農薬:防除学習帖
【防除学習帖】第47回 野菜の病害防除12020年4月10日
日本の野菜作は、温暖で四季がある気候と南北に長い地域特性の恩恵もあり、非常にバラエティーに富んでいる。これと同様に、野菜に被害を及ぼす病害も多様で、特性の異なる様々な病害が発生する。
防除を考える上では、水稲で紹介したように、作物別に生育ステージごとに順を追って紹介する方が役立つかもしれない。しかし、病原菌には複数の作物をまたがって発生するものも多く、病原菌が同じであれば、生態と効果的な防除法は似ており、1つの作物での1病害(病原菌)の防除法を理解すると、作物が異なっても同じ病原菌であれば取るべき防除法に応用できるようになる。
この考えのもと、今回から複数回に渡り、野菜病害別に生態と防除法の基本を紹介していく。作物別防除のポイントは野菜防除の病害虫雑草基礎編が終了した後、重要な野菜を中心に紹介することとする。
1.うどんこ病
(1)病原菌
ア.菌種
日本においては、760種あまりの植物にうどんこ病が発生することが確認されている。それらの原因となる、うどんこ病菌は、子のう菌類に属する糸状菌(かび)で多くの属や種がある。そのうち、野菜や花き類に多く発生するのは、Podosphaera属のうどんこ病菌である。
イ.病徴
植物の細胞上でないと生育できない完全寄生菌であり、ほとんどのうどんこ病は植物体の表面に白色の白い分生胞子を大量につくり、作物表面にうどん粉をまぶしたような病徴が発生するので診断は容易である。主に葉に発生し、発生量が多いと茎や果実にも発生し被害を及ぼす。
ウ.被害
病原菌が植物体の表面を覆うように発生するため、光合成阻害や養分転流阻害などを起こし、結果として、(1)葉が早期に枯れあがり減収する、(2)果実の肥大抑制、(3)農作物品質の劣化(果実への直接被害など)といった被害が発生する。
(2)生活環
耐久器官である「子のう殻」をつくる完全世代と、植物体で菌糸から分生胞子をつくる不完全世代がある。
栽培の現場で目にする白いうどん粉状の病斑は、分生胞子の集合体であり、顕微鏡でみるとおびただしい数の分生胞子を確認することができる。この分生胞子は、菌糸の上に大量に次々とつくられ、それが風に乗ったり、作業者の体に付着するなどして、新しい作物へと拡散していく。
(3)防除法
ア.耕種的防除
窒素質肥料の施用量が多い(葉色が濃い)と発生が多くなるので、施肥量を適正にする。また、下葉や枯葉など不要な葉を丁寧に取り除くとともに、作付が終了したら、病気になった株をできる限り抜き取って圃場外に出す。
残渣(罹病株)は、野焼きの可能な地域については焼却するなどして伝染源を残さないようにする。
イ.化学的防除
(1)発生前に予防効果主体の農薬で定期的な防除
うどんこ病が発生する時期がきたら、発病前に予防効果中心の農薬を定期的に散 布し、予防的防除を主体の防除を組み立てる。その際、散布回数制限の無いクリーンカップ(微生物+銅剤)などを防除の中心にすえ、他の病害との同時防除を狙って防除すると効率的かつ効果的な防除体系が可能となる。
防除体系の基本は、発生前から予防剤を中心にローテーションを組み、発生が認められたら、発生が少ないうちに治療剤で、ほ場全体を確実に臨機防除することである。
(2)初発確認後は早期防除を徹底する
初発を確認したら、できるだけ早期に徹底した防除を実施する。その際、治療剤は、できるだけ発生が少ない時にほ場全体をまんべんなく散布する。なぜなら、うどんこ病の場合、病斑が見え始めた時にはかなりの数の分生胞子が飛散しており、病斑が無くとも既に感染している葉や茎もある可能性が高いからで、潜伏している病原菌を治療剤の散布できちんと防除し、取りこぼしを少なくすることができるからである。
(3)治療剤は系統の異なる農薬をローテーションで使用する
治療剤に限ったことではないが、特にうどんこ病の治療剤には耐性菌がつきやすい傾向にあるので、同一治療剤の連続散布を避け、系統の異なる農薬を輪番で使うようにするとよい。また、有効成分によっては、既に耐性菌が発生している事例があるので、地域の指導機関等に事前に確認すること。
以下に主なうどんこ病剤の予防・治療の区別と残効性について整理したので参考にしてほしい。また、別表に農薬別作物別適用表を添付するので、薬剤選択の際の参考にしてほしい。ただし、その表は選択のためのものに限定し、実際の使用の場合は、農薬ラベルで使用方法を確認すること。
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