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農薬:いんたびゅー農業新時代

きめ細かな日本農業の特色を活かして 【溝口正士 日本曹達(株)執行役員・農業化学品事業部長】2020年1月27日

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 “社会と化学をつなぎ続ける”ことを掲げ、世界の農業現場で長年にわたって支持される特色ある農薬を開発・生産・販売し、地球規模で大きく事業を展開している日本曹達(株)のアグリビジネス事業領域の責任者である溝口正士執行役員・農業化学品事業部長に、世界の農業事情からみた日本農業のこれからについてお話を伺った。

溝口正士溝口正士 執行役員・農業化学品事業部長

◆果樹・園芸剤を世界に展開-国別では日本がトップ

 ─今年で創立100周年を迎えられ、「これまでも これからも化学ひとすじ 社会と化学をつなぎ続ける」を掲げて事業を展開されています。アグリビジネス分野では国内だけでなく、米国、欧州、ブラジル、そしてアジア各国など世界的に事業展開されていますね。

 現在、農薬の売り上げが一番大きい地域は欧州ですが、国別ではアメリカとブラジルが大きく、アジアや中東などを含めて世界全域をカバーしています。当社はもともと海外比率が高く売上高の6割が海外です。しかし、各国を合わせての6割で、国別では日本が4割と一番大きいです。

 その主力は、殺菌剤「トップジンM」や殺虫剤「モスピラン」です。元々当社は果樹・園芸などニッチな市場が中心で「モスピラン」も果樹や野菜用として広めてきました。農薬大手企業の中心である大豆、小麦、コーンという大きな市場は当社のメインの市場ではなかったのですが、モスピランのように多くの作物に使える剤が増えてきており、各剤あたりの利益を最大化するため、地域や用途を広げてきました。

 しかし、海外の大豆、小麦、コーンでは安い農薬、防除コストが抑えられるものが求められます。これまで高付加価値の剤を果樹や野菜中心に展開してきたのと違い、この市場では、ジェネリック農薬との競合により価格が下がり、参入は容易ではありません。

 トップジンMは1971年の発売から50年近くなり、100カ国以上で登録されています。モスピランは95年ですから25年になります。それほど良い剤だからジェネリックが出てくるのでしょう。


◆JAはなくてはならない存在

 ─日本の農業と海外の農業とでは規模など違いがあると思いますが...。

 農業ということでは同じですが、規模が違います。ブラジルでは、何万haとか日本のどこかの市町村ぐらいを1農家が持っています。そこに少しぐらい虫がいてもまあいいか、となりますが、日本では少しでも虫や病気が発生したらきっちり薬剤散布する。そういうところが違います。日本では、求められている効果が厳しいですが、そのかわり結構高くても使っていただける場合もあります。ところがブラジルでは効果が8割ぐらいでも安いのがいいとなります。

 日本も大規模化し効率化されればそれはそれでいいと思いますが、それでブラジルと対抗しようというのは無理だと思います。ブラジルの主要な農産物のコーンや大豆は飼料用が中心です。作物の栽培ですから、施肥や防除などやることは一緒ですが、きめ細かさが日本とは違います。それより日本は美味しい野菜、果樹、米など人が食べるものを作るのがよいと思います。

 ─日本で農協の果たしている役割についてはどのようにお考えですか。
 
 JAは農家にたいへん近い場所におられますので、私たちにはとても頼りになる存在です。当社は直接JAに販売させていただいてはおりませんが、担当者は当然JAを訪問し、情報やご意見を伺いながら仕事をさせていただいています。

 JAは、農産物の生産支援から販売までしっかりかかわっておられるので、豊富な情報をお持ちであり、当社の製品普及や新剤開発にとってなくてはならない組織です。これからもJAとの関係は大切だと考えています。


◆IT分野等と連携し農業の新時代へ

 ─今後、御社が力を入れていく開発分野はなんでしょうか。
 
 トップジンMやモスピランに続く剤を出していきたい、あるいは育てなければいけないと思っています。それが私たちの使命です。

 当社は果樹・園芸が中心で、研究開発も果樹・園芸を中心としていますが、製品化された剤が水稲でも使えるとなれば、水稲分野を得意とする他社と提携して販売をお願いする場合もあります。例えば水稲用「ナエファイン」はクミアイ化学工業(株)に販売をお願いしています。

 どこが重点かと聞かれたら、知見がある果樹園芸です。しかし、虫や菌に対する剤の効果は、水稲や果樹といった作物によって限定されるものではなく、例えばアブラムシに効く殺虫剤がウンカ、ヨコバイにも効けば、水稲でも使用できる可能性があります。開発された新剤が、何に対して効果があるのかを見極め、それを最大化していくことです。


 ─100周年を迎えられてこれからの新たな事業の展開で何をお考えですか。
 
 農業生産者の高齢化や40%を下回る食料自給率など、国内農業を取り巻く状況は厳しいものの日本の農業は無くならないと思います。ただ、規模がもう少し大きくなり、形も変わっていくでしょう。スマート農業など、人手をかけない農業になり、農薬の使用量は減っていく方向にあると思います。必要な量の農薬だけを的確に撒ける精密農業が普及するでしょう。

 スマート農業で農薬と直接結びつくのはドローンですが、それだけではなく、海外では、圃場を診断して的確に必要な所に必要な量だけ農薬を撒くといったモニタリング技術がスマート農業の一つだと思います。そこに機械が絡むとかスマホやITの技術が絡むなどといった、急激な技術革新が生じています。当社もそういった分野の企業とつながっていないといけないと考えています。


◆JAの現場情報で良い剤を開発し貢献

 ─JAや国内の生産者へのメッセージを...。

 日本の質の良い農産物を生産者の方に作っていただき、いつも美味しくいただいています。野菜や果実、お米など、日本で生産された食べ物は本当に美味しい。これについてありがとうございますというのが、まず個人として申し上げたいメッセージです。

 農薬を開発・普及している立場としては、皆さんの役に立つ剤を創出し、事業としても生き残っていかないといけないと思います。スマート農業など新しい時代を迎え、当社の研究所でもいろいろなことを考えていますが、現場の情報を知らないと良い物が開発できません。現場の情報が一番大事なベースになりますので、JAの営農指導に携わっておられる皆さまから情報やアドバイスをいただきたいと思います。そして、当社として良い剤を開発し貢献していきたいと考えています。


本シリーズの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

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