、発生が多くなる時期は葉の手入れを着実に行って、通風をよくし、できるだけ湿度を下げるようにする。
薬剤防除は、予防効果に優れ残効も長い保護殺菌剤(ジマンダイセン、ダコニール、ペンコゼブなど)をローテーション散布の基本として、少しでも病勢が進むようなら速やかに治療効果も有する薬剤(アミスターフロアブルやリドミルMZなど)を使用して、病勢を止めるようにするとよい。
■ ■
防除薬剤選定の参考となるようナス科春夏野菜の防除薬剤一覧を付したが、この表は適用作物と適用病害虫、使用方法からおおざっぱに薬剤を選択できるようにしてあるので、実際の使用にあたっては、農薬ラベルを見て、適用作物、使用時期、使用方法を確実に確認して正しく使用してほしい。
(下の二つの表をクリックするとそれぞれPDFファイルが開きます)
重要な記事
最新の記事
-
百姓は〝徒党〟を組もう 農事組合法人栄営農組合前会長・伊藤秀雄氏2026年2月12日 -
将来の食料輸入に不安 80.6% 消費者動向調査 日本公庫2026年2月12日 -
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】水田政策見直しで放棄されるのか、米価下落対策、転作交付金、国家備蓄2026年2月12日 -
【育成就労制度で変わる農業現場】「国際貢献」から「人材の育成・確保」へ(3)2026年2月12日 -
【GREEN×EXPOのキーパーソン】グリーンを活用したイノベーションへ 東邦レオ・小山田哉氏2026年2月12日 -
アケビ―甘い果肉と苦い皮―【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第376回2026年2月12日 -
振りかけるだけで食物繊維 米加工品「フリタス(FURI+)」開発 JA北大阪2026年2月12日 -
愛知県下の農業系高校へ農機具等を寄贈 JA愛知信連2026年2月12日 -
葉の光合成速度 軽量・小型装置で高速・高精度に推定 農研機構2026年2月12日 -
「水田フル活用と作付最適化による高収益水田営農の実現」研究成果を発表 農研機構2026年2月12日 -
初のオリジナルBS資材「藻合力」新発売 タキイ種苗2026年2月12日 -
【人事異動】クボタ(3月1日付)2026年2月12日 -
農業の未来に革新を「Agri-Entrepreneur Summit 2026」開催 YUIME2026年2月12日 -
食の宝庫 福岡県の「美味しい」集めた「福岡県WEEK」展開 カフェコムサ2026年2月12日 -
まるまるひがしにほん 富山県「入善町観光物産」開催 さいたま市2026年2月12日 -
クローラー型スマート草刈り機「タウラス80E」 スタートダッシュキャンペーン開始 マゼックス2026年2月12日 -
「第4回全国いちご選手権」栃木県真岡市「とちあいか」が最高金賞 日本野菜ソムリエ協会2026年2月12日 -
邑久町漁協と魚料理を楽しむオンラインイベント開催 パルシステム2026年2月12日 -
藤岡市と子育て支援で連携 地域密着の「生協」ネットワーク発揮 パルシステム群馬2026年2月12日 -
東京農業大学 WEB版広報誌『新・実学ジャーナル 2026年2月号』発刊2026年2月12日





































